安倍元首相の“統一教会”事件も…韓国宗教団体とテレビ局の壮絶激闘史

2023年03月15日 社会

万民中央教会の場合、1999年に信徒たちがソウル永登浦区(ヨンドウポグ)汝矣島(ヨイド)に位置するMBCの社屋に乱入し、電線を抜いてしまうほど暴れ回る事件もあった。

結局、視聴者は別の送信所から放送された“シマウマ”のドキュメンタリーを見ることに。この放送は時事番組としては異例の40%という視聴率を記録し、今でも語り継がれている。ほかにも、終末論問題を扱った『PD手帳-疑惑の永世教を解き明かす』編(1994)は、放送翌日に取材対象の宗教研究家が殺害されるなど、信徒たちのテロに製作陣が恐怖を感じる事態にまで発展している。

2007年に放送された『PD手帳-新天地の怪しい秘密』編は、放送後に「新天地」側が訂正・反論報道請求を要求し、裁判所の任意調整決定を受け反論を提出。この放送は、新天地が新型コロナウイルス集団感染の原因として指摘されたあとに再び注目を集めた。

また同年、「神様の教会」の信徒500人がMBC社屋前で抗議デモを行い、物議を醸した。当時、同教会の信徒たちは、『PD手帳』が「神様の教会」を秘密裏に取材して放送しようとしていると主張。結局『PD手帳』は視聴者掲示板を通じて、「取材および放送計画がない」と公示したりもした。

(画像=予告編キャプチャ)『すべては神のために』に出演したチョン・ミョンソクの被害者メープル

キリスト教だけではない。2018年に放送された『PD手帳-曹渓宗の大僧たち、彼らはどこに』編もやはり、大韓仏教曹渓宗が放送禁止仮処分申請を提起したこともある。これは棄却されたが、曹渓宗側は製作陣を告発。名誉毀損で告訴したが敗訴した。

そのほかにも、『ミョンソン教会800億の秘密』(2018)、『万民中央教会イ・ジェロク牧師』(2019)、光と真理教会の『代弁者は教会、奴隷になった信徒たち』(2020)、聖楽教会の『ある牧師の二重生活』(2019)などが放送前に仮処分申請を提起されるも棄却された事例は枚挙に暇がない。

直近では、昨年8月に日本の安倍晋三元首相の事件を扱った『安倍、銃撃犯、そして統一教』(2022)の放送直後、信徒たちによる大規模集会が行われている。

「少しでも傷つける番組には…」

なお、これらはMBCだけでなく、『PD手帳』と双璧をなす探査報道番組『それが知りたい』のSBSも同様だ。

2000年、SBSはハレルヤ祈祷院の不正告発を扱った番組を制作・放映しようとしたが、祈祷院側の信徒と患者が押し寄せ、局への進入を試みたという。

2001年のアガドンサンを扱った『それが知りたい』は放送されなかったし、2010年の「イルチブレインヨガ」のイ・スンホン総長のアメリカ人女性性暴行疑惑事件を扱った『イルチブレインヨガスキャンダル』編も、放送前に仮処分申請棄却および放送禁止要求デモを受けている。

宗教団体の過激な反発は、信徒たちの信心から始まったとテレビ関係者たちは述べている。あるMBC関係者は「『すべては神のために』でわかるように、宗教に盲目的に執着する信徒たちは、少しでも自身が信じる宗教を傷つける番組に対して、激しく反発したりする」と指摘した。

『すべては神のために』を演出したチョPDも、Netflixでの配信開始後、家族の身辺が心配だと吐露したことがある。チョPDは「歳を取って生まれた息子と娘が一番心配で、なるべく一緒に通おうと思う」と打ち明けた。

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