なぜ韓国にはカルト宗教や“自称・救世主”が多いのか…闇に切り込んだドキュメンタリーが起こした波紋

2023年03月11日 話題 #Netflix

「韓国にはどうしてこんなにもカルト宗教が多いんだろう?韓国社会が育てた怪物だからだ」

【衝撃】「韓国TV局にカルト宗教の信徒がいる」調査開始を表明する局も

ドキュメンタリー作品としては異例だ。現在、社会的に波紋を呼んでいるNetflixオリジナルシリーズ『すべては神のために:裏切られた信仰』を手掛けたチョ・ソンヒョンPDは、30年余りにわたって問題を提起してきたカルト宗教問題が、依然として根絶されていない理由をこのように明らかにした。

3月3日よりNetflixで配信中の『すべては神のために』は、キリスト教福音宣教会(JMS、通称「摂理」)の教祖チョン・ミョンソク、五大洋事件を起こしたパク・スンジャ、アガドンサン事件のキム・ギスン、万民中央教会のイ・ジェロクと、1980年代から2023年現在まで韓国社会に大きな波紋を起こした“カルト宗教”を取り扱った。

特に、摂理編は全8話中3話分を割くほど深く追及している。

摂理は「“AI操作”や“体を売る女たち”と教育」

本作は公開直後、検察総長が言及するほど社会的な話題に。その後の反応も少なくなかった。社会的地位の高い人物、芸能人、テレビプロデューサーなど、各界で摂理の信徒探しが続いたことに加え、作品の過度な扇情性を指摘する声も多い。

そんななか、チョPDは10日、ソウルで行われた記者懇談会に出席し、このような指摘に対する自信の考えを率直に打ち明けている

撮影期間中、一部宗教団体の信徒たちから脅迫や尾行などの被害に遭っただけに、同日の記者懇談会は厳重な警備の中で行われた。

最も問題視されている点は、摂理内で行われた性暴力事件を扱い、被害者の一糸まとわぬ姿の動画や過激な録音音声などを、繰り返し見せたり聞かせたりした点だ。一部からは、性犯罪を過度に細かく表現していることは二次加害ではないのかという指摘もある。

これらについてチョPDは「本作品は映画やバラエティではなく、実際に誰かが受けた被害と事実だ」と前置きし、「多くの視聴者が不快と感じた録音と映像について、摂理内では“AIで操作した”、“体を売る女たちだ”と教育されている。当該動画の信徒たちには、“水着を着て撮った動画”と教育した」と明らかに。

(画像=Netflix)チョ・ソンヒョンPD

さらに、「動画が扇情的だというが恐ろしく醜い。(主犯の)チョン・ミョンソクはその映像を扇情的だと感じるだろうが、一般的な感性の成人男女は惨憺たる気持ちを感じるだろう」とし、「実際、ありのままを見せないと、彼らはまた別の防御をしていくだろう。当初はNetflixネットフリックスも懸念を示したが、受け入れてくれた」と伝えている。

続いて、被害者の性暴行場面を再現する方法や、ドキュメンタリーがジャーナリズムの領域を飛び出て、過度に当該宗教を審判するメッセージを伝えたという指摘に対しても「実際にどんなことが起きたのか、画(映像)で見せる方法が確実に視聴者に印象を残すことができる」とし、「マイケル・ムーアの『華氏911』もドキュメンタリーだ。私たちのプログラムは中間地点」と答えた。

韓国社会には何故、“自称・救世主”が多いのだろうか

チョPDは、韓国社会に疑似宗教の弊害が根絶されない理由について、処罰が軽いを挙げた。

「アメリカ版摂理事件の場合、終身刑に懲役20年を加えて宣告された。チョン・ミョンソクは数多くの女性に酷いことをしたにもかかわらず、わずか10年の刑しか言い渡されていない。電子足輪をつけたまま出所したが、その後も数多くの女性を翻弄し、被害者を量産した。被害者の中には未成年者もいる」と主張。

結果的に韓国はカルト教祖にとって安全な国になったわけだ。チョPDは「私たちの社会が、宗教に傍観者的な立場を取っていたのではないかと思う」とし、「宗教の自由という名の下でカルトも傍観しなければならないが、一定部分規制が必要だ」と強調した。

チョPDは『すべては神のために』公開後、最も憂慮される点として自身の家族を挙げた。

遅くに授かった子供がいるというチョPDは、「シーズン2をやると言ったら、妻が子供たちと家を出ると言った」とし、身辺の危険を提起したのだが、背景には「摂理編に出演したメープルの場合、40日待った。韓国入国後、信徒たちがメープルが泊っているホテルの前に陣取ったこともある。一番大変なのは、証言することを決めた一部の被害者の場合、突然連絡を途切れた場合だ。そんな時が一番大変だった」と打ち明けた。

(画像=予告編キャプチャ)顔を出して出演した被害者のメープル
(画像=Netflix)『すべては神のために:裏切られた信仰』

また「(TV局の)MBC内部にも摂理信徒がいると聞いた。撮影中、私たち側の情報が流出し続け、チームの人たちはもちろん、Netflix側も非常に疑った」とし、「ただし、摂理信徒たちが社会的に害悪を及ぼさなかったとすれば、その方々を対象にした“魔女狩り”は自制しなければならない。過ちは教祖と一部のリーダーたちが犯したことだ。その点を混同してはならない」と力説している。

さまざまな困難のなか、顔を公開して証言した被害者に対する激励も頼んだ。「顔を出してくれた人々にとても感謝し、彼らの勇気が社会的に受け入れられれば良い」とし、「彼らは、二度と私のような、そして子供を失う母親が生まれないことを願っている。尊敬されるべきであり、非難や嘲弄の対象になってはならない」と強調した。

チョPDは番組内で言及した「アガドンサン編」の公開禁止仮処分申請が、近い内に提起されそうだとし、「もしかしたら公開が取りやめになるかもしれないので、大変でも必ず観て下さい。数多くの嫌な場面があるが、観れば理解してくれると思う。観ない自由もあるが、観ると決めたならなるべく耐えて観てほしい。話したいことが多い」という願いも伝えた。

さらに、「シーズン2を準備している。家族が苦しんでいるが、扱いたい話が多い状況なので勉強をもっとしている」と付け加えた。

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