韓国で“格ゲー”が流行っていないワケ、日本とは異なるゲーム史が要因か

2021年06月08日 社会 #eスポーツ

アイスランドのレイキャビクで行われていた『LEAGUE OF LEGENDS』(リーグ・オブ・レジェンド、以下LoL)の国際大会「Mid-Season Invitational」(MSI)が、5月23日に幕を閉じた。

今年は中国代表のRoyal Never Give Upが優勝の栄冠に輝いたが、eスポーツ強豪国である韓国代表のDAMWON Gaming KIAも決勝に駒を進めていた。決勝で惜敗したものの、強豪国らしく見事なプレイで接戦を繰り広げ、大会を大いに盛り上げていた。

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このように『LoL』のようなチーム戦や『PUBG』などのシューティングゲームでは無類の強さを誇る韓国だが、なぜか格闘ゲームだけはあまり流行っていない。

格闘技ゲームの分野では、梅原大吾、板橋ザンギエフ、ときどなどの有名プレイヤーを輩出している日本のほうが一日の長があると言っても過言ではない。

(写真提供=ライアットゲームズ)「MSI」で準優勝だったDAMWON Gaming KIA

なぜeスポーツ強豪国である韓国で格闘ゲームが流行っていないのか。そこには韓国ならではのゲーム事情と、急速に発展してきた歴史が関係している。

韓国で格ゲーが流行っていないワケ

そもそも韓国のゲーム史を紐解くと、1990年代には格闘ゲームが幅広く親しまれていた。『イー・アル・カンフー』から始まり『ストリートファイター』『鉄拳』『大乱闘スマッシュブラザーズ』など、日本の有名タイトルは韓国でも人気だった。

しかし2000年以降はこの勢力図が一変することとなる。

その大きな要因となったのは、1990年代半ばから登場し始めたPC房(バン)の存在だ。

PC房とはインターネットカフェのようなもので、韓国でPCバンが普及し始めた当初は、実際にネットカフェとして活用されることのほうが多かったが、2000年代初頭にオンラインゲームが登場したことにより状況一変。PC房はお茶をしながらインターネットを楽しむ空間から、本格的にゲームをプレイする場所へと変化していった。

ただし、オンライン格闘ゲームは流行らなかった。その原因となったのは、オンライン対戦によって生じる“タイムラグ”だったと言われている。

ネットを介して格闘ゲームをプレイすると、通信速度が追いつけずラグが発生してしまうため、0コンマ数秒を争う格闘ゲームが忌避されたというのだ。

ハードルの高さも要因に

良くも悪くも当時の格闘ゲーム自体が非常に緻密な作りとなっていたため、操作が通信速度のタイムラグに追いつけなかったことが、韓国で格闘ゲームのオンラインプレイ定着に至らなかった要因と言われている。

ちなみにその名残りもあって、現在、韓国で活動するプロ格闘ゲーマーの多くはあえてオフライン大会に出場しているそうだが、オンラインゲームが大勢を占めている現代において、新規プレイヤーに対する障壁の高さも問題だ。

最新の格闘ゲームを初めてプレイするには、昔よりも精巧な最新のグラフィックに耐えうるモニター、ゲームソフト、追加キャラなどへの課金など、準備するだけでもかなりの金額がかかるため、基本プレイが無料のネットゲームへの流入に拍車をかけている。

またオンラインゲームのキーボード操作が標準となっている若者にとっては、格闘ゲームのコマンド入力が複雑で覚えられないようで、動作が割り振られたキーを叩くだけで良いオンラインゲームの容易さが際立つのだ。

しかし時代は常に巡り、何が起こるかわからない。ファッションや音楽などでは頻繁にリバイバルブームが起こっている。いつか韓国でも格闘ゲームブームが再び訪れるかもしれない。

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