「K-POPの危機」を迎えたHYBEの新戦略…“コアなファン+アルバム中心”からのパラダイムシフトとは

2024年04月17日 K-POP

BTSやSEVENTEEN、NewJeansなどで知られる韓国最大手芸能事務所HYBEがK-POPの新しい歴史を切り開いている。

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まぐれではなく、緻密な戦略で「アルバム」から「音源」へのパラダイムシフトを成功させたという評価だ。

LE SSERAFIM、NewJeans、ILLITのいわゆる「HYBEガールズグループ3姉妹」が、世界トップクラスのアーティストだけが狙うことができる米ビルボード「HOT100」チャートに相次いで名前を上げた。

特にILLITは、韓国語音源で構成されたデビュー曲で「HOT100」にチャートインしており、意味が格別だ。アルバムから音源へと事業の中心軸を移すHYBEのパラダイムシフトが上手くいっている証拠に他ならない。

「コアなファン」から「ライトファン」へ

ILLIT
(写真提供=OSEN)ILLIT

そもそも米ビルボード「HOT100」は、アメリカで最も人気のある曲のトップ100だ。フィジカルアルバムの販売量、デジタルストリーミング再生回数、YouTube再生回数などを総合的に判断し、一生に一度だけチャートインするだけでも困難な、大衆的な人気を計ることができる尺度だ。

「HOT100」の点数集計には、ラジオエアプレイの点数が含まれ、非英語圏のアーティストには越えられない壁と見なされてきた。しかしHYBEアーティストたちは、そんな「HOT100」チャートを簡単に出入りする姿で目を引く。

彼らの最近の音源を見ると、聞きやすいながらもアメリカ現地で流行しているトレンディなジャンルを採択しているという共通点がある。

NewJeansは「UKガラージ」と「ジャージークラブ」、LE SSERAFIMは「アフロビート」、ILLITは「プラグンB(pluggnb)」と「ハウス」のハイブリッド音源で、「HOT100」入りに成功した。強いビートを強調してメッセージを投げかけていた従来のK-POPガールズグループの音楽とは差別化されており、現地の大衆が良い反応を示したと分析される。

LE SSERAFIM
(写真提供=OSEN)LE SSERAFIM

HYBEが大衆性と話題性を兼ね備えた音源を披露できるのは、偶然の産物ではなく、徹底した戦略だという評価だ。HYBEは、「コアなファン」「アルバム中心」というK-POP産業の従来の文法から抜け出し、「ライトなファン」「音源中心」への拡張を方向性として持っている。

そんな体質の変化は、HYBEパン・シヒョク議長が主導しているものと見られる。

先立って2023年3月、パン・シヒョク議長は韓国の言論人団体である「クァンフンクラブ」が主催するフォーラムに参加し、K-POP関連の各種指標の下落が明確に観測されていると強調。過去に黄金期を謳歌して衰退した香港映画や日本漫画のように、K-POPも一時のシンドロームで終わる可能性があるという危機感を示した。

また同年、とあるバラエティ番組に出演したパン・シヒョク議長は、K-POPの危機を克服する解決策として、ライトファンの拡大について言及。大衆性を強化し、K-POPを少数のマニアが消費するマイナージャンルではなく、一般大衆にもアピールできるメジャージャンルに変貌させなければならないと主張した。

その戦略が成功するためには、K-POPファンではない層にも訴求できる良質の大衆的な音源を披露することが必須条件だ。

NewJeans
(写真提供=OSEN)NewJeans

HYBEは長年にわたり、世界的な音楽制作能力を身につけるために準備してきた。

ここ数年間、ITHAKAホールディングス、QCメディア、Big Machineレーベルグループなど、アメリカ現地有数のレーベルを相次いで買収。そうして積み上げられたインフラとネットワークは、HYBEがグローバル音楽市場のトレンドを素早く吸収できる土台となり、「ビルボード級」のプロデューサーと協業できる背景として作用した。

代表的に、BTS・JUNG KOOKのソロアルバム『GOLDEN』の数多くの収録曲、LE SSERAFIMの3rdミニアルバムのタイトル曲『EASY』などは、現地プロデューサーとの協業を通じて「HOT100」チャートに入った成功例だ。

「フィジカルアルバム」から「音源」へ

HYBEのフィジカルアルバムから音源中心へのパラダイムシフトは、グローバル音楽市場の流れとも合致する。

BTS・JUNG KOOK
(写真提供=OSEN)BTS・JUNG KOOK

韓国とは異なり、グローバル音楽市場の主要収益源は、フィジカルアルバムからデジタル音源に市場が再編されて久しい。

国際レコード産業連盟(IFPI)の統計によると、音楽ストリーミング市場の規模は、2014年130億ドル(約2兆円)から2023年286億ドル(約4兆4000億円)へと爆発的な成長を記録した。全世界のレコード会社市場の売り上げの67.3%がストリーミングから出ており、世界最大の音楽市場であるアメリカの状況も似ている。

アメリカレコード協会(RIAA)は2023年、アメリカ音楽小売市場の規模が前年比7.7%増の171億ドル(約2兆6000億円)であり、その84%にあたる144億ドル(約2兆2000億円)がストリーミングから創出されたと明らかにした。

音源がグローバル市場攻略の“カギ”ということだ。

HYBEの音源競争力の強化は、財務的な成果で立証されている。HYBEアーティストの音源の売り上げが2021年1570億ウォン(約157億円)から、2023年2980億ウォン(約298億円)と約2倍も成長したのだ。

同期間、HYBEの国内レーベル音源の売り上げは400億ウォン(約40億円)から1071億ウォン(約107億円)へと2.5倍も増加しており、海外レーベルも800億ウォン(約80億円)台から1502億ウォン(約150億円)へと2倍近い成長を見せた。そしてHYBEの音源売り上げの86%が海外から作られた。

最近、ユニバーサル・ミュージック・グループと締結したグローバルアルバム・音源独占流通契約も、やはりHYBEの戦略によって得た成果と見ることができる。

パン・シヒョク議長
(写真提供=OSEN)パン・シヒョク議長

これに先立って、前出フォーラムの演説でパン・シヒョク議長は「K-POPの限界を克服するためには、グローバル流通会社と交渉できる規模の経済を整えることが重要だ」と強調した。

確保された交渉力を基盤に、より良い条件の流通料率を手にすることで、会社とアーティストの成長に役立つ財務的成果を出し、より良いプロモーション機会を確保して、自分たちが披露しようとする音楽やアーティストをより多くの人々に認知させるという説明だ。

パン・シヒョク議長の発言からちょうど1年後、HYBEは世界最大級の音楽会社であるユニバーサル・ミュージック・グループとグローバル流通アルバムの独占契約を締結した。大衆性を担保した音源を通じて、日増しにグローバル音楽市場で影響力を拡大するHYBEをユニバーサル・ミュージック・グループがパートナーに選んだと解釈できる。

ユニバーサル・ミュージック・グループが保有する音楽流通インフラとプロモーション、マーケティングの力量は、HYBEのグローバル市場における占有率拡大の翼となる見通しだ。

(記事提供=OSEN)

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