「正直に言えば、たまに、軍隊より大変なときもありました。もちろん、軍隊にまた行けるかというわけではありませんが」
ウ・ドファンは最近、ソウル・江南(カンナム)のとあるカフェでインタビューを行った。彼は、6月14日から公開されたNetflixオリジナル『ブラッドハウンド』について話を交わした。
同名のウェブトゥーンを原作とした『ブラッドハウンド』は借金返済のため、貸金業の世界に足を踏み入れた3人の若者が、引退したサラ金業界の伝説・チェ社長とともに、悪名高い違法ヤミ金業者に立ち向かうという物語を描いた。
ウ・ドファンは劇中、貸金業に足を踏み入れる青年ゴヌ役を演じた。
2019年の映画『ディヴァイン・フューリー/使者』(以下、『使者』)から4年ぶりに、インタビューの場に立ったウ・ドファンは、軍服務を終えて帰ってきた。『ブラッドハウンド』は、そんなウ・ドファンの除隊後初の作品だ。
先立ってドラマ『朝鮮弁護士』(MBC、原題)が先に公開されたが、撮影は『ブラッドハウンド』が先だった。
しかし、『ブラッドハウンド』に出演した女優キム・セロンが飲酒運転でドラマを降板し、主要キャラクターだった彼女の分量は、劇後半部に影響をあたえたりもしたが、ウ・ドファンは作品への愛情と責任感を持ち、撮影に臨んだ。
ウ・ドファンは「この作品を守るために、たくさんの努力をした。みんなあまりにも親しく過ごしていて、作品の成績が上がるたびに誰一人歓呼せず、胸をなでおろして『よかった』と安堵した。悪く言われる部分もあるだろうが、気に入ってくださる部分もあって、私たちの努力が通じたと思った。精神的にも肉体的にも死の寸前まで見える瞬間もあったが、よく耐えたという思いを視聴者の方々が作ってくれたようで嬉しかった」と打ち明けた。
「私の立場としては『ブラッドハウンド』が復帰作であり、あまりにも大きな負担感もあった。やったことのないキャラクターなので、恐怖もあった。ツンデレ、もしくは最初から面白いキャラクター、かっこいいキャラクターを中心に作品をやってきたが、ゴヌは“デンデンみ”(子世のような可愛さ)が溢れているというか、ある意味では可愛らしくてアホみたいかもしれないが、またアクションは誰よりも上手にこなさなければならないということでいっぱいだった。それでもカメラの前に立つのがぎこちなかったかもしれない。兵役に行ってから2年ぶりの初作品なので。そんなことを含めてたくさんのことを考えた。大変さも他の作品より倍になった。『朝鮮弁護士』を撮る前なので、この作品がファンに、視聴者の方々に一番先に復帰挨拶をする作品だと考え、さらに集中した。また、体を使う作品なのでアドレナリンももっと出た」と感想を述べた。
『使者』でもともにした監督に対して、ウ・ドファンは「ジュファン兄さんは軍隊でも一番連絡をとった人だ。ほとんど恋人のような間柄だ。この作品をしながら兄さんが私に『筋肉の鎧を着ろ』と言った。少し前までは、爬虫類の鎧を着せておいて、筋肉の鎧かと聞いた。この人と作品をするといつも苦労すると感じるし、互いに知っている。でも兄さんだから、この俳優だからお互いに信じて任せているようだ。兄さんがいなかったら、他の作品でもこのように運動して体は作れるだろうが、私がゴヌになりきって、セリフを言うことはできなかったと思う。兄さんが見た私の姿のなかで、どこかにゴヌがいたから書いたので、本当に親しくなければ最初から俳優に変身してほしいとは言いにくい。俳優も反感を覚える。視聴者たちは私にそんなことを望んでいないのに。それだけ信じたので、信じていけたようだ」と話した。
最近、ヴィランが人気を得ているトレンドとは異なり、ゴヌというキャラクターは非現実的なほど優しくて善良な人物だ。
ウ・ドファンは「原作と私はあまりにも違う。私も最初は『ここまでやるの?』と思った。リーディングをしながらも、常に善良な心を持つというのが可能なのかと思った。私もそうではないので。それでもっと必要なキャラクターだと思った。コロナウィルスの時代は皆が大変だったし、それでも他人のせいにせず自分自身をアップグレードして危機を乗り越えていこうとする姿が、常に“私より他人のため”という姿勢が世の中に必要だったし、必要な人物だと思った。だから、あまりにも漫画的でファンタジー的なキャラクターだが、明らかに多くの方々が望むキャラクターではないかと思った。このような気持ちで心の中の反感を脱ぎ捨て、『私がヒーローにならなければならない』という気持ちがあったようだ。キャプテンアメリカ、『鬼滅の刃』の炭治郎と同じキャラクターが多い。悪口も言わず、そういうキャラクターがモチーフだった。『こういうキャラクターもいたのか』という印象を与えたかった」と説明した。
格別な覚悟と責任感のおかげだろうか。
ウ・ドファンは本作を通じて、ボクシング選手であるゴヌに合わせ本物の運動選手のような体を作った。この役作りに好評を得ている。「もともと管理していたものから週に5日運動したとすれば、7日をして、食べものをもう少しいいものをたくさんと食べた。普段と違ったのはボクシングをしたことだ。少しずつ強度を上げただけだ」
「一日二日、二・三カ月以内にできるわけではないと思う。することはできても、ここまで完成度のあるものはできないようだ。ある意味、私も知らずに準備をしているような気がした。それで私には代表作を変えることができた機会だと思う。一つの代表作を自信を持って話せる機会ではないかと思った。まだ多くの方々が『君を守りたい ~SAVE ME~』(2017年のドラマ)で記憶してくださっていて、ある方は『君を守りたい 貸金業版』というコメントもあったが、私の立場では本当に一生懸命やった」と力を込めて伝えた。
軍隊と『ブラッドハウンド』を比較しても苦労が変わらないと言ったウ・ドファン。「本当にたまには、撮影より軍隊が楽だという気もした。現場に運動をしに行く感じだった。撮影が終わったからといって私の日課が終わるわけではなく、また運動をしに行かなければならなかった。ゴヌのような気持ちがなければ、できなかったと思う。試合が終わって翌日も運動をしに出かけるゴヌだから…そのように生きてきた。本当に冗談ではなく、心から『軍隊にまた行きたい』という気さえした。もちろん絶対行けない」と笑いを誘った。
ただ、「体脂肪は測っていない。撮影をする時は68kgくらいだったけど、今回80kg近く行った。体脂肪はほとんどないだろう。私も初めて見る体だった。毎作品脱ぐことはできるが、このようにきちんと脱いだのは初めてだった」と役作りのための努力も伝えた。
さらにウ・ドファンは「監督がボクサーの体を望んでいた。フィットネスで大きくなった胸の筋肉や体ではなく、実戦に必要な筋肉を望んだ。海外のボクサーたちを見ると、肩、背中、腹筋が発達しすぎたのがボクサーたちの体だった。首まではあまりに綺麗ではなくなるので、了解を得た。具体的に言っていたのは、監督がフィジカルを重要視しているのが、一日でも誠実に生きないと目立つのが体だ。体力もそうだし。皆を導くゴムのようなキャプテンの立場としては、そのような体が必要だと思った。一人で多くの人々と戦うためには、その程度にならなければならないのが蓋然性があるのではないかと考えた」と強調した。
一番嬉しかった場面について、「1話のエンディングのアクションだと思う。あれを一日で撮った。それだけ武術チームと10人のエキストラの兄さんたちが苦労してくれた。とても寒いのに日が昇る前に終わらせなければならなかったのに、うまくやり遂げたし、多くの話題になっているということに対して満足感を感じる」と微笑んだ。
しかし、このように作品に愛着が大きいウ・ドファンもシーズン2については慎重だった。
彼はキム・ジュファン監督がシーズン2と関連して「さらに色々なストーリーができそうだと言ったら、私たちが決められることではないと言った。多くのデータも出なければならないし。そのために作られるなら面白そうだが、とても大変そうだ。シーズン1よりもっと良い体、もっと良いアクション、せめて維持でもしなければならないのではないか。時間が必ず必要だと思う。1・2カ月休んでできるわけではないので、やることになったら必ずやる。新しい悪役が出たら死なない方が多い。外国人俳優の方々が来てくださってもとても面白そうだ」と話した。
最後に「すべての作品において、苦労しなかった作品がどこにあるだろうか。しかし、多くの方々が本当に苦労した。だからもっと出てほしいと思った。全世界で2位だというが、私はこの作品が公開されただけでもとても感謝している。この言葉を必ず言いたかった」と切実な思いを伝えた。
そんな『ブラッドハウンド』はNetflixを通じて視聴可能だ。
◇ウ・ドファン プロフィール
1992年7月12日生まれ。キーイーストエンターテインメント所属。2016年に映画『MASTER/マスター』での演技が評価され、その年の「百想(ペクサン)芸術大賞」で新人俳優賞にノミネートされた。2017年のドラマ『君を守りたい~SAVE ME~』で初の主演を務め、一躍注目を集めるようになる。主な出演作にドラマ『ザ・キング: 永遠の君主』『私の国』『偉大な誘惑者』、映画『ディヴァイン・フューリー/使者』など。
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