女性タレントのアン・ヨンミがアメリカで出産すると明かし、“遠征出産”をめぐる議論に巻き込まれた。
先立って5月4日、コメディアンのシン・ボンソンがYouTubeに「アン・ヨンミが出産のためにまもなくアメリカに出国する」という内容の映像を公開し、議論が始まった。
アン・ヨンミの夫は現在アメリカで働いており、出産を控えたアン・ヨンミが夫と一緒にいたいと選択したことだったが、火の粉は他のところに飛んだ。
映像が公開された直後、一部からはアン・ヨンミが“遠征出産”を通じて兵役の恩恵を享受しようと意図したのではないかという疑惑を提起した。実際に彼女のチャンネルには、「お金は韓国で稼ぎ、子供は二重国籍者を作って兵役などの恩恵を与えようとしているのではないか」「出産前の臨月にあえてアメリカに行くのはなぜか」「実家が韓国なのにあえてアメリカに行く理由が怪しい」などのコメントがついた。
これに対してアン・ヨンミは「うちのタクコン(胎児名)はようやく8カ月になった。それもお腹の中で。すでに軍隊の問題まで考えてくださるのは、あまりにも遠い話のようだ」とし、「どうせならわからない未来に対する推測よりは、今お腹の中にいる子供を祝福してあげたらどうか」と文章を載せたりした。
そして「夫がベトナムにいてもフィリピンにいても行ったはずだ。人生に一度だけの大切な妊娠期間、出産、育児を一人でできるわけがない。愛する夫と一緒にいなきゃ」と付け加えた。
ただ一部からの疑惑とは異なり、アン・ヨンミの“遠征出産”に関する議論は、そもそも成立しない。国籍法が改正されたためだ。
遠征出産によって兵役を逃れるケースが増えたことで、2005年に国籍法が改正された。
改正された国籍法の第12条3項によれば、「直系尊属が外国で永住する目的なく滞在した状態で生まれた者は、兵役義務の履行と関連して次の各号のいずれかに該当する場合にのみ、第14条による国籍離脱申告ができる」と記されている。
各号とは、①現役・常勤予備役・補充役または代替役として服務を終えるか、終えたと見られる場合、②戦時勤労役に編入された場合、③兵役免除処分を受けた場合だ。各号に該当する兵役義務を履行することなく、国籍を捨てる方法がない。つまり韓国国籍を放棄するためには、まずは兵役義務を履行しなければならない。
2000年代初めまでは、二重国籍の男性は満17歳までに韓国国籍を放棄し、海外国籍を選択することができた。当時、遠征出産による兵役逃れは、これを悪用した方法だった。韓国国籍でないのであれば当然、兵役義務もなくなる。
しかし韓国国会は2005年に国籍法を改正した。両親が留学生、在外公館員、商社駐在員などの身分で外国に滞在して生まれた息子が二重国籍を取得した場合も、韓国国籍を放棄できなくなった。遠征出産を通じた兵役逃れの可能性を元から封鎖したわけだ。
当然ながらアン・ヨンミも例外ではない。アメリカでの出産を通じて子供が市民権を得たとしても、兵役義務を終えなければ韓国国籍を捨てることができなくなっているからだ。
アン・ヨンミの言葉のように、まだ生まれてもいない子供をめぐって兵役に関する議論が起きたのは、それだけ類似した事件が多く発生したことによる一種の“集団的トラウマ”が発症したものと見られる。
文化評論家のキム・ソンスは「大衆は基本的にアメリカや日本のように、(韓国より)享受できる地位が多いと感じるところで、両親の安定的な支援を受けて地位を獲得するということに対する反感がある」とし、「これを“無料乗車シンドローム”という」と指摘した。
続けて「外国国籍取得と兵役逃れを目的とした富裕層の海外遠征出産に対する反感がアン・ヨンミにも適用された」とし、「国際結婚をして遠征出産し、市民権を獲得すること自体が庶民が享受しにくいことであり、これに対する心理も作用したのだろう」と説明した。
また、「芸能人は人々に多く知らされ、影響力があると考えるので、大衆は社会全般の問題に対して不便を感じるとき、自分が振り回せる権力を利用して正そうとしている」と話した。
では、これに対する解決策は何だろうか。キム・ソンスは「アン・ヨンミが遠征出産で得る利益を先に考えるより、遠征出産で得られる利益がないということを社会が先に証明しなければならない」とし、「そうなれば遠征出産に対する悪い認識もなくなるだろう」と強調した。
そして「事大主義的な考え方のために芸能人が公職者よりさらに透明な道徳性を要求されている状況」とし、「健康な市民意識を持つようになれば、冷徹に問い詰め、誤っただけの責任を問うことになるだろう」と付け加えた。
◇アン・ヨンミ プロフィール
1983年11月5日生まれ。2004年にKBS第19期公採コメディアンとしてデビュー。KBSの『GO! GO! 芸術の中』で人気となり、2009年にはKBS演芸大賞の女性コメディアン部門で優秀賞を受賞。2013年には過激な写真集を発表し、大きな話題にもなる。2018年には女性コメディアン4人で結成されたダンスボーカルグループ“セレブファイブ”の一員も務めた。
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