鉄壁のようだった大手韓国芸能事務所の首長の影響力が、今では“オーナーリスク”となっている。オーナーリスクに対してSMエンターテインメントは変化を、YGエンターテインメントは回帰を選んだ。
現在のK-POPの基盤を作った屈指の2大芸能事務所が、BTS(防弾少年団)を筆頭にしたHYBEの躍進に待ったをかけるべく異なるカードを取り出した。
SMエンタはイ・スマンの退陣を、YGエンタはヤン・ヒョンソクの復帰を選んだ。彼らの交錯した歩みが、急速に変化するK-POPの“生態系”にどんな波紋を呼ぶか業界の関心が集中している。
まずSMエンタは、「イ・スマンのいないSM」を宣言した。
去る2月3日、イ・ソンス、タク・ヨンジュン共同代表は、SMエンタの設立者イ・スマン総括プロデューサーの独占プロデューシング体制から抜け出し、5つの制作センターと内・外部レーベルが独立的に音楽を生産する「マルチプロデューシングシステム」を導入すると発表した。
30年近く続いてきた創業者イ・スマンの“1人プロデューサー体制”が幕を閉じたのだ。
一方でYGエンタの選択は違った。
YGエンタを設立したヤン・ヒョンソク総括プロデューサーは、2019年のバーニングサン事件をはじめ、海外遠征賭博、性接待、さらにiKONのB.Iと関連した麻薬犯罪隠蔽疑惑で四面楚歌に追い込まれると、同年6月に辞任した。
しかし2022年12月、ヤン・ヒョンソクは麻薬捜査をもみ消すために情報提供者を脅迫した疑い(報復脅迫)関連の1審で無罪判決を受け、法的リスクを減らすと、3年6カ月ぶりに自分の席に戻った。
復帰と同時に、これ見よがしに新ガールズグループ「BABYMONSTER」のローンチングも知らせ、連日下り坂だったYGエンタの株価は、新年初日の市場ではなんと9.58%ポイントも跳ね上がった。
業界ではK-POP産業の規模が日増しに大きくなっているだけに、オーナーリスクの管理がいつにも増して重要になったと口をそろえる。イ・スマンとヤン・ヒョンソクがK-POPの成長において絶対的な役割を果たしたことは否定できない事実だが、彼らの名前の3文字がすぐに会社のイメージを代表するため副作用も侮れない。
とある関係者は、「もはやエンターテインメント企業はアーティストだけを管理する会社ではない。HIVEがIR(企業広報)で株主との疎通を強化し、IP(知識財産権)戦略に力を入れるのも韓国屈指の大企業と肩を並べるほど規模が大きくなったため」と述べた。
続けて「内部でイ・スマンは“先生”、ヤン・ヒョンソクは“会長”で通じている。精神的支柱として統率された首長の影響力は昔話だ。企業を育てたオーナーがかえって足を引っ張る形になりかねない」と話した。
SMエンタのイ・スマンの退陣決定は、断腸の思いで下した決断であり、刷新に向けた覚悟だ。
イ・スマンはH.O.T、S.E.S、SHINHWA、SUPER JUNIOR、東方神起、少女時代、EXOなど数多くの韓流スターを発掘し、最近もNCT、aespaなどを通じて衰えることのない慧眼を見せた。
しかし時代が変わり、SMエンタの地位は以前のようではない。SMエンタはイ・スマンの個人会社「ライク企画」に対して集中的に仕事を預けたとの議論で数年間、苦しんだ。音楽諮問の名目で年間100億ウォン(約10億円)がライク企画に流れた。最終的にSMエンタは2022年10月、ライク企画との契約早期終了を決めたことに続き、イ・スマンとの契約も終了させて大々的な変化に乗り出した。
イ・スマンのいないSMエンタと大々的な組織改編によって、内部では混乱も生じているが、証券業界ではイ・スマンの退陣を好材料と見ている。イ・スマンがいない「SM3.0」時代に対する期待が反映されたと見ることができる。
この状況は、YGエンタにも示唆するところが大きい。
ヤン・ヒョンソクはB.Iの麻薬捜査をもみ消そうと情報提供者を脅迫した疑惑に対して嫌疑なしの判断を受けたが、これに対して検察が控訴した状況であり、海外で数億ウォン台の賭博をした疑惑は有罪と認められ、罰金刑を宣告された。
麻薬と関連した所属アーティストたちの絶えることのない事件・事故で、YGエンタを見つめる視線はますます悪くなった。ここに決定打を与えたのはバーニングサン事件だった。
まもなく出所するBIGBANG出身のV.I(本名イ・スヒョン)が中心にいたバーニングサン事件の余波で退陣したヤン・ヒョンソクが、静かに復帰する姿は大衆に反感を抱かせるほかはない。上場企業でオーナーリスクの管理は必須だ。
BLACKPINKの躍進と新ガールズグループに対する期待感で株式が一時上昇しているが、オーナーリスクが続く状況でYGエンタの未来を楽観視できるかは、はなはだ疑問だ。
■イ・スマン去るSMエンタ、新体制を発表「3グループデビュー、アルバム1800万枚目標」
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