――本作では、4人(イ・ジウン、ユン・ヘリ、キム・サンホ、イ・ジュヨン)とのエピソードがそれぞれ描かれましたが、最も印象に残っているのは?
ヨン・ウジン:観る度に変わります。どのような視点、観点で観るのか、またその時の心理状態によっても変わってくると思います。実はこのインタビューを受けるにあたって、もう一度作品を観直したのですが、今回は1つ目のエピソードがとても心に残りました。今、私が母親と同居している影響もあるかもしれないですが、私の母親はどのような人生を送って来たのだろうか、若い時はどんな風だったのだろうか、また母として女性として、どのような人生を歩んできたのだろうか。息子として、とても気にかけるようになりました。今は同居していますが、結局のところ命には限りがあって、“いつかはいなくなるからこそ、今をもっと大切にしなくてはいけない”という感情にもなれます。
――劇中、度々出てくる“煙草”がキーアイテムのように感じましたが、何を意味しているのでしょうか。
キム監督:この映画はチャンソク(演者ヨン・ウジン)が4人に会い、1つに繋がるオムニバスのような形式になっています。その中で登場する小道具も、その流れに沿って繋がっており、その一つが煙草でもあるわけです。映画の冒頭、チャンソクと母の間で、煙草に関する会話があったり、チャンソクのお母さんの言葉から始まり、2つ目のエピソードの喫煙シーンでは、煙草の火だけが映るシーンがあります。煙草が象徴的な意味合いを持っているのは確かで、重要な役割を果たしています。
――近年出演してきたラブコメドラマ『内省的なボス』『君の歌を聴かせて』や、時代劇『七日の王妃』とは異なり、静かで穏やかな作品ですが、演じる上で難しかった点はありますか。
ヨン・ウジン:『夜明けの詩』の前に、『プリースト』(邦題『プリースト~君のために~』)という作品を撮っていたのですが、それとはまったく異なる作品でした。特に日本の皆様が私の代表作として観て頂いたであろう作品はラブコメが多かったと思うので、そのような“色”をたくさん出さなければならない内容でした。ただ今作に関しては、むしろ(色を)“消す”ということがとても重要でした。そして“空間と余白”=チャンソク、という私は思いましたし、監督ともいろいろなことを話し合いました。『プリースト』から抜け切れていないかなと思ったので、初めは少し戸惑いもありましたが、“空間と余白”というポイントを掴んでからは、(役を)理解して演じられたのではないかなと思います。
――劇中、さまざまな形の“離別”が描かれますが、これは監督の経験ですか。そして監督が最近経験した“別れ”はありますか。
キム監督:今回の映画でも描かれているのですが、生死にまつわる“会えない人”に関することがテーマで、前作からの繋がりでもあります。前作を作ったことによって、そこからまた新たなクエスチョンが浮かび上がって、またそれを次の作品に込めるという形で撮っています。今回の主人公チャンソク1人が他4人の話を聞いて物語が進むのですが、これは“対話式”だと私は思っています。
前回の『ザ・テーブル』(邦題『窓辺のテーブル 彼女たちの選択』)も対話式だったのですが、これを取り入れることによって、他の視点を持つことになる、そして聞いている人(チャンソク)も他の人の話を聞くことによって、内面的に変化したり、成長したりするということを描きたかった。また人と人とがコミュニケーションを取って、それがどのように聞く側に影響を及ぼすのかというのを描きたかったわけです。あと最近、私が経験した個人的な別れはありません(笑)。