韓国時代劇といえば、厳しい境遇の中で苦労しながら努力して成長する女性主人公を描いた傑作が多い。
そんな作品の主人公となっていた女性の中から、とても有名な5人をピックアップしてみよう。
◆仁粋(インス)大妃 〔1437~1504年〕
7代王・世祖(セジョ)の長男・懿敬(ウィギョン)の妻。懿敬は世子だったので、本来なら王妃になるはずだったが、懿敬が19歳で夭逝したために叶わなかった。しかし、彼女が産んだ二男が9代王・成宗(ソンジョン)となり、王の母にあたる“大妃”となって絶大な権力をふるった。しかし、孫の燕山君(ヨンサングン)に暴力をふるわれ、それが原因で亡くなった。
◆長今(チャングム) 〔生没年は不明〕
『朝鮮王朝実録』の記述に登場する伝説的な医女。16世紀前半、11代王・中宗(チュンジョン)のそばで治療にあたり、中宗の長男を出産時にとりあげたとされている。王族女性の侍医としても非常に有能であったと思われる。彼女を主人公にして時代劇『宮廷女官チャングムの誓い』が制作された。
◆黄真伊(ファン・ジニ) 〔生没年は不明〕
10代の頃には、あまりの美貌に求愛する青年が続出したという。中には、恋煩いの末に亡くなった人も出た。そうしたことに心を痛めて、妓生(キセン)になったと言われている。すばらしい芸術性に恵まれ、詩歌や舞踊の才能が卓越していた。時代劇『ファン・ジニ』のモデルとなったが、その詩歌は韓国の教科書に載るほど著名だ。
◆申師任堂(シン・サイムダン) 〔1504~1551年〕
朝鮮王朝時代の「良妻賢母の鑑」と言われる。幼い頃から絵画や詩歌で才能を発揮。虫を描いた紙を庭で干していたら、鳥が本物と勘違いして食べてしまったという。今では、韓国の5万ウォン紙幣の肖像画になっている。ちなみに、5千ウォン紙幣の肖像画は息子の李栗谷(イ・ユルゴク)。親子で紙幣の肖像画になっているのは世界的にも本当に珍しいことだ。
◆淑嬪・崔氏(スクピン・チェシ) 〔1670~1718年〕
19代王・粛宗(スクチョン)の側室。時代劇『トンイ』のモデルとなった。宮中の下働きをしているときに粛宗に見初められた。以後は、張禧嬪(チャン・ヒビン)のライバルとなる。1694年に王子を産んだが、それが後の21代王・英祖(ヨンジョ)である。『トンイ』では善人として描かれていたが、実際には王宮の陰で暗躍した悪女という風評もあった。
(文=康 熙奉/カン・ヒボン)
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