韓国で絶賛開催中の第26回釜山国際映画祭(BIFF、10月7~15日)が折り返し地点を迎えた。
昨年は新型コロナの影響でほとんどがオンラインで行われたが、2年ぶりの正常開催ということもあり、祭典に訪れたゲストたちも浮き立っている様子だった。
そして現地を映画祭に訪れた観客たちからは笑顔が見られ、クリエイターの血と汗の結晶である映画に贈られた拍手の中には、映画祭開催に対する喜びが込められていた。
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開幕式のMCと、主演を務めたNetflix映画『スペース・スウィーパーズ』のために釜山を訪れたソン・ジュンギから、日本の濱口竜介監督と対談を行うポン・ジュノ監督に至るまで、今年の釜山国際映画祭は韓国映画界のトップスターたちが一堂に会した。
このほかにもイ・ジェフン、パク・ジョンミン、ユ・アイン、パク・ソダム、ハン・イェリ、チョン・ヨビン、チョン・ジョンソなど、数多くのスターが釜山に降り立った。彼らは「このように、直接お会いできて感激している」と口をそろえて感嘆の言葉を口にしていた。
釜山国際映画祭には、毎年海外からのゲストが多く訪れていたが、今年は大幅に縮小。しかし、コロナ禍の中でオフライン開催されたという点だけでも、意義深いものとなっている。
また11月19日に配信が始まるNetflix作品『地獄が呼んでいる』が、今年の釜山国際映画祭で初公開されるなど、OTT(動画配信サービス)オリジナル作品の躍進も感じられた。
俳優や監督だけではなく、観客たちも多いに楽しんでいるようだ。グッズショップは午前中から大混雑し、主要グッズは早くも売り切れたという。ショップスタッフは「ソーシャルディスタンスを実践しながら、一部の人数だけ入場する方式で運営されている。バッジは余裕があったが、一部のグッズは早くも売り切れていた」と話している。
コロナ禍の中で行われている今年の釜山国際映画祭は、“K-防疫”を強調している。取材陣が映画祭を訪れるためには、ワクチン接種完了から2週間が経過しているか、PCR検査の陰性結果が必要となった。
実際の入場には安心コール(電話を用いた入場記録チェック)と体温測定、アルコールによる消毒などが進められた。
1つのイベントが終わるたびに、防疫のための早期退場について理解を求めるなど、対策を実施していたが、入場までのプロセスが多いため、一部のイベントは見送られるなど、映画祭後半に向けて解決しなければならない課題として残ったという。
また、防疫当局の指針を受けたというが、ステージに上がったスターたちはマスクを脱いでいたことについて、「十分だ」「時期尚早だ」など、賛否両論の意見が巻き起こった。しかし、最も多くのイベントが行われる映画殿堂の周辺には、臨時診療所まで設けられ、容易に検査が受けられるなど、主催側の努力も目立っていることも事実だ。
スタッフが実際に検査を受けたところ、事前問診票を作成して行われ、待たずに受けることができた。そして翌日の昼頃には結果が通知された。
世界的にコロナ禍という特殊な状況ではあるものの、海外ゲストの参加日程には改善点が残った。
今年、カンヌ国際映画祭の監督賞に輝いたレオス・カラックス監督は、10月9日に記者会見を行う予定だったが、航空便の変更により急遽取り消された。その後、10日午後の記者会見を皮切りに、12日はGV(ゲスト・ヴィジット)などが行われる予定だ。レオス・カラックス監督を一目見ようと現地を訪れた取材陣や観客も、肩を落とさざるを得なかった。
そして映画『青い湖』(原題)を手がけた、韓国系アメリカ人のジャスティン・ジョン監督によるオンライン記者会見も、イベント15分前に突如中止に。
10月13日に公開される『青い湖』は今回、「ワールドシネマ」部門に招待され、1980年代に韓国で生まれてアメリカ人の両親と養子縁組を結んだ男性が、里親の無関心により市民権獲得の手続きを行わなかったため、約30年が経ったあと、不法滞在者として追放される危機に直面した物語を描いた。
その内容から“第2の『ミナリ』”と呼ばれる本作は、ジャスティン・ジョン監督が主演のアントニオとして出演し、移民の国であるアメリカ社会の影を生々しく描き好評を博した。
しかし、取材陣とのオンライン記者会見を控え、監督側に具体的な方法や内容が共有されず、齟齬が生じたという。映画祭側は「後日のスケジュールを決めたい」と謝罪したが、相次ぐスケジュールトラブルは一抹の無念さを残すこととなり、今後の大きな課題となっている。
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