新型コロナで死亡した“鬼才”キム・ギドク監督を韓国映画界が素直に追悼できない理由

2020年12月14日 話題

韓国映画『うつせみ』『春夏秋冬そして春』などで知られる“鬼才”キム・ギドク監督が、新型コロナの合併症で死亡したことが12月11日に知られ、衝撃を与えた。

映画界内外で議論が絶えなかったほどの問題の多かった彼の人生は、最後まで国民の関心を集中させた。享年60歳。

【注目】女優に対する性的暴行疑惑、キム・ギドク監督が敗訴

キム・ギドクは、韓国の監督として初めて世界3大映画祭で最高賞に輝くなど、作品ごとに世界の映画評論家から高い評価を集めていたにもかかわらず、性暴力告発キャンペーンである「Me Too」で加害者に指名されたことで“醜いモンスター”という評価を受けた。

2018年に韓国MBCが番組を通じてキム・ギドクの女優に対するセクハラを告発すると、訴訟を提起したが、映画の撮影などを理由に海外に滞在し、最終的には今年11月の訴訟で敗訴して名誉を回復することができなかった。

輝かしい功績の裏に…

暴力性に富んだ彼の作品世界は、観客が芸術に対する審美眼が不足していて理解できないだけかもしれないが、彼の実際の人生は、まったく尊敬ばかりできるわけではないという事実を否定することができない。

キム・ギドク監督

何よりも、彼の影響力が大きかった映画の撮影現場から伝え聞いた話では、芸術人である以前に人間として納得しがたい行動が続き、韓国映画関係者たちが以前から近づきたくない人物として有名だった。

『サマリア』でベルリン国際映画祭・銀熊賞(監督賞)を受賞し、『うつせみ』でベネチア国映画祭・銀獅子賞(監督賞)まで獲得した2004年に会ったキム・ギドク監督は、新人記者の立場では会うのが難しい人物だった。

世界的な巨匠のインタビューを先輩記者たちが後輩である筆者に任せた格好だが、後輩にチャンスを与えるという話ではなかった。彼らにとってキム・ギドクは親しくなりたい人物ではなく、また今後映画界の中心人物として成長する可能性もなく、言葉が通じないアウトサイダーという印象だったからだ。

実際に会ったキム・ギドク監督は、当時の先輩たちから聞いた酷評ほどではなかったが、奇人ではあった。また後に年を重ねて知ることになる彼の実生活と撮影現場での言動も、先輩たちの見方が正しく、むしろそれ以上に問題のある人物であることを確認することとなった。

彼の突然の死に対して、韓国映画界が特別な反応を示していないことを見るだけでも、彼がどんな人物であったかがわかる。韓国映画を世界レベルで評価された功績があるにもかかわらず、彼が現場で犯した罪が大きすぎて素直に追悼できないのだ。

残念であるよりは、当然の末路といえるかもしれない。新型コロナで苦しんだ2020年が暮れようとしているなか、韓国映画界は小さくない重荷を下ろすことができたとの声もある。

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