女優キム・ヘスにとって映画『私が死んだ日』(原題)は運命だったという。家族とのトラブルが世間に知られ、大きく傷ついていた時期に出会ったのが、この作品だった。
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韓国で11月12日に公開された『私が死んだ日』は、傷ついた女性たちがそれぞれの方法で克服していく過程を描く。
劇中で職場復帰を希望する刑事ヒョンス役を演じたキム・ヘスは、「タイトルを見た瞬間、運命を感じた。こんな経験はあまりないから、私も不思議だった。タイトルを見て『そうだ、私は死んだんだった』と思ったほど辛い時期に出会った作品だ」と告白した。
タイトルだけでなく、内容にも心を鷲掴みにされたという。「私のために書かれた文章みたいで。脚本を読み終えたとき、慰めを感じた。文章がとても良くて、これ以上のものが映像で作られるか心配になるほど素晴らしかった。もちろん、映画の仕上がりも良かった」
劇中のヒョンスのように、さまざまな苦難があったキム・ヘス。それに耐えられた原動力は何だったのだろうか。彼女は淡々とした口調でこう述べた。
「人生というのは、役者だからって特別なわけでもない。表向きは普通でも、中は問題が多い。 そのような危機に陥ったとき、私も途方に暮れる。免疫はできないようだ。ただ残像を残しながら生きている」
だからこそ、後輩たちにもこれといったアドバイスをしないという。
「私をロールモデルだと話してくれる後輩たちがたまにいる。とてもありがたいが、私は自分のことをよく知っているから恥ずかしい。若い頃、私は思慮が足りなかった。でも最近の子たちは本当に上手く振る舞っている。アドバイスを求められればまだしも、私から演技について話したりはしない」
インタビュー中、ずっと自分よりも他人を褒めることに真心を尽くしたキム・ヘス。
自分に対しては厳しいほうかと聞くと、「そうでもない。映画『10人の泥棒たち』のセリフである『自分との戦いをなぜ私がするの』に共感する。生きていれば喧嘩することも多いから、自分にはあえて喧嘩を売らない。ただ、演技に関しては寛大に見過ごすわけにはいかないので、厳しくなる部分はある」と話した。
キム・ヘスの話を聞いていると、30年以上愛されてきたのも頷ける。
「自分が選んだ仕事は一生懸命頑張る。それでも私より優れた俳優たちが多い。それに比べて私は運がいいほうで、だからこそ死ぬほど努力する。キム・ヘスに多少ガッカリする瞬間があっても、大衆が待ってくださるのはそのためだと思っている。本当にありがたい」
多様な職業とストーリーを持つキャラクターに扮して物語を引っ張るキム・ヘスは、今も色褪せない存在感を放つ。
「地道に作品に出演できるというのは幸せなことだと思う。もちろん感情が揺れるときもあるけど、緊張状態を維持するのが動力のようだ。疲れないと思われるけど、実はいつも疲れている。ただ、その状態で恐怖やときめきなど、何か小さな感情が動力になって、休まず進んでいけたりする。
この仕事をしながら毎回、新しくて神秘的な体験をする。何かの役がしたいと思ったわけでもない。ただ自然に出会って、生きていく。今はより良い次のステップに向けて運動も始めたし、再整備の真っ最中だ」
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