SHINeeのキーが、日本のファンと特別な時間を過ごした。
キーは11月29日・30日の2日間、東京・国立代々木競技場第一体育館で日本ソロ公演『2025 KEYLAND : Uncanny Valley in TOKYO』を開催した。
8月に3rdフルアルバム『HUNTER』をリリースしたキーは、9月の韓国・ソウル公演を皮切りにアジアの各地を巡り、ソロ初となるアメリカツアーを含むワールドツアーを開催中。本公演はその日本公演となり、『HUNTER』の収録曲をベースに、彼のアーティスト性を示す代表曲の数々も楽しめるライブとなった。
キーはオープニングから破格のカリスマ性を放った。メインステージを覆う映像が投影されたベールが落ちると、いくつものモニターが設置されたステージセットが出現。宇宙船のようなセットの中で、超合金ロボットを模したようなシルバーの衣装をまとったキーが登場した。
公演は、『HUNTER』の収録曲『Strange』で幕を開けた。生バンドの演奏によって原曲よりもダイナミックになったサウンドと、ロートーンからハイトーンまでを行き来する歌声が楽曲をドラマティックに彩った。宇宙船が徐々に降下してステージに着地すると、ダンサーを従えて『Helium』のステージを披露。続けて、MCを挟むことなく計7曲のパフォーマンスを披露した。
『HUNTER』の収録曲『Want Another』は、音源で機械的に刻まれていたリズム音が生のバスドラの音に入れ替わったことで曲全体の重みが増した。ラップから急にメロディアスになり、パワフルに畳みかけるパートへと移るなど、めまぐるしく変化する曲調に合わせてキーの歌声にも、生歌ならではの“人間味”が宿っていた。アウトロからはシームレスにバンドセッションへつながり、生バンドだからこそ実現できるライブ感を存分に発揮した。今回の公演は生バンドだからこそ作り出せる瞬間がいくつもあり、音源では味わえなかったシーンをファンに届けた。
「一緒に歌ってくれよ!」という呼びかけから始まった『Killer』では、冒頭からキーとファンとの“Killer”のコール&レスポンスが巻き起こった。韓国語の楽曲であるにも関わらず、会場には途切れることなくコールが響きわたり、キーとファンの絆の強さを感じさせた。タイトル曲『HUNTER』でもファンのコールが巻き起こり、キーのダイナミックな歌声と、ゾンビを彷彿とさせるキャッチーな振付、最後に花火が上がる派手な演出が合わさり、前半のクライマックスともいえる盛り上がりとなった。
オープニングからコンセプチュアルな楽曲が続き、ほとんど笑顔を見せることがなかったキーは「皆さんこんばんはSHINeeのキーです!」という挨拶とともに柔らかな表情を見せた。またツアータイトルについて、ロボットやCGなど人間に似た人工物が、ある程度リアルになった段階で、かえって不気味さや嫌悪感を抱かせる心理現象“Uncanny Valley(不気味の谷現象)”から来ていて、「慣れているものを見ているのに、気持ち悪くなってしまう、そんな可愛くて怖い存在のような、絶妙なポイントがたくさんあります」と明かした。
キーは挨拶を終えると、会場全体でコールアンドレスポンスや合唱が起こるようなポップで楽しい楽曲を披露した。『Heartless』の前にはキーの主導でステップとクラップの練習も行われ、会場に大きな一体感が生まれた。
その後、ピンクのユニフォーム風トップスにスパンコールを散りばめた迷彩柄のパンツを合わせたカジュアルな衣装に着替えたキーが登場し、ライブは後半戦に突入した。
キーは過去のアルバムのリード曲に今回のライブテーマに合う演出やアレンジを加え、新たな解釈でパフォーマンスした。『BAD LOVE』で床に跪いて許しを請うような姿を見せたかと思えば、『Gasoline』ではせり上がるセンターステージに立ち、炎の演出の中で周囲を先導していくような力強さを見せ、楽曲が持つポテンシャルを最大限に引き出した。
本編最後のMCでは年末を忙しく過ごしているというエピソードや、日本のコンビニでよく買う商品についてのトークなどで温かい雰囲気を作りつつ、12月から始まるアメリカツアーへの意気込みも語った。日本では流暢な日本語でMCを進めているキーだが、アメリカでも通訳無しで挑戦したいと語った。またSHINeeの活動に対しても触れ、メンバーそれぞれがソロ活動をしている状況だが「来年はソロアーティストとしても、SHINeeとしても頑張りたい」と意気込みを語った。
キーが、今回のライブコンセプトに「めっちゃ似合う曲」と紹介したラストパートの楽曲『Trap』では、ネガティブな感情から逃れられない主人公の苦悩を歌声と体全体を使って表現し、観客の視線を独占。余韻を残しつつ幕を下ろした。
アンコールでは、キーの公式キャラクター「BOK-SILLee」らをあしらったグッズのパーカーにニットキャップを合わせたキュートな衣装をまとったキーが、笑顔を振りまきながらパフォーマンスを披露した。さらに、2026年にソロ初となる日本でのホールツアーを行うことをサプライズ発表し、大歓声が上がった。歓喜の声を上げるファンたちに、これまで日本で行ってきたソロライブとは違う“日本オリジナルツアー”になることを明かし、「近い距離で皆さんと会えます」と特別なツアーになることを予告した。
最後は「この曲を歌うために、この曲で皆さんの目を見るために走ってきたと言ってもいい」と語り、『HUNTER』収録曲を披露。「皆さんありがとう!」と叫んで公演の幕を閉じた。
ツアーごとにさまざまなコンセプトを見せてくれるキーが、次のホールツアーで見せる新たな姿に期待が膨らむライブとなった。
◇キー プロフィール
1991年9月23日生まれ。本名キム・キボム。15歳のときに受けたSMエンターテインメントの全国ツアーオーディションに参加し、8000人の中からたった一人合格。大邱(テグ)市出身で地元の高校に通っていたため、毎週末200km以上離れたソウルの事務所まで通いながら練習生時代を過ごした。歌やダンスはもちろん、演技やMCでも才能を発揮しており、さらにはファッションアイテムのリメイクも得意。SHINeeのコンサートでは実際に衣装のデザインを手掛けるなど、音楽の分野にとどまらない多彩な魅力で人気を集めている。
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