「正直に言って、私がメンバーの立場でも精算金52億ウォン(約5億2000万円)が手に入るのであれば、正しいか間違っているかに関わらず、自分をスターにしてくれたプロデューサーの言葉に耳を傾けると思う。人の心というのはそういうもの」(音楽プロデューサーA)
「実際に52億ウォンもの精算が可能だったのは、HYBEの投資、人的資源、プラットフォームを活用したからできたこと。ミン・ヒジン代表が自ら従業員を雇い、路上で練習生をスカウトし、宿舎で食事をさせてトレーニングをしたと考えてみて。52億ウォンもの精算ができただろうか? 会社が回るためには新しい練習生を採用し、トレーニングをしなければならないが、そのような費用を差し引くことなく、すべてHYBEの支援で成し遂げられた成果だ。親たちや子供たちはその裏事情も知らず、知ろうともしないようだ」(音楽プロデューサーB)
ガールズグループNewJeans(ニュージーンズ)のメンバーたちが所属事務所ADORの親会社であるHYBEに対して、緊急生配信を通じて「9月25日までにADORを元に戻せ」と最後通告した。
その翌日の9月12日、韓国の音楽業界ではNewJeansとミン・ヒジン前代表、そしてHYBEが大きな話題となった。音楽関係者が2人以上集まる場所では、この話題が必ず取り上げられた。
大多数の音楽関係者は「NewJeansをトップグループに押し上げたミン・ヒジン前代表の優れたプロデュース能力は認めるが、メンバーたちが自ら前に出て、ミン前代表を返せと要求するのは一線を越えている」とし、「NewJeansの『いじめ問題』という話題を通じてファンの感情に訴え、親会社との信頼関係を崩そうとしており、訴訟に発展する可能性が高い」と口を揃えた。
公開的にHYBEを非難した緊急生配信でNewJeansのハニは「社内で他グループのメンバーに挨拶をしたところ、そのグループのマネージャーがそのメンバーに『無視しろ』と言っていた。私に聞こえるように堂々と言った」と語った。
続けて「キム・ジュヨンADOR新代表にこのことを話したが、すでに古い話で証拠もないので、どうしようもないと言われた。まるで私が嘘つきになったような気分だった」と吐露した。
この発言の内容が事実かどうかを確認することはできないが、感情的な問題をファンに知らせ、「悪い継母」というフレームを作ろうとする意図がうかがえる。
とある音楽関係者は「ADORのキム・ジュヨン新代表は人事を担当していた経営の専門家」と述べた。
そして「プロデューサーと経営を兼任していたミン・ヒジン前代表が『母親』というフレームを掲げたからといって、キム・ジュヨン代表を『継母』と呼ぶこと自体が間違っている。さらに会社の代表が自らを『母親』と称するのは、典型的なメンバーへのガスライティング(誤った情報で心理的に他者を操り正常な判断力を奪う行為)だ。ほかの音楽企画会社では、職員がメンバーとそのような親密な関係を築くことは、解雇の理由になり得る。(HYBEの)パン・シヒョク議長も『BTSの父』と呼ばれることを拒否したはず」と指摘した。
音楽業界の関係者たちは「NewJeans神話」で、メンバー1人あたり52億ウォンの精算金を受け取り、メンバーとその親、ミン・ヒジン前代表との信頼関係が強固になったことが、今回の事態を引き起こした要因のひとつと口を揃えた。
このような莫大な金額の精算を可能にしたHYBEの支援が裏目に出たとも指摘した。
また別の音楽関係者は「ミン・ヒジン前代表の能力は認める。彼女の能力を最もよく活用したのは、SMエンターテインメントの創立者、イ・スマン元代表だ」と述べ、「しかしミン・ヒジン前代表がSMに在籍していたときは、イ・スマンが80%以上の決定権を持っていた。彼女の給料も一般社員と大きく変わらなかった」と明かした。
そのため破格の給料、成果報酬、代表職などの人的・物的資源を支援したHYBEのパン・シヒョク議長が、最近流行している「尽くす男」に転落したというのが、この関係者の見解だ。
さらに、このような事態を予見できず、ミン・ヒジン前代表が去った後について不安を感じているNewJeansメンバーを温かく包み込めなかった社内の職員たち、そしてこの事態を抑えられなかったHYBE側にも問題があると指摘された。
NewJeansのメンバーたちがHYBE側に対して宣戦布告をしたことにより、今後「NewJeans神話」が崩れる可能性も提起されている。
彼女たちがHYBE側に14日後の「9月25日まで」と明言したのは、専属契約を解除する前に不満のある事項を伝え、それを修正する期間が通常2週間であるためとの解釈もある。音楽関係者の間では、10代後半のNewJeansメンバーたちが法的知識に基づいたこのような発言をしたのは、訴訟に向けた手順であり、その背後にはミン・ヒジン前代表の指導があるだろうという見方が支配的だ。
しかしメンバーたちは緊急生配信で、自発的に計画したものだと強調していた。
NewJeansのメンバーが会社側との専属契約に関する紛争に突入した場合、最低でも3000億ウォン(約300億円)以上の違約金が発生する可能性がある。公正取引委員会の標準専属契約書では、契約解除の時点を基準として直前2年間の月平均売り上げに、契約残存期間の月数を掛けて違約金を算定する。
ADORの2023年の売上は1103億ウォン(約110億円)であるため、メンバーが訴訟を提起した場合、違約金は3000億ウォン以上発生することになる。
それでもグローバル市場でのK-POPの人気と、ミン・ヒジン前代表の能力を考慮すれば、海外でこのような違約金を考慮して投資を受けることも可能という意見もある。
ある関係者は「ミン・ヒジン前代表はすでに今年4月の記者会見で、アーティストよりも有名なプロデューサーとしての地位を確立した」と述べ、「メンバーがHYBEとの専属契約を解除し、ミン・ヒジン前代表と共に韓国市場ではなく海外市場で活動する可能性もある」と予測した。
また別の関係者は「いずれにしても、最終的に大衆が愛した『NewJeans神話』は崩れることになるだろう」と断言した。
◇NewJeans プロフィール
2022年7月22日にミュージックビデオを公開しながら電撃デビューした5人組ガールズグループ。ミン・ヒジン代表が率いるHYBE傘下レーベルADOR所属。2004年生まれのミンジとハニ、2005年生まれのダニエル、2006年生まれのヘリン、2008年生まれのヘインで構成された。デビューアルバム『New Jeans』の発売と同時にライジングアーティストとして急浮上。デビュー曲『Attention』と『Hype Boy』が韓国Melonの「TOP 100」チャートで1、2位を記録した初のガールズグループとなった。またK-POPグループで初めてデビュー曲(『Attention』)がSpotifyの「ウィークリートップソング・アメリカ」にチャートインした。
■削除されたNewJeansの“緊急告発配信”、HYBEへの不信は最高潮に
前へ
次へ