韓国紙『東亜日報』で連載された同名のノンフィクションを原作に、1979年の韓国で“第2の権力者”と呼ばれていた韓国中央情報部(KCIA)の幹部たちや韓国陸軍上層部、さらには当時の政治家たちの思惑などを描きながら、大統領を暗殺するまでの40日間を描いているのだ。
ここで気づいた方もいるだろう。
つまり『南山の部長たち』は、韓国近・現代史において最も重大な事件といえる「朴正煕(パク・チョンヒ)暗殺事件」(通称10.26事件)をモチーフにしている。
朴正煕元大統領といえば、軍事クーデターを起こして18年にわたる独裁政治を行った人物だ。日本軍将校時代に「高木正雄」と名乗っていたこともあり、韓国・民族問題研究所が出版する「親日人名辞典」にも名前が載った。
また、2016年の「崔順実(チェ・スンシル)ゲート」によって罷免された朴槿恵(パク・クネ)元大統領の亡き父ということで、父娘ともに支持する右翼が今も存在する。
そんな朴正煕暗殺事件を映画にするのは容易ではなかったと思われるが、ウ・ミンホ監督がこの映画を企画したのが朴槿恵政権当時だったというのは興味深い。
そして韓国メディアからそのことについて聞かれたウ・ミンホ監督が、「プレッシャーは感じなかった。ただ、政治的に偏らずに人間の心理描写に集中しようとした」と答えているのは、さすがというべきだろう。
いずれにしても、韓国の近現代史・政治史上最もドラマチックでミステリアスな事件を描く『南山の部長たち』は、早くも『インサイダーズ/内部者たち』に続く大ヒットの予感だ。
日本での公開にも期待が高まる。
(文=慎 武宏)