パク・ソジュンが強烈なナルシストぶりを発揮している『キム秘書はいったい、なぜ?』(以下、『キム秘書』)。このドラマには数々の名場面があるが、日本放送版の第3話で描かれた会食シーンは、見ていても本当に腹をかかえるほどに面白かった。
まずは、ストーリーを紹介しよう。
大企業の副会長として完璧な仕事ぶりをこなすヨンジュン……強烈なナルシストで、自己愛が半端ではない。そんな人物をパク・ソジュンが魅力的に演じている。
しかし、副会長のヨンジュンは、9年間一緒に仕事をしてきたキム秘書(女優パク・ミニョン)に辞めると言われて狼狽してしまう。その挙句に、混乱の中でプロポーズまでするのだが、キム秘書に「副会長は自分の好みではない」とあっさりと断られてしまう。
悩みに悩んだヨンジュン。急に結婚を申し込んだことがいけないわけで、まずは恋愛から始めなければいけないと悟り、プライベートでもキム秘書に近づこうとする。
ちょうど秘書の仲間たちが焼肉を食べながら会食をしていた。
酒が進みすぎて、だんだんと会食の場が騒然となっていくのだが、そこに急に現れたのがヨンジュンだった。
普段は高級店しか行かないので、大衆的な焼肉店に行ったことがない。あまりに煙くさいので顔をしかめていると、店のアジュンマ(おばさん)にきついことを言われてしまう。それでも、キム秘書とプライベートでも親しくなりたいと思うがゆえに、ヨンジュンは我慢をして会食の場に馴染もうとする。
秘書たちにしてみれば、楽しく宴会をしていたのに急に気難しいヨンジュンが現れたので、その場の雰囲気が一気に固まってしまう。さらに、ヨンジュンは仕事の話しかしない。すると、キム秘書から「こういう場では仕事の話はタブーです」と言われる始末だ。
とにかく、ヨンジュンは戸惑うばかりで、焼肉店なのに高級ウィスキーを注文しようとしたりして、とんちんかんな対応をするばかり。このあたりのヨンジュンの異星人ぶりが本当に面白い。
もともと、ヨンジュンは一般の会社員の遊び方をまるで知らない。世間にあまりにも疎すぎるのだ。
さらには、秘書の仲間の中に酒乱の女性がいて、その女性が暴れるにいたって場はドタバタになる。その中でも場違いに毅然としているヨンジュンがあまりにもおかしい。
ラブコメというのは、ストーリーの展開の中で笑いを誘う場面がよく出てくるが、ヨンジュンが珍客として加わった会食シーンは、『キム秘書』の中でも特別な名場面となっていた。
特に、騒動の中で改めてヨンジュンとキム秘書のキャラクターが際立っていたし、その後の展開をハラハラと予測させていたのが、焼肉店での会食シーンであった。
(文=康 熙奉/カン・ヒボン)
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