21世紀のビートルズと呼ばれ、世界中で圧倒的な人気を誇るBTS(防弾少年団)。
もはやK-POPというくくりでは語りきれない存在の彼らが、ファンのみならず多くの学者たちをも魅了している。BTSが生み出す経済効果や社会現象はもちろん、音楽学、文学、美術学、哲学、ジェンダー学、心理学、教育学、経営学、歴史学、人類学など、ほぼすべての学問分野からBTSに関する研究が行われているのだ。
このような動きについて、韓国紙『ハンギョレ』は2020年12月26日のカバーストーリーで「BTS学(BTSology)」と命名している。
同紙はフランスの経済学者ジャック・アタリ(Jacques Attali)が主張する「音楽消費の変化は未来の消費文化の変化を予測するための指標」を根拠とし、世界中で起きている“BTS現象”が「ただ音楽産業分野にのみ限られず、現在の世界がどのような未来に変化していくかを把握させる地震計の役割をする」と伝えた。これこそBTSに関する学術研究が活発に行われている理由だという。
韓国の学術研究データベースサイト「RISS」に登録されたBTS関連の国内論文は2019年に36件と、前年に比べて50%増えた。2020年には72件、2021年には52件となっている。
論文の多くは「BTSイベントの経済的効果」「BTSの成功要因分析と活用法案」といった、BTSの成功や経済的価値にフォーカスしたものだが、中には目を引く独特なタイトルも少なくない。
例えば、「文化的リテラシーとしてのK-POPスターの観相学的考察~BTSを中心に」(2020、シン・ジョンヘ著)、「BTSのダンス受容性に関する文化相互主義的接近」(2020、チョ・ヨンイン著)、「BTSとアジア男性性~脱帝国化とトランスメディアを中心に~」(2021、キム・スヨン著)、「ジュディス・バトラーの遂行性理論から見たBTSのミュージックビデオのファッションスタイルのジェンダーイメージ分析」(2020、チョン・ヨニ著)といった具合だ。
これらの論文ではBTSのダンスを用いて純粋芸術の大衆性の方向を示したり、BTSが見せるハイブリッドな男性性の分析を通じて人種やジェンダー、メディアを超えたアジアの男性性の概念の必要性を唱えたりしている。BTSの影響力を通じた社会の変化を促しているわけだ。
また、書籍化された研究の中に『BTSを哲学する』(2017、チャ・ミンジュ著)、『BTS芸術革命~BTSとドゥルーズが出会う』(2018、イ・ジヨン著)、『BTSと哲学する』(2021、キム・グァンシク著)など、BTSと哲学を結びつけたものが多いのは興味深い。
これはBTSが音楽活動を通じて築き上げた独特な世界観や世界の若者に向けて発信するメッセージ、そしてBTSとARMY(BTSのファンネーム)が生み出した新たな文化を、学者たちも高く評価しているという証拠ではないだろうか。
修士・博士の学位論文や書籍以外にも、BTSの研究はさまざまな形で行われている。いくつかの大学ではBTSに関する授業が開設されているし、2020年には英国・ロンドンにあるキングストン大学で「BTS:A Global Interdisciplinary Conference」と題したBTS関連の大規模国際カンファレンスが初めて開催された。
同カンファレンスには世界30カ国から集まった140人以上の“熱烈なARMYで学者”たちが、BTSの音楽と映像コンテンツをあらゆる学問の視点から分析したのはもちろん、ファン文化、マーケティング、外交、ジェンダーなどの多方面からBTS現象を解説した。カンファレンス会場は堅苦しい雰囲気ではなく、オフ会を沸騰させるほど盛り上がったという。
BTSは今、まだ誰も踏んだことのない道を切り開いている。はたしてその先にはどのような世界が待っているのか。BTSとARMYが世界各地で起こす変化の波を、楽しみに見守りたい。
■【写真】BTSの“ARMY愛”に涙…!メンバーらが涙ぐみながら語った内容とは
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