9月24日に日本公開を控えている、新時代の逃走“サイレント”スリラー映画『殺人鬼から逃げる夜』。
本作は、これがデビュー作となる韓国映画界の新鋭クォン・オスンが監督・脚本を努め、革命的に新しい恐怖の追走劇と、命綱なしで物語に放り込まれるようなノンストップで畳みかける衝撃で、観る者を緊張と興奮の渦中に引きずり込む。
そして今回、解禁となった特別映像は、かの有名なクラシック曲『ショパン/ノクターン第2番』にのせて描かれる、耳の聴こえない目撃者・ギョンミ(演者チン・ギジュ)とサイコパスの逃走劇だ。
ピアノの美しい旋律が流れる中で、狂気を開放した殺人鬼:ドシク(演者ウィ・ハジュン)が、どこまでも、どこまでも、執拗にギョンミを追いかけ続ける。坂道で、車道で、街中で、そしてついには家の中にまで迫りくる殺人鬼。耳が聴こえないギョンミは、真後ろにいる殺人鬼に気づく事さえできない。
名曲の後ろで響き渡る悲痛な悲鳴、命がけで走り続ける必死な息遣い、獲物を追い詰めるのを楽しむかのような殺人鬼の歓声、そして滴り落ちる誰かの血…。
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衝撃的で、逼迫したシーンが畳みかけるように加速していく映像にあてられた、『ショパン/ノクターン第2番』のゆったりとしたワルツ調のメロディは、観る者に違和感を植え付け、“恐怖”を一層浮き彫りにする。
さらに映像には、笑顔で戯れるギョンミと母の姿も意味深に映し出されており、否応なく母娘の運命の行方に興味を惹かれ、本編への期待が高めている。
映像内では、スリルを高めるために「聞こえない」を視覚化したクォン・オスン監督の見事な演出も見て取れる。
音楽以外の音がほぼ遮断された状況の中、家に設置された音の警告灯が光ることで違和感を察知するギョンミの姿や、車両に付けた騒音測定器が振れた直後、殺人鬼ドシクが車の後部座席から現れる様子が描かれており、まるで、聞こえないギョンミの世界を擬似体験しているかのようにも感じられる。
劇中にも散りばめられたこの演出手法は、ギョンミの恐怖を観客が共有できるようにと工夫されたものだという。「視覚的に危険がどんどん迫っていることを表現し、ギョンミが感じる恐怖や緊張をそのまま観客に伝え、共有しようと思った。ドシクが近づいてくる音は聞こえない。家にあるすべての警報装置の点滅は、危機のシグナルであると同時に、ギョンミが身を守るための装置として活用しようと思った」とクォン・オスン監督は説明している。
聞こえない無音の世界を描きつつ、危機的状況を視覚化して共有することで恐怖を倍増させ、一夜の逃走劇をかつてない緊張感とともに描ききった本作。ノンストップで畳み掛ける特別な衝撃と恐怖を、劇場の大スクリーンで確認だ。
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