『パラサイト』との“明確な相違点”とは?映画『ミナリ』がオスカーで期待されている理由

2021年03月16日 映画

韓国映画の新たな歴史を紡いだ『パラサイト 半地下の家族』(以下、パラサイト)に続くかのように、『ミナリ』がそのバトンを受け継いだと連日絶賛の嵐を巻き起こしている。しばしば比較されがちな2作品は、似ているようで異なる点が多い。

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2019年5月に公開されたポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』は、強烈なタイトルだけでなく独創的かつ鮮烈なストーリーで、世界中に衝撃を与えた。貧富の差や階級の対比を、ポン・ジュノ監督ならではの繊細さで上質なブラックコメディに落とし込むことに成功している。

『パラサイト』は韓国で観客動員数100万人を突破し、海外の有名授賞式でも作品が持つ真価を認められ、一躍フィーバーを巻き起こした。

第72回カンヌ国際映画祭では最高賞のパルム・ドールを獲得し、第92回アカデミー賞授賞式(オスカー)では作品賞、監督賞、脚本賞、国際映画賞の4冠に輝いた。

『パラサイト 半地下の家族』日本版ポスター

一方、『パラサイト』のバトンを受け継ぐと目されている『ミナリ』の将来はより期待されている。

2作品の違いとは

『ミナリ』も3月15日の第93回アカデミー賞授賞式候補発表で計6部門にノミネートされ、その先の受賞に注目が集まっている。『パラサイト』も当時6部門にノミネートされ4冠を受賞したため、同等もしくはそれ以上の結果が期待されている。

一見すると同じレールを走るかに見える2作品には、明確に異なる点が存在しており、それが受賞結果に影響をもたらすのではないかと目されている。

『パラサイト』の場合、受賞には至らなかったものの、編集賞、美術賞などにもノミネートされており、“作品自体”に対する関心が高かったと言える。

しかし『ミナリ』は、今回のアカデミー授賞式のノミネートからも分かるように、作品だけではなく“出演俳優への関心”が高いという点が異なっている。

これはすでに多くの授賞式で主演男優賞(スティーブン・ユァン)、助演女優賞(ユン・ヨジョン)、子役賞(アラン・キム)といった結果で証明されており、アカデミー賞では初のノミネートに続き、ユン・ヨジョンとスティーブン・ユァンがトロフィーを掲げるのではないかと注目を集めている。

(写真=PANCINEMA)

また、『パラサイト』は韓国で制作、配給が行われ、スタッフ、出演者ともに韓国人だっただけに、海外での限界は避けられなかった。

これに対して『ミナリ』は、製作および配給会社すべてがアメリカだ。ブラッド・ピットが設立した「プランB」の資本が投入され、『ウォーキング・デッド』シリーズで有名な韓国系アメリカ人スティーブン・ユァンが、出演だけでなく製作者としても参加している。

このため『ミナリ』は、韓国での公開開始前よりも先に海外で可能性が認められたため、韓国でも口コミが広まったとされている。

さらに、『パラサイト』と『ミナリ』はどちらも韓国家族の話が綴られているが、『ミナリ』はブラックコメディの『パラサイト』とは相反するウェットなホームドラマ作品だ。 

映画『ミナリ』韓国版ポスター

大きすぎる先人の功績

主演女優のハン・イェリも、「“第2のパラサイト”とも称されるため、『パラサイト』を期待されるのではないかと心配だ」と、プレッシャーを吐露していたこともある。しかし、ポン・ジュノ監督は「『ミナリ』は普遍的で美しい」とし、「第2の『パラサイト』」以上との絶賛を伝えた。

『パラサイト』に続き『ミナリ』が、1度でも難しいといわれるオスカーに、韓国の家族がテーマとされている作品として2年連続でノミネートすることとなった。『ミナリ』は先人が紡いだ歴史を更新できるのかに世界中の関心が寄せられている。

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