実は『トンイ』も…時代劇『100日の郎君様』が描くフィクションと史実

2020年08月02日 テレビ #韓流時代劇

NHKの総合テレビで毎週日曜日の夜に放送されている韓国ドラマ『100日の郎君様』。

K-POP人気グループEXOのメンバーで、俳優としてはド・ギョンスの名で活動しているD.O.(ディオ)が初めて挑む時代劇ドラマで、韓国放映時(2018年9~10月)は平均視聴率9%台をマークした。

ド・ギョンス演じる主人公の世子イ・ユルと、女優ナム・ジヒョン演じるホンシムの可笑しくも微笑ましい夫婦劇と、宮中内でうごめく権力争いと陰謀が絡み合いながら進んでいく物語を毎週楽しみにしている視聴者たちも多いことだろう。

史実を参考にしつつ脚色もある『トンイ』

ただ『100日の郎君様』は、フィクションだ。舞台を朝鮮王朝にしているが、イ・ユルという世子(セジャ=世継ぎのこと)は架空の人物であるし、世子が庶民と結婚したという事実もない。

(写真提供=tvN)『100日の郎君様』

日本で今も根強い人気を誇るドラマ『トンイ』のモデルである淑嬪崔氏(スクピン・チェシ)のように、貧しい身分の賤民(チョンミン)出身でありながら、朝鮮王朝第19代王・粛宗(スクチョン)の側室となった例はあるが、それも稀な話だ。

むしろ歴史書『朝鮮王朝実録』に記されている淑嬪崔氏は、明るく聡明な『トンイ』とは対照的な裏の顔を持つ。

【人気】実はトンイの「裏の顔」はどれほど恐ろしかったのか?

そもそも『トンイ』という名前自体が演出した“韓国時代劇の巨匠”イ・ビョンフン監督が名付け親で、彼自身も昨年に取材したとき、「いかに想像力を働かせるかで時代劇は面白くなる」と言ったほどである。

そういう意味では『100日の郎君様』も世子と庶民の結婚というユニークな設定が物語の軸となっているが、だからといって史実を完全に無視しているというわけでもない。

史実の要素もたっぷりの『100日の郎君様』

例えば物語のきっかけとなる、朝廷が独身の庶民たちを結婚させる命令だ。朝鮮王朝時代は実際にも朝廷が庶民たちの結婚に口出しすることがあり、時の王たちの動静を記した『朝鮮王朝実録』には歴代王たちのこんな言葉が記されていたという。

「年が多い処女として貧しく、嫁ぐことができない者たちが多いと、和気が失われ災難を呼ぶ」(朝鮮王朝・第11代王の中宗=チュンジョン)

「人倫の道理において婚姻ほど重要なものはなく、帝王の政事は怨女がないようにすることだ」(朝鮮王朝・第9代王の成宗=ソンジョン)

怨女(ウォンニョ)とは結婚適齢期を過ぎた女性のことで、『100日の郎君様』でも村の怨女であったホンシムが記憶喪失でウォンドクとなったイ・ユルと結婚することで物語が動き出した。

また、劇中でイ・ユルは世子でありながら命を狙われているが、実際にも身の危険にさらされた世子は多かった。第16代王・仁祖(インジョ)の長男だった昭顕世子(ソヒョンセジャ)、第21代王・英祖(ヨンジョ)の息子だった思悼世子(サドセジャ)などは、世子でありながら王に就く前に命を落としている。

世子は時の国王が亡くなれば、次の新しい国王になる立場なのだが、それゆえ権力闘争に翻弄され巻き込まれる立場でもあったのだ。『100日の郎君様』も、そうした朝鮮王朝時代の“暗黒面”をしっかり参考にしている。

『100日の郎君様』では謀反で担がれて王位に就いたことに後ろめたさを抱く国王と、その国王を脅かすような強大な権力を持つ高官キム・チャオンも物語の重要人物であるが、実際にもこの2人に近い国王や悪徳高官はいたとされている。

つまり、『100日の郎君様』は史実の要素もしっかり押さえた時代劇なのだ。

“韓国時代劇のカリスマ”の言葉

思い出すのは俳優チェ・スジョンの言葉だ。『太祖王健』(2000年)、『海神-HESHIN-』(2004年)、『大祚栄』(2006年)、『大王の夢』(2012年)といった大作時代劇に多く主演し、“韓国時代劇のカリスマ”と呼ばれるスター俳優を取材したとき、こんなことを言っていた。

「時代劇とはすなわち、フィクションとノンフィクションの融合だと思うんですよ。歴史の事実に基づきながら、新しい解釈やエピソード、さらには現代風にアレンジされた史実が加えられていくことで、ストーリー展開がより面白くなり、視聴者たちをひきつける。それが時代劇の最大の魅力だと思います」

登場人物のすべてが架空で時代設定も曖昧な『100日の郎君様』は多分にフィクションの要素が強いが、そのすべてが空想の産物ではない。要所要所で韓国の歴史や文化、風習も盛り込まれている。

そういったことも踏まえて視聴すれば、ドラマはもっと面白くなるかもしれない。ジャンルとしてはラブコメに分類されるかもしれないが、『100日の郎君様』は時代劇としても十分に楽しめる作品だ。

(文=慎 武宏)

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