入れ替わりをテーマにした映像作品は、これまで数え切れないほど作られてきた。
しかし、3月7日より日本公開の韓国映画『デビルズ・ゲーム』は、ただの“入れ替わりモノ”ではない。刑事と殺人鬼、絶対に相容れない二人の魂が入れ替わることで、極限のスリルを生み出す本格アクションスリラーに仕上がっている。
“入れ替わり”による究極のスリル
物語の主人公は、サイコパスの連続殺人鬼ジニョクと、人望の厚い熱血刑事ジェファン。事件を追う中で、あることをきっかけに2人の魂が入れ替わってしまう。正義感あふれる刑事の意識は殺人鬼の身体に閉じ込められ、殺人鬼は刑事の身体を手に入れたことで、社会的信用と警察の権力という“武器”を得ることとなる。この絶望的な状況から抜け出すため、ジェファンは必死に自分の無実を証明しようとするが――。
入れ替わり映画でまず思い浮かぶのは、日本では『君の名は。』(16)が代表的だろう。ほかにも、ニコラス・ケイジとジョン・トラボルタが主演した『フェイス/オフ』(97)、女子高生と殺人鬼が入れ替わる『ザ・スイッチ』(20)が有名どころだ。『デビルズ・ゲーム』はそれらの要素を持ちつつも、単なるアイデア勝負の作品ではなく、「入れ替わったからこそ生まれる究極の緊張感」を最大限に活かしたストーリーが展開される。
この手の作品では、俳優の演技力が作品の成功を左右する重要な要素だと言える。その点、本作の主演チャン・ドンユンとオ・デファンの演技は圧巻だった。チャン・ドンユンといえば、これまで『ノクドゥ伝~花に降る月明り~』(19)などで“正統派イケメン俳優”としてのイメージが強かった。しかし本作ではそのイメージを完全に覆し、冷酷な殺人鬼の狂気と、刑事の葛藤を見事に演じ分けている。一方、オ・デファンは長年のキャリアを生かし、熱血漢の刑事から、殺人鬼の魂が宿ったことで生まれる違和感まで繊細に表現している。2人の確かな演技力がなければ、本作のスリルはここまで引き立たなかっただろう。
また、入れ替わり映画の面白さは、性格も立場も正反対の人物が入れ替わることで生じるドラマにある。『君の名は。』では男性と女性、『ザ・スイッチ』では女子高生と殺人鬼という組み合わせが斬新だった。本作は性別こそ変わらないが、「刑事と殺人鬼」という、あまりにも対照的な2人が入れ替わることで、従来のジャンルとは異なるスリルを生み出している。
そして最も重要な点は、“入れ替わりのギミック”だろう。これまでの作品とは異なる、新たな入れ替わりの仕組みが登場する。観客の予想を裏切る仕掛けに、きっと驚かされるはずだ。
殺人鬼の身体に閉じ込められた刑事が、必死に“自分ではない自分”を証明しようとする絶望感。一方で、刑事の身体を手に入れた殺人鬼が、警察の立場を利用してゲームのように犯罪を楽しむ異常性。この構図が、観客に「もし自分がこの立場になったら、どうするだろう?」という極限の選択を突きつける。
さらに、本作は韓国でR-18、日本ではR-15指定となったバイオレンスアクション『オオカミ狩り』の制作会社が手掛けたことから、衝撃的なゴア描写、バイオレンス描写も魅力の一つだ。決して万人向けとは言えないが、緊迫感のある作品を求める映画ファンにはたまらない一作となるだろう。
『デビルズ・ゲーム』は、単なる入れ替わりモノではなく、極限状況の中で繰り広げられる心理戦とアクションが見どころの本格派スリラーだ。韓国映画の持ち味である緻密なストーリー、容赦ない演出、極限の心理戦が凝縮された衝撃作を、ぜひスクリーンで体感してほしい。
(文=スポーツソウル日本版編集X)
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