歌手フィソンの“薬物騒動”に韓国芸能界が超緊張しているワケ…「2013年の悪夢」再びか

2020年04月07日 話題

常習的に麻薬プロポフォールを使用したという疑惑を受けていた歌手フィソン(本名チェ・フィソン)が、相次いで薬物を使用して倒れた状態で発見された。

事件現場からは“第2のプロポフォール”と呼ばれるエトミデートが発見されており、一部では2013年に韓国芸能界を震撼させた“プロポフォール騒動”が再現されるのではないかとの懸念が出ている。

【画像】フィソンの薬物取引の瞬間が公開…発見者の証言も

フィソンは去る3月31日、ソウル松坡(ソンパ)区にある建物のトイレで倒れたまま発見された。当時、現場ではビニール袋や注射器、液体の入った瓶などが発見された。警察はフィソンに薬物検査を行い、陰性反応が出たことを確認して帰宅させたが、その2日後である4月2日、フィソンは再び広津(クァンジン)区のトイレで薬物を使用し、倒れた状態で発見された。

韓国芸能界が緊張するワケ

一連の事件は韓国社会に衝撃を与えた。

現場で発見された薬瓶には、「エトミデート」というラベルが付いていたという。フィソンが薬物を直接取引する姿が映った監視カメラの映像も公開され、波紋が広がった。

警察は、フィソンが事件直前に銀行ATMに4度も出入りしたことを不審に思い、エトミデートの入手経緯を調査中だ。警察はフィソンに薬物を渡した男性Aを薬事法違反の疑いで4月3日に緊急逮捕しており、拘束の必要性があると判断して薬事法違反容疑などで拘束令状を申請した状態だ。

(画像=MBN)監視カメラに映ったフィソンの映像

捜査が進展した場合、今回の事件は単にフィソンのとどまらず、誰にも知られずエトミデートを購入してきた韓国芸能界、財界などにまで波紋が広がるとの疑惑の声が上がっている。

そもそもエトミデートは、プロポフォールと似た効果を出す全身麻酔薬の一種だ。2011年に麻薬指定されたプロポフォールとは異なり、専門医薬品として管理されている。2016年の朴槿恵(パク・クネ)政権時代、大統領府の購入医薬品リストにバイアグラなどとともに含まれ、論議を起こしたことで知られる。

問題は、そのエトミデートが“第2のプロポフォール”、“第2の牛乳注射”などと呼ばれ、芸能界で乱用が深刻といわれており、フィソンの事件はその狼煙ではないかという点だ。

とある医療関係者は、「エトミデートはイミダゾール誘導体で手術、内視鏡などに使用する専門医薬品である。プロポフォールなど他の麻酔薬よりも、呼吸器や心血管への刺激が少なく、心臓の状態や呼吸作用が不安定な患者に多く使用する。しかしながら一度に1瓶以上は使わないので、一般の人が専門医薬品を個人的に5瓶以上所有するのは不可能だ」と説明した。

プロポフォールの代替として需要UP

2011年にプロポフォールが麻薬指定された後、エトミデートの需要が高まりながら、管理・監督強化の声は着実に提起されてきた。

歌手フィソン

2019年に発表された食品医薬品安全処の資料によると、エトミデートの輸入量は2018年に52万3920個が輸入され、2010年から2018年までで8.3倍も増加した。不法流通、不法販売の問題も深刻であることがわかった。食品医薬品安全処は2019年7月、医療機関2カ所と問屋3カ所で計1万5700個のエトミデートを横領した事実を確認した。

最近、エトミデートを調達し、一般の人々に流通させた疑いで裁判を受けた製薬会社の支店長が懲役刑の執行猶予宣告を受けている。

医療界では購入が難しくなったプロポフォールに代わり、不法に流通されているとしてエトミデート乱用の深刻性を指摘した。エトミデートは麻薬指定されたプロポフォールとは異なり、専門医薬品であり、取り締まりの死角地帯に置かれているということだ。

ソウルのある大学病院の関係者は、「睡眠麻酔としてプロポフォール、ミダゾラム、エトミデートを最も多く使用している。そのなかでプロポフォールとミダゾラムは麻薬類管理法によって厳しく管理する必要がある向精神性医薬品(習慣性または中毒性があり、人間の精神機能に影響を与える薬剤)であるため、病院内でも管理が難しい」とし、「しかしエトミデートはプロポフォールと同様の効果があるにもかかわらず、向精神性医薬品に指定されておらず、管理の死角地帯にいる」と述べた。

思い出される“プロポフォール騒動”

韓国芸能界がエトミデートに注目する理由も、それと同じだ。エトミデートが麻薬類と指定されていないため、密かに購入して使用している芸能人がかなり多いと推定されている。

過去に韓国芸能界を襲った“プロポフォール騒動”と同様の事態に広がる可能性があり、芸能界にも緊張感が漂っている。

2013年、韓国芸能界はプロポフォールを不法常習投与した芸能人が次々と摘発された。当時イ・スンヨン、パク・シヨン、チャン・ミイネ、エイミーらが美容施術や治療と称してプロポフォールを常習的に、不法に使用した容疑で裁判に引き渡された。

チャン・ミイネ

最近も芸能事務所代表、俳優など10人余りが関連疑惑で捜査対象に浮上し、韓国芸能界にプロポフォール騒動が再び広がる予兆があった。

そんななかプロポフォール使用疑惑を受けていたフィソンが、エトミデートを使用して2度も倒れた状態で発見されたため、その懸念がますます高まっている。

専門家は、エトミデートの中毒性についての研究結果はまだないが、過剰な量を使用した場合、死に至ることもあると警告する。事実、2019年1月、ソウル江南(カンナム)のモーテルで20代の女性がエトミデートを使用して死亡している。

なお2019年12月に麻薬類を購入した状況が捕捉され、捜査を受けているフィソンは現在、うつ病やパニック障害などの症状で精神科の治療を受けていると伝えられた。

エトミデートは専門医薬品として指定されているため、購入者が処罰される規定はない。フィソンも該当しないわけだが、医師の処方なしに専門医薬品をオンラインで購入して投薬したこと自体は明らかに違法であるため、処罰は避けられないものと見られる。

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