武藤嘉紀(27)が所属するニューカッスルを退団した元韓国代表キ・ソンヨン(31)は、“違約金”の存在がKリーグ復帰のカギとなっている。
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キ・ソンヨンは2006年にFCソウルでプロデビューし、2009年にセルティックへと移籍した。その際、選手とクラブ間でとある条項が結ばれたという。
その詳細について関係者は、「FCソウルは(セルティック)移籍の過程で発生した移籍金の一部をキ・ソンヨンに支給した。そして、今後KリーグでFCソウル以外のチームに移籍する場合、違約金を支払わなければならないという条項を結んだ」と説明した。
FCソウル以外のチームに移籍する際に発生する違約金は、200万ユーロ(約2億6000万円)であるとされている。
現在、キ・ソンヨンの韓国復帰を巡り全北現代モータースが交渉を進めているが、その違約金が足かせとなっている。
前出の関係者の説明が事実であれば、キ・ソンヨンの全北現代行きは厳しくなるだろう。すでに“年俸20億ウォン(日本円=2億円)+α”という破格の契約条件を提示している状況で、事実上の移籍金まで負担するのは容易ではない。
加えて、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)のグループステージ及び決勝トーナメントの選手登録は2月5日ですでに締め切られた。
そのため全北現代は仮にキ・ソンヨンを獲得できたとしても、起用できる幅が制限されることになる。
この違約金の条項は、国際サッカー連盟(FIFA)の禁じる裏面契約でなければ違法ではなく、韓国サッカー協会(KFA)や韓国プロサッカー連盟の規定にも抵触しない。
サッカーファンとしても知られるソン・スホ弁護士は、「契約内容自体に問題はないようで、大きな不合理も見当たりにくい。選手が代価として移籍金の一部を受理していたのであれば、誠実に履行すべき義務といえるだろう」と述べた。
また別のミン・ジフン弁護士も「双方が同意して結んだ契約であれば、法的に引っかかることはない」と意見を述べた。
つまりFCソウルの違約金要求は、契約に基づいたまっとうな権利主張であるということになる。「道徳的な意見は分かれるかもしれないが、不法性があると見るのは難しい」というのが、弁護士共通の見解だ。
今回の件は、FCソウルが前身の安養LG時代にソ・ジョンウォンとの間で発生した事例と類似している。
ソ・ジョンウォンは1997年にフランスのストラスブールへ移籍した際、クラブから自身の移籍金100万ドルの半分を受け取った。その代わり、違約金は発生しなかったが、Kリーグに復帰する場合のチームは安養LGでなければならないという契約を結んだ。
しかし、ソ・ジョンウォンは1999年にKリーグへ復帰した際、安養LGではなく水原三星ブルーウィングスに加入した。これに対して安養LGは移籍金返還訴訟を行い、最高裁はソ・ジョンウォンに移籍金の一部である3億ウォン(約3000万円)の支払いを命じた。
上記のケースと異なり、キ・ソンヨンはまず初めにFCソウルと交渉を行った後、全北現代からより良い契約条件を提案されたとみられる。
FCソウルは、すでに1月にキ・ソンヨンと交渉を行ったものの決裂したと報じられた。この際、FCソウルがキ・ソンヨンを納得させられるほどの条件を提示したかが重要なポイントとなる。
キ・ソンヨンはニューカッスルで約30億ウォン(約3億円)の年俸を受け取っていた。また、すでに代表から引退しているものの、スター性でいえば現在もトップクラスの選手だ。
仮にFCソウルが彼の価値に見合わないレベルのオファーをしていたのであれば、キ・ソンヨンは違約金の条項によって他チームへの移籍を阻まれ、そのオファーを受け入れなければならないのかと頭を悩ませるだろう。
ソン弁護士は「FCソウルが提示したオファーの水準によって結論が変わってくる」と述べた。
具体的には、「FCソウルとキ・ソンヨンが結んだ“他チームに移籍する場合は違約金を支払う”という条項は効力が認められる。仮にキ・ソンヨンが復帰の義務を果たさなかったとしても、全体の事情を顧みてFCソウルに復帰しない、もしくはできないことが選手の落ち度とならない場合、違約金の支払い義務が免除される可能性もある」と見解を述べた。
ミン弁護士も「常識的なレベルの提案なら問題とはならない。だが、違約金を担保に選手が受け入れがたい条件を提案したのであれば、選手としては職業選択の自由を侵害されたと主張することも可能だろう」と類似した意見を述べた。
現在、全北現代は違約金全額ではなく一部を支払ってでも、キ・ソンヨンを獲得する意思を表している。
全北現代の事情に詳しい関係者は「いくら全北現代に資金力があるとはいえ、違約金を全額支払うことはないだろう。代わりに金額が下がるのであれば、考慮する意味もあるとみられる。それほど獲得に積極的だ」と話した。
FCソウルもキ・ソンヨンの獲得に積極的であり、交渉を続ける意思を明かしている。
とはいえ、キ・ソンヨンのKリーグ復帰が白紙となる可能性もまだ十分残されている。現在、キ・ソンヨンは中国や中東、アメリカなどさまざまなチームからオファーを受けている。
違約金の問題が解決されず、全北現代ともFCソウルとも交渉が決裂すれば、キ・ソンヨンのKリーグ復帰の可能性はなくなってしまう。
Kリーグ復帰が望まれる一方、“違約金”が障害となるキ・ソンヨン。彼の今後の去就に注目が集まる。
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