さまざまな噂が飛び交ったなかで、その球団は最も有力な新天地候補とされた。そして実際、噂は現実のものとなった。
ロサンゼルス・ドジャースが“二刀流スター”大谷翔平(29)を獲得した。世界中の野球ファンを大いに騒がせた補強だ。
もっとも、2年前までであればこれらも難しかったかもしれない。
大谷は12月10日(日本時間)、自身のインスタグラムを通じてドジャースとの契約に合意したことを発表した。
衝撃的な契約規模だ。10年契約で7億ドルだという。現地の情報筋によると、年俸の一部を後払いする条項が含まれているものとみられる。
これを考慮しても、7億ドルとなればまさに“神の領域”と言える契約規模であることは間違いない。
時計の針を戻してみよう。仮に2年前であれば、“ドジャース大谷”は難しかったかもしれない。ナ・リーグに「指名打者制度」が存在しなかったからだ。
米メジャーリーグはア・リーグとナ・リーグに分けられる。ア・リーグは1973年より指名打者制度を導入したため、投手が打席に入ることはほとんどない。
ただ、ナ・リーグでは最近までも指名打者なしで運営されてきた。投手も打席に立たなければならなかった。
この流れが、2020年シーズンで一度破られた。コロナ禍の影響でリーグが縮小運営されたため、臨時的に指名打者制度が施行されたのだ。
その後、2021年シーズンは元通り指名打者を設けず行われたが、新たな労使協約の過程でナ・リーグにも指名打者制度を導入することで合意した。
反対意見がなかったわけではないが、投手保護の次元でも必要だという共感が形成された。この2シーズンは特にこれと言った雑音もなく、ナ・リーグでも指名打者制度が運営されている。
この制度導入が“ドジャース大谷”へとつながった。「指名打者制度があるから」という理由だけではないだろうが、大谷がナ・リーグの球団も選択できるようになった背景と見ても良いだろう。
大谷は「二刀流」と言われるが、ある意味で「三刀流」だ。
投手としてマウンドで球を投げ、打者としてバッターボックスでボールを打つが、投手ではないときは外野守備に入るケースも見られるからだ。この点を考慮すれば、あえて指名打者ではなくても大谷を起用することはできる。
ただ、体力消耗や負傷防止を考慮した場合、指名打者に専念した方がはるかに良い。
実際、大谷はキャリアの半分を指名打者としてプレーしている。MLBで最も活躍した指名打者に贈られる「エドガー・マルティネス賞」も直近3年連続で受賞している。
ドジャースとしても、大谷を必ず外野手として起用しなければならないほど選手が不足しているわけでもない。ドジャースは内部FAの外野手ジェイソン・ヘイワード(34)を1年900万ドルで設定している。
過去にもドジャースは大谷を獲得しようとした。高校1年時から大谷に関心を傾け、卒業を控えて獲得に乗り出した。
ドジャースは大谷を投手として育てようと考えたが、大谷自身が二刀流を望んだことで契約には至らなかった。
そんな大谷は、すでに投打両方で最強の選手であることを証明している。
ドジャースがためらう理由はない。今や指名打者制度もあるのだからなおさら良い。そのようにして、大谷を獲得することとなった。
(構成=ピッチコミュニケーションズ)
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