野球やサッカーの韓国代表メンバーを監督が決められなくなる? 選考基準「厳格」に

2019年11月28日 スポーツ一般 #兵役

ひとつはボランティア活動の徹底管理だ。

体育要員になると専門スポーツに従事しつつ、その特技を活かしたボランティア活動も行わなければならないのだが、今後は行政機関の文化体育部が事前に指定した機関でボランティア活動しなければならず、4回以上履行実績の不備などで警告措置を受けると、告発されるという。

これは、JリーグのFC東京在籍時にロシアW杯に出場したチャン・ヒョンス(アル・ヒラル)が2018年11月に起こした不祥事とも無関係ではないだろう。

2014年仁川(インチョン)アジア大会優勝で体育要員資格を得たチャン・ヒョンスだったが、ボランティア活動書類の捏造が発覚し、最終的には韓国代表資格を永久剥奪されている。

韓国代表資格を永久剥奪されたチャン・ヒョンス

ボランティア活動を管理して水増し申告や不正を防止しようというわけだが、気になるのはもうひとつの新たな決まりだ。

「団体種目の場合、国家代表選抜規定に選抜方式、手続き、要件など選手選抜関連の核心事項を明示し、国家代表選抜の具体的基準・選定過程および関連資料を対外公開するなど、公正性と透明性を大幅に強化すること」

つまり、アジア大会およびオリンピックに出場する野球やサッカーといったチームスポーツの場合、選手選考の基準や選抜課程を公開するよう政府が要求したのだ。

前出の李洛淵首相は、文在寅(ムン・ジェイン)大統領から指名された政権の中心人物だが、その李洛淵首相が中心になった国政懸案点検調整会議でこうした注文が出されたわけだ。

この背景には昨年のジャカルタ・アジア大会での騒動が関係している。

野球競技で韓国は優勝しアジア大会3連覇を成し遂げたが、優勝メンバーの一部選手に対し、兵役免除のための請託人選があったのではないかという疑いが持たれた。

そのせいで、チームを率いていたソン・ドンヨル監督が国会の国政監査で証人として尋問されるほどの問題となり、結局、ソン・ドンヨル監督は辞任している。

もちろん、ソン・ドンヨル監督が金銭を受け取ったり、裏取引を「請託」したりして選手選考をするわけがない。兵役問題というセンシティブな問題にヒステリックなファンと、その声に反応した政治介入に疲れての辞任だったことはいうまでもないだろう。

野球韓国代表の監督を辞任したソン・ドンヨル

それだけに今回の決定は今ひとつ腑に落ちない。選手の選考基準や選抜課程を公表することは悪いことではないが、選手選抜の権限は監督やコーチにあるべきではないだろうか。

昨年のアジア大会開幕前、サッカー韓国代表でもファン・ウィジョの起用にこだわったキム・ハクボム監督に対して、“義理選出”、“縁故抜擢”疑惑が浮上したが、キム監督はそれでもファン・ウィジョを起用し続け、ファン・ウィジョもその期待に応えてチームの金メダルに貢献したことで美談となった。

結果次第で評価が変わるのがスポーツの世界だが、今回の決定がチーム編成とその結果にどう影響するか、気になるところだ。

いずれにしても今後、アジア大会やオリンピックに挑む韓国の男子チームスポーツは、明確な基準のもとで編成されることになる。

選抜の基準、過程、推薦理由にそのパフォーマンスを示す資料など、客観的な指標が公開される。仮に東京五輪前に調子を落とし試合に出場できずにいれば、有望株であっても選出されないこともあるかもしれない。

「客観性、公正性、透明性を強化するための情報公開」という今回の決定だが、どんなチーム編成になったとしても東京五輪前は何かと議論が巻き起こりそうな気もするが……。

(文=慎 武宏)

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