最高の成績を残した監督に疑問符はない。斗山(トゥサン)ベアーズのキム・テヒョン監督(52)に再びチームの未来が託された。
斗山は10月29日、キム監督と期間3年、契約金7億ウォン(約7000万円)、年俸7億ウォンの総額28億ウォン(約2億8000万円)の条件で契約延長を行った。
この契約は韓国プロ野球史上、最高の待遇だ。
今シーズン、レギュラーシーズンと韓国シリーズの優勝を総なめする圧倒的な成績を残したキム監督に、斗山が別れを告げる理由はどこにもない。
キム監督は契約通りであれば2022年まで斗山を指揮する。8年という長期政権は、斗山というチームの未来を一身に任されたといっても過言ではない。
最近の韓国プロ野球では、監督の長期政権は過去のものとなっていた。だがキム監督は直近5年間で、717試合435勝の勝率6割を叩き出している。500試合以上指揮した監督の中でも、6割という高い勝率を維持しているのはキム監督が唯一だ。
キム監督は662試合目となった今年7月のSKワイバーンズ戦で400勝目を達成し、歴代最速で400勝目を飾る偉業も成し遂げた。2015年に就任以来、これまで下位に沈んでいたチームを初年度から優勝に導き、2016年も続けて優勝するなど、高い指導力が評価された。
キム監督就任以降、斗山は韓国シリーズにも5年連続で進出しており、3度(2015年、2016年、2019年)優勝に輝いた。“斗山王朝”の礎が着実に築き上げられている。
その指導力は成績だけにとどまらない。圧倒的な成果にはそれを裏付ける強力なカリスマ性と類まれなリーダーシップがある。リスクを恐れない勝負師としての気質が、彼が優れた監督として評価される1つの理由だろう。
斗山はキム監督の就任後、毎シーズン大きな損失を味わなければならなかった。
FA(フリーエージェント)資格を得た主軸選手たちが次々と移籍したからだ。ミン・ビョンホン(現ロッテ・ジャイアンツ)やキム・ヒョンス(現LGツインズ)、そしてヤン・ウィジ(現NCダイノス)までチームを離れたことで、戦力低下が嘆かれた。
しかしキム監督はバックアップに留まっていたパク・コンウ、キム・ジェファン、パク・セヒョクといった選手を韓国代表の主軸にまで育て上げ、主力の抜けた穴を埋めた。根気と信念がなければできない離れ業だ。
そのカリスマ性には、キム監督が歩んできた野球人生の経験が反映されている。
高校卒業後、一度は2年制の仁川(インチョン)専門大学へと進んだキム監督だったが、特有の誠実さと必死のトレーニングを積み重ねて、元阪神タイガースのオ・スンファン(現サムスン・ライオンズ)を輩出している檀国(タングク)大学へと編入。その後、1988年ソウル五輪の野球韓国代表に選ばれる快挙も果たしている。
大学卒業後、当時“キャッチャー王国”と呼ばれた斗山の前身であるOBベアーズに入団し、活躍する一念で研究とトレーニングに尽力した。このような経歴が、指導者への道を歩んだ際に選手の心理を一目で見抜く慧眼を作り上げた。
システム野球を導入していたSKワイバーンズでコーチを務めた2012~2014年の間、客観的な目線で斗山を見る機会を得られたのも、“監督キム・テヒョン”には何事にも代えがたい財産となった。
外部からのプレッシャーにも屈せず選手をまとめ上げるカリスマ性は、幾多の困難を乗り越えてきたキム監督自身の経験から来るものだ。球団側が彼を高く評価する理由も、痛みを露わにせず弱点をカバーする外柔内剛さにある。
再び斗山とともに歩むことになったキム監督の目標はただ一つ、勝ち続けること。重大な責任を負うことになったのは間違いないが、すでに楽しむ準備は整っている。
ミラクルを巻き起こし、再び栄光の道を歩んでいる斗山ベアーズが、この先どんな道を新たに開拓していくのか、今後も注目していきたい。
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