同日の練習では、同い年のMFソン・ジュンホ(30、山東泰山)にボールを放ってもらい、軽くヘディングも試みた。
真剣だったり、高い強度でやったりしたわけではないが、ソン・フンミンがこれまで自制してきた“頭”を少しでも使ったという点が大きな意味を持つ。
例え遊びのレベルでも、ヘディングができるようになった状態ということは確実にポジティブなシグナルだ。
実際、チームメイトもソン・フンミンの回復傾向を肯定的に見ている。
DFチョ・ユミン(26、大田ハナシチズン)は同日の記者会見で、「カタールに来て(ソン・)フンミン兄さんを見たが、記事を呼んだよりはとても良い状態だった。幸いだ。会話をたくさんしたが、とてもポジティブな人で余裕のある選手なので、自分が心配するほどでもない。しっかりやってくれるだろう。本当に頼もしい」とし、「フンミン兄さんの負傷は、試合に出るうえで大きな問題にはならないはずだ」と伝えた。
ただ、問題はもう一人のアタッカー、ファン・ヒチャンのコンディションだ。
左ハムストリングの違和感を訴えているファン・ヒチャンは、この日もリハビリメニューに専念した。初戦が目前に迫っているにもかかわらず、万全な状態でチーム練習を消化できていない。明らかに問題がある状況とみられる。
ファン・ヒチャンは韓国代表でトップレベルの“突撃隊長”だ。現在の代表でファン・ヒチャンほど猪突的に、爆発的な突破を試みるアタッカーはいない。代表チームメイトの多くが大会初ゴールの主人公にファン・ヒチャンを挙げるほど、攻撃の核となる選手だ。
MFイ・ジェソン(30、マインツ)やMFクォン・チャンフン(28、金泉尚武)、MFイ・ガンイン(21、マジョルカ)など、サイドでもプレーできる中盤の選手はいるが、ファン・ヒチャンとは違ったプレースタイルだ。彼らはスピードを活かして突破を試みるというより、パスを通じて攻撃を組み立てるプレーメイカーのスタイルであり、ファン・ヒチャンの代役とはならない。
サイドアタッカーの控えにはMFナ・サンホ(26、FCソウル)もいるが、ファン・ヒチャンほど破壊力ある突破ができる選手ではない。つまり、ファン・ヒチャンの穴を完璧に埋められる選手はいないというわけだ。
もちろん、周囲の想像を上回るスピードで回復する可能性もあるが、現状であれば、ファン・ヒチャンは初戦のウルグアイ戦を欠場する可能性が高い。グループステージは第2戦のガーナ代表戦、第3戦のポルトガル代表と続くため、初戦からファン・ヒチャンを無理に出場させてしまえば、より大きな災いを招くことになりかねない。
最終的な決断はベント監督が下すことになるが、ひとまず、第1戦では慎重に起用するものとみられる。
こうなると、ソン・フンミンの負担がさらに増すと言って良い。ソン・フンミンとファン・ヒチャンは似た部分が多く、2人ともスピードを利用した突破を楽しむスタイルだ。最前線と再度の両方でプレー可能であり、カウンター時や相手DFラインの後方を突く際に脅威となる点が似ている。
結局、ファン・ヒチャンの役割をソン・フンミンが2倍抱え込まなければならない。コンディションが100%でないにもかかわらず、ソン・フンミンの立場としては、自分自身で解決しなければならないという責任感が重くのしかかっているはずだ。
そこで注目されるのがベント監督の采配だ。ファン・ヒチャンが欠場となった場合、また別の計画で攻撃力を極大化する方法を探さなければならない。
この4年間、ベント監督はさまざまな組み合わせで攻撃陣を構成してきた。大会前にしてファン・ヒチャンの回復が遅いだけに、指揮官も脳内で複雑に構成を組み立てているはずだ。
(構成=ピッチコミュニケーションズ)
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