大田(テジョン)セボム眼科で院長を務める眼科専門医のノ・ジュンホ氏は最近、本紙『スポーツソウル』を通じて「骨折は手術をしない場合でも、最低6週間以上の回復期間を設けた方が良い。ソン・フンミンは激しく運動する選手なだけに、二次負傷が発生する恐れがある」とし、「医者の立場としては(プロテクターなどで)保護をするとしても、格別の注意が必要だと思う」と伝えた。
韓国代表は来る11月24日、カタールW杯グループステージ初戦のウルグアイ代表戦を戦う。試合当日はソン・フンミンの手術日から約3週間が経過した時点だ。その後は28日にガーナ代表、12月3日にポルトガル代表と対戦する。
つまり、ソン・フンミンが正常なコンディションでW杯に出場することは事実上不可能な状態だ。
医療界では、骨折でもプレーを強行しなければならない場合、最低でも復帰まで術後4週間後程度をもうけなければならないと見ている。そうすれば、ポルトガルとの最終戦にはプロテクターなどの保護装備を着用した状態での出場を調整することができる。
とはいえ、例えコンディションが完璧ではなくても、ソン・フンミンが韓国代表メンバー26人に選ばれる可能性は「99%」と見て良い。
リハビリの過程で大きな問題が生じない限り、ベント監督はソン・フンミンを招集するだろうという見解が大多数だ。
代表の複数関係者によると、ベント監督は「例えソン・フンミンが試合に出場できない状況でも(カタールに)連れて行く」という強い意志を抱いているという。
世界トップレベルの選手が頂点を争うW杯の舞台では、単純なパフォーマンス以上の要因が勝敗を大きく分ける。選手の心理戦が一役を買っているのだ。
昨季のプレミアリーグで得点王に輝いたソン・フンミンがメンバーにいるのといないのとでは、大きな差が生まれるしかない。実際、ソン・フンミンはピッチ外でも代表チームメイトの精神的支柱の役割を果たしている。
また、対戦国も韓国代表を「ソン・フンミンのチーム」と認識している。仮に彼がメンバーを外れ、「ソン・フンミンのいない韓国」がW杯に出場することになれば、相手の負担も大きく減ることになるだろう。
11月7日、KFA幹部は「ソン・フンミンも(W杯に)出場することを望んでいる。ベンチにいるだけでもチームメイトの大きな力になるだろう」とし、「手術を無事に終了したので、(ポルトガルと対戦する)最終戦ではプレーしてほしいという希望もある」と述べた。
もっとも、W杯への強行出場を危惧する見方も多い。
今大会はワールドカップの歴史上初めて、「中東」での「冬季開催」となる。以前までは欧州リーグのオフシーズン(6~7月)に行われていたため、一部の選手は多少負傷を抱えていてもW杯出場を強行し、新シーズン開幕前に治療やリハビリを行っていた。
しかし、今回はシーズン真っ只中の欧州リーグを一時中断して開催するため、欧州組の選手は大会後直ちに所属チームに復帰し、休む暇なくリーグ戦に臨まなければならない。
仮にソン・フンミンが代表合流時に無理をして新たな負傷をしてしまえば、2022-2023シーズンを悪夢のように過ごすこともあり得る。これはカタールW杯以降、次の段階を模索する韓国サッカー全体にとっても大きな悪材料だ。
全盛期を謳歌するソン・フンミンが自身3度目のW杯に出場し、2010年南アフリカ大会以来の決勝トーナメント進出を目指す韓国代表のために献身する姿を見たいのは多くの人々が願っていることだろう。
ただ、それによって最悪の事態が起きてしまえば、韓国代表とトッテナム、さらには韓国サッカー界に大きな不利益となってしまうこともあり得る。W杯開幕まで残り期間も少ないが、引き続きソン・フンミンの状態はチェックしていきたい。
◇ソン・フンミン プロフィール
1992年7月8日生まれ。韓国・江原道出身。身長183cm。大韓民国のサッカー選手で、サッカー大韓民国代表キャプテン。小学校と中学校ではサッカー部に所属せず、韓国代表経験のある父ソン・ウンジョン氏から直接指導を受けていた。2010年にドイツ・ブンデスリーガのハンブルガーSVでプロデビュー。その後、2013年に移籍したバイエル・レバークーゼンで2年連続二桁ゴールを披露し、2015年にプレミアリーグのトッテナム・ホットスパーへと移籍。愛称は“Sonny(ソニー)”。