ギャラリーの入場制限が解かれたKLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)ツアー。その中で目を引いたのは選手とギャラリーの関係だ。現地で取材した「ロッテオープン」(6月2日~4日)でも、選手一人ひとりに根強いファンがついていたことが印象的だった。
「韓国では若い世代を中心にゴルフブームが起きていて、その影響で女子ゴルファーのファンクラブも年々規模を拡大しています。ファンたちも結束力が強いので、毎大会でファンクラブのメンバーが欠かさず集まり、それぞれ選手を応援しているわけです」
大勢のギャラリーで賑わう会場を見ながらそう語ったのは、韓国で女性アスリートの活躍をメインに取り上げるスポーツメディア『スポーツW』のイム・ジェフン記者だ。
「KLPGAツアーは毎回のように優勝者が変わりますし、ツアー全体の実力差で見れば、紙一枚の差と言っていいほどに均衡しています。なので、大会が盛り上がれば自然と注目度は高まりますし、選手たちが持つスター性もあって、“ファンダム”の勢いがどんどん強くなっているんですよ」
ファンダムとは、「熱狂的なファンの集まり」を指す韓国の造語。はじめはK-POPファンの界隈でよく使われる言葉だったが、今では女子ゴルフ界でも用いられるようになった。
実際、大会中のインタビューで「今もJLPGA(日本女子ツアー)に興味がある」と語ったパク・ヒョンギョンは、KLPGAツアーでも強大なファンダムを持つ選手の一人。会場ではタオルマフラーやうちわなど、応援グッズを身に着けたファンを多く見かけただけでなく、ラウンド終了後には横断幕を掲げたファンクラブとの記念写真撮影も行われるなど、さながらアイドル並みの人気ぶりが感じられた。
そんな韓国女子ゴルフのファン事情を聞きながら、ある一人の選手のことが頭に思い浮かんだ。キュートなルックスに膝上30センチのミニスカートで、2017年の日本ツアー初参戦時には爆発的な人気を巻き起こしたアン・シネのことだ。
新型コロナウイルス感染症の影響もあり、日本ツアーでは2019年10月の「NOBUTA GROUP マスターズGCレディース」を最後に大会出場がないアン・シネ。それでも、ひとたびSNSを更新すればその内容がネットニュースで取り上げられるなど、日本では今も高い注目度を誇っていると言える。
では、お隣・韓国のゴルフファンは今のアン・シネをどう見ているのか。イム記者に率直に質問すると、こんな答えが返ってきた。
「やっぱり韓国でも、ゴルフファンの皆さんが一番気になっているのは、アン・シネ選手がいつツアーに本格復帰するか、ということでしょう。彼女は現時点で日本ツアーの出場権がなく、韓国でもシードを持っていない状況ですから」
アン・シネは昨年7月、KLPGAツアーの「DAEBO housDオープン」に推薦枠で出場するも、最下位で予選敗退という結果に終わった。コロナが本格流行した2020年は一度も大会出場がなく、約1年半ぶりの実戦ということもあり、本調子から遠ざかっていたのは明らかだった。そして、同大会を最後に、今年に入っても現在まで大会へのエントリーがない状況だ。
「本人としても、まだツアーを戦えるだけのコンディションにないということでしょう」というイム記者の言葉の通り、アン・シネは「DAEBO housDオープン」以降、現在まで大会へのエントリーがない。ただ、SNSを見ると、今年に入ってからはアメリカに滞在しつつ、現地のゴルフ場で連日トレーニングに励んでいる様子がうかがえる。
「以前、アン・シネ選手のスポンサー関係者と話す機会がありましたが、(選手は)今も大会出場に向けてトレーニングを続けていると聞きました。ただ、今シーズンの間にツアー復帰するかどうかは、関係者も把握できていないようです」
前述の通り、アン・シネは日韓ツアー両方でシードがないため、現状では推薦枠でしかツアー復帰の可能性はない。それでも、彼女が再び大会に出場するとなれば、間違いなく多くの注目を集めるはずだ。入場制限のなくなったKLPGAツアーでは、特にその効果が大きいとイム記者は断言した。
「全盛期のようなパフォーマンスでないにしても、アン・シネ選手が大会に出場するとなれば、KLPGAツアーには今以上に多くのギャラリーが集まると思いますよ。現在もスター性と人気を兼ね備えた選手であることは間違いないですから。昨年出場した大会(DAEBO housDオープン)は無観客だったので、有観客に戻った今年に大会出場があれば、たくさんのゴルフファンが会場に駆けつけるはずです」
元々、アン・シネはKLPGAツアーでメジャー大会含む通算3勝という実績を持つだけに、彼女の復活を待ち望むゴルフファンは多い。はたして、一世を風靡した“クイーン”が再びツアーで活躍する日は来るのだろうか。
(取材・文=姜 亨起)
◇アン・シネ プロフィール
1990年12月18日生まれ。韓国・ソウル特別市出身。身長165cm。小学3年生のときにニュージーランドに留学し、現地でゴルフの実力を磨いた。2008年に韓国女子プロゴルフ協会(KLPGA)に入会、2015年の「KLPGAチャンピオンシップ」で初のメジャー大会制覇を成し遂げた。2017年の日本女子ツアー参戦時には一躍注目を集めた。
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