アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)の東地区ベスト4が出揃った。
新加入のポーランド代表FWヤクブ・シュヴィルツォクのハットトリックで、大邱(テグ)FC相手に4-2の逆転勝利を飾った名古屋グランパス。
延長線を含め120分でも決着がつかず最後はPK戦の末に川崎フロンターレを下した蔚山現代(ウルサン・ヒョンデ)。
9月15日に敵地でセレッソ大阪を1-0で下した浦項(ポハン)スティーラース。
そして昨季タイリーグ王者のBGパトゥム・ユナイテッドと1-1の接戦の末に、PK戦で勝利した全北現代(チョンプク・ヒョンデ)。
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東地区のラウンド16(決勝トーナメント1回戦)4試合中、3試合で日韓対決が行われたことで“ミニ日韓戦”3連戦と注目されたが、結果的にはJリーグ勢が1勝2敗と負け越し、Jリーグ勢で準々決勝に駒を進めたのは名古屋グランパスのみとなった。
一方のKリーグ勢は、蔚山現代、浦項スティーラース、全北現代の3クラブが準々決勝に。Kリーグ勢が3クラブも準々決勝進出に成功したのは2011年(全北現代、水原三星ブルーウィングス、FCソウル)以来10年ぶりだが、注目すべきは今後の試合会場のことだろう。
本来ならばACLは準々決勝、準決勝からホーム&アウェーの2試合方式で開催されるが、今年は新型コロナウイルスの影響を鑑みて一カ所での一発勝負方式に。東地区の準々決勝、準決勝は韓国の全州(チョンジュ)で行われるのだ。
ただ、このことは今回の結果に関係なく決まっていたこと。アジアサッカー連盟(AFC)が7月30日(日本時間)にプレスリリースを通じて「2021年10月17日から20日まで、韓国の全州でAFCチャンピオンズリーグ東地区の準々決勝、準決勝が行われる」と発表していた。
では、なぜ、韓国開催なのか。ラウンド16開催前、ソウルに位置するKFAハウス内のKリーグを訪ね、関係者や事務方トップの関係者にその理由について直接尋ねてみた。
「AFCが準々決勝、準決勝の開催に名乗りを上げるところを探しているというアナウンスがあり、Kリーグとして手を上げました」
そう言って取材に応じてくれたのはKリーグのチョ・ヨンサム事務総長だ。チョ事務総長によると、Kリーグが立候補することになった背景にはリーグ日程も無関係ではなかったという。
「今季もKリーグは日程が詰まっている中、一部クラブから新型コロナの陽性者が出てリーグの延期や中断を余儀なくされました。これ以上、日程に余裕がない状況です」
ましてACLグループリーグ直後には大邱FCと全北現代から新型コロナ陽性者が出てKリーグ日程はもちろん、チーム運営にも支障か出た。蔚山現代や浦項から陽性者は出なかったが、海外の出たクラブは1週間のコホート隔離(集団隔離)も課せられている。
そういった負担を少しでも軽減させるためにKリーグとして立候補に及んだという。KリーグがACLに力を入れていることは今季から本格始動しているTSG効果でも表れているが、スケジュール面でのサポートもあることはクラブにとっても心強い。
「AFCの反応も良かったと思います。東アジアの中で出場4クラブすべてが16強(グループリーグ突破)に進出していたのはKリーグだけでしたし、東アジアのほかの国々に比べると韓国は新型コロナウイルスの拡散率が比較的低く、社会全般の防疫対策もできている。選手やコーチ陣らチームが外部と接触せぬようにするバブル方式も徹底できており、試合運営および防疫能力も高いという点が考慮されて今回の決定に至ったと思います」(チョ事務総長)
ちなみにKリーグは昨年5月、世界中がコロナ・ショックに襲われた中、どこよりも早くリーグ戦をスタートさせて注目も集めた。思えば、そのときも全州だった。
全州はKリーグ4連覇中の常勝軍団にしてACLでも2度の優勝を誇る全北現代のホームタウン。そのメインススタジアムである全州ワールドカップ競技場は、同地に朝鮮王朝時代から存在した“チョンジュソン(全州城)” の愛称で親しまれ、全北現代はホームで滅法強いことでも有名だ。
2013年から2019年までのホームゲーム勝率は75.7%。2020年もホームで負けたのはたった2回のみだった。
その全北現代も駒を進めた準々決勝の対戦カードは、9月17日にオンラインで行われた組み合わせ抽選会で決定。名古屋グランパスは浦項、全北現代は蔚山現代と対戦することになった。
名古屋グランパスはグループステージで浦項に1勝1分と勝ち越している。とはいえ、韓国開催の準々決勝は厳しいアウェーゲームになりそうだ。
(文=慎 武宏)
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