予想だにしなかった主力の離脱にサッカー韓国代表が揺れている。
かつてJリーグでも活躍し、韓国代表の主力ボランチを務めるチョン・ウヨン(31、アルサッド)は8月23日、韓国への帰国便に乗った際、同乗者がコロナの陽性判定を受けたため、韓国の防疫指針に従って9月6日まで隔離されることとなった。このため、カタールW杯最終予選を戦う代表チームから離脱している。
チョン・ウヨンの離脱に伴い、9月2日にイラク戦、7日にレバノン戦を控えた韓国代表は、チュ・セジョン(30、ガンバ大阪)を追加招集した。
チョン・ウヨンは韓国代表における不動のレギュラーとして、パウロ・ベント監督に重用されてきた。所属クラブのアルサッドでも、ボランチとして優れた守備力とパス能力でチームを牽引している。
彼は韓国代表のパウロ・ベント監督が指向するパスサッカーで、後方から始まるビルドアップの起点として、重要な役割を担ってきた。特に、極端な守備的戦術を敷くチームが多いアジア予選では、チョン・ウヨンが左右に展開するパスが非常に有効的だったといえる。
ベント監督は今回招集した代表メンバー26人では、ボランチとセンターバックで起用可能なウォン・ドゥジェ(23、蔚山現代)を除外しており、3列目をこなせる人材はファン・インボム(24、ルビン・カザン)、ソン・ジュンホ(29、山東泰山)、チュ・セジョンの3人となっている。
ベント監督はこれまで、アジアのチームと戦う際は攻撃を重視するためボランチは1人しか起用していなかったが、W杯予選も最終予選に差し掛かり、安定した試合運びを優先する場合は、ボランチを2人起用する選択肢も少なからずあるようだ。
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そしてチョン・ウヨンの代役として追加招集されたチュ・セジョンだが、ベント監督率いる韓国代表での実績は薄い。チュ・セジョンは、今年1月にFCソウルからJリーグのガンバ大阪へと移籍。今季のJリーグでも18試合に出場したが、出場時間は計845分に過ぎず、チームに完全にフィットしているとは言えない状況だ。また3月25日に行われた日韓戦や、6月のW杯予選2次ラウンドにも選ばれておらず、連携面でも不安を抱えていると言える。
そのため、ダブルボランチを採用する場合は、“韓国のピルロ”と称されるファン・インボムと、ソン・ジュンホのコンビが有力のようだ。
1年8カ月ぶりに代表へと復帰したファン・インボムは、これまで高い攻撃センスを武器に、2列目で起用されてきた。しかし韓国のピルロと称されるように低い位置からのパスも非凡な才能を持っているため、今回3列目での起用が濃厚と見られている。
そして相方には中国でプレーしているソン・ジュンホがされるはずだ。豊富な運動量と泥臭いプレーは、ACミランでアンドレア・ピルロとともに中盤を構成したジェンナーロ・ガットゥーゾを彷彿とさせる選手だ。
ソン・ジュンホは昨シーズン、リーグ4連覇を達成した全北現代のボランチとして大活躍し、MVPを獲得。リーグ戦25試合で2ゴール5アシストを記録すると、地上での競り合い(75回)やパスカット(171回)、ボール奪取(291回)、中央地域でのパス回数(1124回)部門で1位を占め、タックル成功(33回・2位)、インターセプト(51回・5位)など、すべての部門で上位にランクインするほど守備能力に長けた選手だ。
今季も所属チームの中国の山東泰山で全試合に出場し、チーム内で最多の出場時間を誇っている。ベント監督のファーストチョイスではないものの、絶えず招集されており、起用論が度々取り沙汰されてきた。
新型コロナの影響でW杯最終予選前に思わぬアクシデントに陥った韓国代表だが、主力固定のマンネリから脱する良いチャンスではないのだろうか。
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