“大勝の落とし穴”にハマってはならない。木を見ず森を見る知恵が必要だ。
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東京五輪に出場中のU-24韓国代表は、U-24ニュージーランド代表に0-1で敗れた衝撃的な初戦を乗り越え、U-24ルーマニア代表相手の4発完勝で巻き返しに成功した。
収穫は多かった。先ずは何より、グループステージで最重要の目標であり、初戦で失敗してしまった勝ち点3を獲得できた。それも複数得点を奪っての勝ち点3だ。
グループBでは韓国、ホンジュラス、ニュージーランド、ルーマニアの4チームがすべて1勝1敗で並んだ。ただ、韓国が得失点差+3により、ホンジュラスとニュージーランド(以上、得失点差0)、ルーマニア(得失点差-3)を上回ってグループ首位に立った。
韓国は来る28日、横浜国際総合競技場で行われるグループ最終節のホンジュラス戦を引き分け以上で終えれば、決勝トーナメントへの進出が決まる。
しかし、韓国の目標はただグループステージを突破することではない。2012年ロンドン五輪の銅メダルを上回るオリンピックサッカー歴代最高成績を収めることだ。その観点で見れば、韓国のパフォーマンスはまだメダル圏内に及ばないという評価が大半である。
ここでは、歴代最高成績を目指す韓国の懸念とされる要素を、大きく分けて3つ紹介しよう。
最大の懸念はオーバーエイジのFWファン・ウィジョ(28、ボルドー)の沈黙。このことは、韓国率いるキム・ハクボム監督にとってももどかしいはずだ。
ファン・ウィジョは3年前、キム監督に呼ばれ2018年ジャカルタ・アジア大会にオーバーエイジで出場した際、大会通して9得点の爆発ぶりで得点王に輝いた。ところが、今回の東京五輪では2試合を終えて未だゴールがない。
チャンス自体はあった。ニュージーランド戦では右サイドからのクロスをヘディングで合わせたが、惜しくも相手GKの正面に飛んだ。ルーマニア戦でも後半にペナルティエリア内で決定機を迎えたが、相手GKのセーブに防がれた。
こうしたパフォーマンスから、韓国サッカーファンの間では「ファン・ウィジョらしくない」という声も聞かれる。
もっとも、ファン・ウィジョのコンディションが優れないのは事実であり、その理由も明らかだ。彼は2019年夏のボルドー入団から現在まで、“秋春制”で行われるリーグ戦に合わせてコンディションを維持してきた。ただ、本来オフの夏にオリンピックのような国際大会に出場するのは、欧州進出以降では今回が初めてだ。
2020-2021シーズンをボルドーの主力FWとして活躍し、チーム最多の12ゴールを決めたファン・ウィジョ。シーズン終了後もA代表の2022年カタールW杯アジア2次予選に出場するなど、休む暇なく試合に出場してきた。
そして今回、東京五輪を戦うU-24代表にも合流して日本に飛んできたが、100%のパフォーマンスを発揮することに困難を覚えている。
キム監督は、ファン・ウィジョが1ゴールさえ決められれば正常軌道に乗ると信じている。実際、彼が本調子を取り戻してこそ、韓国は東京五輪でさらに高いところを目指せる。
9年前のロンドン五輪でも、オーバーエイジのFWパク・チュヨン(36、FCソウル)はグループステージで苦しんでいたが、銅メダルをかけた日本との3位決定戦では貴重なゴールを決めた。
それだけに、今回もファン・ウィジョがかつてのパク・チュヨンのように、決定的な瞬間で自身の役目をまっとうできるかに関心が集まっている。
2つ目の懸念は守備陣にある。守備陣の集中力不足も解消しなければならない。
ニュージーランド戦の後半、韓国の守備陣は一瞬の油断を許して相手に決勝ゴールを許した。
加えてルーマニア戦では、GKソン・ボムグン(23、全北現代モータース)が1-0でリードしていた前半33分に味方のバックパスを手でつかみ、間接フリーキックを許した。幸い失点にはつながらなかったものの、試合にどれだけ集中できていないかを象徴する場面だった。
ただでさえソン・ボムグンは、東京五輪直前のU-24フランス代表との強化試合でも痛恨のミスで失点を許している。ソン・ボムグン、そしてDFラインの選手たちは、頻繁のコミュニケーションを通じて試合に集中しなければならない。
最後の懸念はセットプレー。キム監督が“秘密兵器”に挙げたセットプレーの完成度を高めることが求められる。
韓国はこれまでのオリンピックで計31ゴールを決めてきたが、セットプレーからの得点はわずかに1ゴール(PKを除く)しかない。
キム監督もこれを認知しており、MFイ・ガンイン(20、バレンシア)、MFイ・ドンギョン(23、蔚山現代)、MFクォン・チャンフン(27、水原三星ブルーウィングス)と、利き足が左足の選手3人を招集。彼らを中心にセットプレーの戦術を準備したが、ここ2試合で効力はない。そのため、より繊細な動きの部分を研究する必要がある。
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