韓国プロ野球のドラフトで「申請制全面適用」など大変化の兆し、根底には“社会問題”の影響が

韓国野球委員会(KBO)が、来たる年2022新人ドラフトから大幅な変化に踏み切るようだ。

海外から復帰する選手、もしくは学生時代の野球部活動経験がない選手だけに当てはまるドラフト申請制度を、プロ入りを希望する全ての人に適用する計画だという。また、危機に瀕している大学野球との共存のため、卒業前のドラフトも可能となる制度の確立も肯定的に進めているそうだ。

KBO関係者は4月14日、「ドラフトを申請制にする変更を巡って、球団サイドと話し合いを続けている。まだまだ詰めていかなければ多い点があるため確定はしていないが、2021年上半期中に決める計画だ。5月までに確定できれば、6月、または6月以降に予定されている1次指名と、9月に予定されている2次ドラフトのいずれも無理なく進められる」と話している。

これまでに存在していたKBOドラフトの問題

これまでKBOは、卒業を控えた高校生や大学生の野球選手全体をドラフト申請者と見なしてきた。そのため、高校3年生、大学4年生(2年制大学の場合、大学2年生)の野球選手たちは、自動的にドラフト対象者になっていたのだ。

(写真提供=KBO)

また、海外でプレーしていた選手や、LGツインズのハン・ソンテのように学生時代の野球部活動経験がない選手は、KBOが公示した期間に合わせて申請書を提出していたが、一般的にはこの過程を経ずにプロのユニホームを着ている。

ところが、このようなプロセスで2つの問題が生じることに。

1つ目の問題は米メジャーリーグ(MLB)とKBOリーグの重複指名だ。最近はこのような事例も減ったが、2000年代初頭頃までは何人かの選手が国内で1次指名を受けたあと、MLB球団と契約を結んで海を渡った。

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例として、2005年に斗山(トゥサン)ベアーズから1次指名を受けたあと、テキサス・レンジャーズと契約を結んだ左投手のナムユンソン(現SSGランダーススカウトチームマネージャー)や、2000年にロッテ・ジャイアンツから1次指名を受け、シアトル・マリナーズと契約したチュ・シンス(現SSGランダース)が代表的だ。

最近では球団が選手と親に海外進出の意思を確認した上で1次指名をしているが、過去には上記した前例のように1次指名権を失う恐れもあったため慎重にならざるをえなかった。

チュ・シンス

大きな“社会問題”が球界にも波及

2つ目の問題は、ここ最近急浮上し、韓国では社会問題にまで発展した“いじめ問題”だ。卒業年次であれば自然とドラフト対象者になるため、球団はドラフト対象者の野球以外の私生活部分の把握が難しい状況だったと言える。

NCダイノスは2020年、大きな期待を抱いてキム・ユソンを1次指名したが、指名後にいじめが知れわたったため指名を諦めた経緯がある。その後、数人の現役選手も学生時代のいじめ問題と向き合い、選手側と被害主張側の真偽を判断する法廷での攻防が行われている。

KBOは、ドラフト申請書に“学校生活記録簿”を添付する案を考えているようだ。実際、2021年2月24日に韓国政府の文化体育観光部と教育部は、「学校の運動部での暴力根絶、およびスポーツ人権保護体系の改善案」を審議・議決し、プロスポーツチーム、実業団チーム、大学が選手を選抜する際にはいじめの履歴を確認し、選抜を制限するようにした。ドラフト申請書に記録簿を添付すれば、いじめ問題で引っかかる可能性は低くなる。

「アーリードラフト」も検討

また、KBOは大学卒業以前の選手にもドラフトへの参加を認める「アーリードラフト」制度を、申請制とともに実施する。

選手と球団がそれぞれ大学進学、または大学卒業者を忌避する状況で、生存の危機に瀕した大学野球を生かすためには、アーリードラフトを許容しなければならないという意見が大勢を占めている。韓国大学野球連盟もまた、アーリードラフト制度に賛成しているようだ。

アーリードラフト制が定着した場合、大学選手たちは2年生までしか学業を履修していなくてもドラフトを申請してプロユニホームを着ることが可能となる。アメリカで大学選手が卒業とは関係なくプロに進出するように、韓国の選手も2~3年間の大学生活で野球技能を向上させたあと、プロ球団に入団する環境が整うことも充分にありうるということだ。

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