予想された不安要素が虚しく露呈した。傷だけを残したサッカー韓国代表の話だ。
3月25日に行われた“日韓戦”は、0-3と完敗した結果は別として、選手選抜からメディア対応、試合準備の過程のあらゆる面で共感し辛い部分が多かった。国際Aマッチをたった1試合行っただけでこれほど多くの議論が起きるのは異例のことだ。
結局は韓国サッカー協会(KFA)の内部で問題を解決するしかないが、そのなかで3選に成功したチョン・モンギュ会長が野心を持ってかかげた「アジャイル(Agile)組織」への改編が、否定的な影響を及ぼしたという声が出ている。
アジャイル組織は「“素早くて”、“機敏な”組織」という意味であり、部署の境界を崩し必要に応じてプロジェクトチームを構成し、業務を行うことを意味する。
チョン会長は去る2019年、自身が運営する現代(ヒュンダイ)産業開発にアジャイル組織の体系を導入し、水平且つ迅速に業務を推進する文化づくりに努めた。
KFAでもこうした概念を導入し、先月15日付で、従来の1本部6室19チームの構成を2本部7チームに統合した。女子サッカー活性化や大会の刷新、天安(チョナン)NFCなど、全社的な力量を集中しなければならない重要課題には、一部のチーム員を兼職させた。
一言で言えば、これまで各人員が特定の業務のみを担当していたとすれば、これからは他部署の仕事も兼ねる“マルチプレーヤー”を目指すようになったのだ。
ところが、今回の“日韓戦”を通じて「KFAにアジャイル組織が本当に合っているのか」という疑問が広がっている。
何より、KFAは大企業のように大規模な人材を持っているわけではない。アジャイル組織は豊富な人材が土台になければならない。
大企業は人員が多いため、主要部署を統合して“弾力組織形態”で運営しても、直ちに穴は発生しない。
しかし、KFAではこれまで特定の業務をおおむね1~2人が担当していた。そこで突然、統合と弾力組織形態での仕事を要求されたことで、随所で穴が発生するというのが共通した見方だ。
議論となった一部選手の選抜過程やユニホーム問題を見ても、そもそもフィルターとなる行政の専門家の空白が目立ったという話が出ている。
今回の組織改編前までは、国家代表支援チーム長を務めていたA氏が、パウロ・ベント監督率いる代表チームとKFA事務局職員の架け橋の役割を果たしてきた。
しかし、チョン会長は今回の組織改編で、そのA氏を女子サッカー活性化プロジェクトチームに異動させた。現場と技術パートは、既存の競技人出身で埋め尽くした。
とあるサッカー関係者は「Aチーム長はこれまで、代表チームと事務局の架け橋の役割をしながら、円滑な支援はもちろん、問題になりそうな事案を予測し、助言するのに大きな役割を果たしたと聞いた」とし、「今回発生した問題を見ると、彼の空白が大きいようだ」と話した。
実際、ベント監督もA氏がチーム長を辞任したことに不満を抱いているという。
このほか、さまざまな議論への対応が以前とは違ったという話も出たが、これも広報やマーケティングの構造上の問題とする見解がある。
チョン会長は、今回の組織改編で広報チームとCSRチームをマーケティングチームに統合した。収益関連活動に集中するマーケティングチーム長が、メディア対応など広報活動まで責任を持つ状況となった。
これについてKリーグクラブの複数関係者は、「広報とマーケティングは協業するときがあるとはいえ、基本的には別の領域であり、スポーツでは特にそういう構造だ」とし、「売上活動をするマーケティングに“広報をしろ”というのは、構造上適切ではない。ここにCSRまで含めたというのは、もはや“広報するな”という話にほかならない」
おおむね重複する業務を統合し、急変する“ウィズコロナ”時代に迅速に対応するという意志には賛成した。だが、それが必ずしもアジャイル組織でなければならないかについては、首をかしげざるを得ない。
“日韓戦”を通じ、もう少し冷徹に振り返らなければならないという見解が支配的だ。
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