米メジャーリーグ、テキサス・レンジャーズとマイナー契約を交わしたヤン・ヒョンジョンは、現在招待選手としてアリゾナでのキャンプに参加している。
今のところオープン戦2試合で3イニングを消化したことが彼のすべてだ。現時点では開幕ロースター26人に名を連ねられるかは判断し難い。3度目の登板後に今後の可能性が見えてくる。
しかし、1つ確かなことは先発投手としては計算されていないということだ。レンジャーズにおけるヤン・ヒョンジョンの立ち位置は、既に中継ぎ投手として認識されているようだ。
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先んじてアメリカに渡ったキム・グァンヒョン(セントルイス・カージナルス)も、中継ぎからスタートして先発入りを果たしている。
ヤン・ヒョンジョンの1軍に合流することがあるならば、それはレンジャーズの左投手陣強化を意味する。昨シーズンのレンジャーズは、先発、中継ぎを問わず優れた左投手がいなかった。ヤン・ヒョンジョンがアピールすべき点は“左腕”という一点だ。
左腕中継ぎとしての期待を背負う場合、出番は試合の6回以後の左打者相手だろう。全チームの打順を見ると、左打者は断続的に置かれている。これは相手が左投手を投入した場合、左打者が集中的に攻略されることを防ぐためだ。
2020シーズンからメジャーではルールが改正され、投手は最低でも打者3人と対戦するか、登板イニングを終えるまで交代できないこととなった。
従来は1人の打者を相手にする“スペシャリスト”としての役割が功を奏した場面も少なくなかった。このスペシャリストには概ね左投手や変則的な投手が選ばれていた。
しかし、ルールが変わったため右打者も必ず相手にしなければならず、スペシャリストへの依存度は急激に下がることに。
ヤン・ヒョンジョンがオープン戦2試合の登板で見せてくれた投球内容は、そっくりそのまま彼の課題にほかならない。3月8日に初登板をはたしたロサンゼルス・ドジャース戦では右打者を三振に取り、1回、2被安打(1本塁打)、1三振、1失点の結果に。この時被弾した本塁打の相手は右打者だった。
続く14日に登板したミルウォーキー・ブルワーズとの試合では、三振3つがいずれも左打者とのものだった。結果は2回、1安打、3三振、無失点の好投を見せている。
1度目の登板よりも2度目の方が良い投球内容だったというのも、左打者が集中し、メンタル的に気楽に投げられたという部分が大きい。ヤン・ヒョンジョンの課題は右打者にも左打者同様に投球をしなければならないという点だ。
数字は嘘をつかない。これまで長く続いてきた野球の歴史において、左投手は右打者に、右腕は左打者に弱いという事実は、統計的にハッキリ明示されている。
トロント・ブルージェイズの左腕リュ・ヒョンジンがエースとして扱われている理由は、右打者にも対しても武器であるチェンジアップが通用しているからだ。
ヤン・ヒョンジョンの韓国プロ野球時代の通算データを見ると、右打者相手には被安打率2割6分7厘、125与四球、541三振、1088本、左打者相手には被安打率2割4分6厘、37与四球、254三振、585本となっている。
被本塁打、四球、三振は対決頻度で差があるため、単純な数値として把握するのは難しいが、被安打率の明確な差は一目瞭然だ。
しかし、かつてのヤン・ヒョンジョンは右打者相手にも難なく危機を乗り切り、韓国プロ野球界でエースとして君臨していた。アメリカの地でもその本領を発揮し、リュ・ヒョンジンに続く新たな韓国人エースとして見事なマウンド捌き見せる日を待ち望みたい。
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