チェ・ジマン(29、タンパベイ・レイズ)に、韓国人野手初のワールドシリーズ優勝に挑戦するチャンスが巡ってくるかもしれない。
レイズは現在、MLBアメリカンリーグのチャンピオンシップシリーズでヒューストン・アストロズと競り合っており、待望のワールドシリーズ進出が目前にある。
レイズの一員として優勝への道を歩いているチェ・ジマンは、レギュラーシーズンからポストシーズンに至るまで華々しい活躍を見せ、チームの勝利に不可欠な役割を担っている。
同じアメリカンリーグ(ア・リーグ)に所属し、ライバル関係であるニューヨーク・ヤンキースとア・リーグディビジョンシリーズでは自身の名前をアメリカ全土に知らしめた。
第1戦目ではヤンキースのエースで、現在最高年俸投手であるゲリット・コールを相手に逆転2ランホームランを放ち、レギュラーシーズンに続きポストシーズンでも天敵として実力を遺憾なく発揮した。続く打席では、ヤンキースベンチがまさかの敬遠策を選択し話題となった。
第5戦まで続いた死闘の末、ヤンキースを下したレイズの底力にはチェ・ジマンの活躍が欠かせなかった。
ヤンキースとの試合ではバッティングが話題となったが、ヒューストン・アストロズ相手には守備で存在感を見せつけた。
1戦目を欠場したチェ・ジマンだったが、2戦目には先発出場した。この試合では4打数無安打に終わったが、捕りにくい送球を股が裂けるような高難易度アクションで何度も好捕して見せた。
チェ・ジマンから守備の恩恵を受けたショートのウィリー・アダメスは試合後、「彼が良い守備をするたびにありがとう」と感謝を伝えた。
レイズのケビン・キャッシュ監督も「メジャーリーグではあのような守備をするファーストは珍しい」とし、「しかし、我々はチェ・ジマンの守備でより多くのアウトを取れると信じており、実際にそうなっている」と強調した。
アメリカ現地でも野球ファンがSNSにチェ・ジマンの守備動作をパロディにした記事を上げるなど、大きな話題になっている。チャンピオンシップシリーズでの先発出場は3試合のうち2試合のみとなったが、チェ・ジマンの価値は光輝いていた。
グラウンド外でのチェ・ジマンはダグアウトの自称応援団長として、誰よりも熱心にチームメイトに力を吹き込む。
チャンピオンシップシリーズ進出確定後、クラブハウスで行われたお祝いの席でごみ箱を踏みつけ、2017年に起きたアストロズのサイン盗みを皮肉るパフォーマンスを行い、チームの結束を高めるために一役買った。
低燃費・高効率でチームの戦力を引き上げたレイズの底力は今季明確にあらわれている。
ヤンキースやLAドジャースのようにビッグネームは少ないが、海外からしっかりとした戦力を揃え、強豪を相次いで撃破した。
チェ・ジマンのほかにも、ポストシーズンで強烈な存在感を放っているランディ・アロザレーナ、バッティングのみならず信じられない好守備でマウンドを援護するマニュエル・マーゴット、元横浜DeNAベイスターズの筒香嘉智、ケビン・キアマイヤー、ハンター・レンフローなどが名を連ねている。
マウンドでもピーター・フェアバンクス、ディエゴ・カスティーヨ、アーロン・ループ、ライアン・トンプソンなど、鉄壁の投手陣が失点を最小限に抑え、お手本のような守備野球を見せてくれる。
ピンチのたびに輝くキャッシュ監督の神懸かった策も、レイズの上り調子を牽引している。
スキが見当たらないレイズは、名実共にワールドシリーズ優勝の可能性が十分にあるチームとなった。レギュラーシーズンに続き、ポストシーズンでもこれを証明している。
チェ・ジマンがレイズとともにワールドシリーズの舞台を踏めば、初の韓国人野手メジャーリーガーとなる。
これまでキム・ビョンヒョン(ボストン・レッドソックス)、パク・チャンホ(フィラデルフィア・フィリーズ)、リュ・ヒョンジン(ロサンゼルス・ドジャース)たちがワールドシリーズを経験したが、すべて投手だった。
韓国人野手は未踏の舞台だったが、チェ・ジマンが足跡を残すことができるだろうか。これに加えてチャンピオンリングまで手にすることとなれば、韓国人野手初のワールドチャンピオン選手として名前を上げることとなる。
破竹の勢いで突き進むレイズに注目が集まる中、チェ・ジマンがこのワールドシリーズ優勝にキャリアに骨太なマイルストーンを立てることができるか。
前へ
次へ