立春から1カ月を過ぎた3月に入ったが、全世界では新型コロナウイルスという予期せぬ脅威と対峙している。
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感染者が6000人に急増した韓国は、新型コロナの感染拡大を防止するために、全国民が外出を控えながら、時ならぬ冬眠期のような時間を過ごしている。
ほとんどのスポーツがリーグを中断したり、無観客試合を行ったりしている。
韓国馬事会(KRA)は、競馬を「騎手が騎乗した馬の競走に対して、勝馬投票券(馬券)を発売し、勝馬投票的中者に還付金を支給する行為」と規定している。
すなわち、韓国における競馬は、レースの施行と馬券発売の両方を満たしてこそ成立する。
韓国と同じく新型コロナの影響を受けている日本や香港などでは、“無観客の競馬”を実施している。ネット投票が浸透し、ファンが競馬場に訪れなくても競馬の要件が満たされるからだ。
しかし現場発売だけが可能な韓国の場合、“無観客の競馬”は成り立たない。
そのためソウル、釜山慶南(プサンキョンナム)、済州(チェジュ)にある3つ競馬場は、臨時休場に入った。
競馬が施行されなくても、馬房で過ごしている競走馬のコンディションは維持されなければならない。競走馬は管理やトレーニングに少しでもおろそかになれば、競技力が著しく低下するからだ。
1981年度から騎手生活を始め、今年で40年を競馬場で過ごすパク・ジョンゴン調教師に、新型コロナの影響で日常にどんな変化が生じたか聞いてみた。
パク調教師は「日課は何も変わらず、午前6時に始まる。走行審査も毎週同じだ。当日のレースだけがない。ただ、あまりにも感染力が強い病気であるため、現場は超緊張状態だ。1人でも感染者が出てしまうと、まずその厩舎の調教師や厩務員は自宅隔離となるだろうが、そうなると“誰が馬の世話をするのか”と笑えない状況になってしまうからだ。調教師協会では非常時に備えたマニュアルを稼動中」と、現状を伝えた。
パク・テジョン、ムン・セヨンの後に続く、韓国競馬の次世代スター騎手に数えられる1993年生まれのイ・ヒョンジョンにも、休場期間の近況を尋ねた。
イ・ヒョンジョンは「突然の休場に驚いたが、休みながら自らを振り返っている。競馬は0.1秒差で順位が変わるので、小さな部分でミスをしないように、心構えをしている。また基礎体力トレーニングをしっかりして、感覚を失わないように毎日木馬に乗っての練習も欠かさない。休場期間中に騎乗技術を補強し、待っていてくれるファンに素晴らしいレースを見せたい」と語った。
韓国馬事会もすべての観戦席と施設の防疫活動を実施する一方、全事業所の防疫態勢を点検している。
また休場による入店業者の被害を最小限に抑えるために協議を重ねており、レーシングプログラム変更案をめぐって競馬関連団体との協議も行われている。
一方では、競走馬の安全なトレーニングのために、ゲート審査や走行審査などをいつものように実施し、競走馬の出馬態勢を確認。電算・放送システムや競馬施行施設の安全点検を強化するなど、部門ごとに競馬再開に向けた活動に余念がない。
韓国馬事会キム・ナクスン会長は、「何よりも伝染病の遮断と予防のために、休場期間中の出入りを厳しく統制し、非常対策委員会を稼動して変化するすべての状況に機敏に対応できるよう最善を尽くしている。休場期間も黙々と励んでいる関係者の方々に深く感謝申し上げる」と述べた。
3月最初の週末。観客で埋め尽くされているべき観戦席は、嘘のようにがらんとしているが、それでもいつでも競馬を再開できるようにと関係者の動きは忙しかった。
隙のない1~2分のレースを競馬ファンに披露するために、競馬場で働く数千人の関係者は休場期間も休むことなく、忙しい日常を送っている。
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