Kリーグに所属する22クラブの内、大邱FCだけが唯一保有しているものがある。
それは、自発的に発足された後援団体である大邱FCエンジェルクラブだ。エンジェルクラブは、大邱が2部を戦っていた2016年7月に公的に発足され、現在も活動を続けている。
エンジェルクラブのイ・ホギョン会長は、3月2日に本紙『スポーツソウル』のインタビューに応じた。
イ会長は「エンジェルクラブが発足されたとき、クラブは2部に降格してファンも多く離れ、最悪の危機的状況にあった。市民の力で作られた国内最初の市民クラブを正常化させることが、地域社会にとって意義深いことであると考えた」と、発足当時のことを振り返った。
エンジェルクラブは単純なクラブの後援団体という枠を超え、地域社会の”奉仕プラットフォーム”の役割を果たしている。大部分の会員が、各自の位置で奉仕活動に邁進しているからだ。
地域の劣悪な環境にあるスポーツチームや選手たちを持続的にサポートしている。エンジェルクラブは”サッカー愛を通じた地域愛”というスローガンのもと、お互いを応援し合う奉仕活動を行っている。
全世界を恐怖に貶めている新型コロナウイルス感染症が拡大する中、大邱も大きな困難に直面している。
3月2日時点で、大邱地域の新型コロナ感染者は3000人を超えているからだ。これは韓国にある17の市道で最も多い数字だ。
『新天地イエス教会』大邱教会を中心にした感染者増加は、収束のめどが立っていない。韓国内の各地域では、新型コロナに苦しむ大邱地域を応援する声が日に日に大きくなってきている。
エンジェルクラブも、新型コロナ克服のための活動に注力している団体の一つだ。
最近では大邱の都心に“頑張れ大邱慶北!勝とう大邱慶北”と書かれた横断幕100枚を掲げ、市民にエールを送っている。SNS上では「#頑張れ大邱 #大邱ならできる」というハッシュタグのキャンペーンも行っている。
また、会員別に地域社会のための寄付や物品支援も相次いで行われている。
「大邱の状況は良くない。だが、もうショックと痛みから抜け出さなければならない。全員が力を出さなければならない」と力強く話すイ会長は、「昔から大邱は、困難なときこそ力を発揮する地域だ。国債補償運動やIMF時代の金集め運動のときもそうだった。大邱サッカーも、皆が"ダメだ"というときに我々は“できる”、“やれる”と叫んできた。今回の危機も“大邱精神”で克服できると信じている」と強調した。
イ会長は大邱FCというクラブの歴史をその目で見てきた“生き証人”である。大邱がどん底に落ちたときも、クラブと苦楽を共にした。だからこそ、近年では興行クラブとして浮上した姿に、一人のファンとして胸がいっぱいになるようだ。
「エンジェルクラブは、大邱の調子が良いときにはじまったものではない。本当に困難な時期に意気投合した。だから、最近の大邱を見て感じることは…」とイ会長は自問自答すると、「言葉で表現するのは難しい。2016シーズンに1部昇格に成功し、2019年にはFAカップ優勝で感動の涙を流した。昨シーズンは専用スタジアムの開場と9度の完売を通じて、すべての市民が共にする歴史を作り出した」と力説した。
2019年3月11日。この日は、Kリーグの歴史に一線を画したDGB大邱銀行パークが開かれた日だ。エンジェルクラブにとって、この日は忘れられない日であるだろう。イ会長は「その日、現場にいた誰もが胸躍っただろう。今シーズンもここで新たな感動が私たちを待っているはずだ」と確信した。
スポーツの価値は、痛みの治癒と慰労にある。去る2017年、同年のヨーロッパリーグを制したマンチェスター・ユナイテッドが、数十人の死傷者を出した爆弾テロでショックに陥った地域市民の痛みを癒した事例がある。
現在、韓国内のスポーツは新型コロナによって事実上の"オールストップ"にある。開幕が無期限延期となったKリーグは、2020シーズンの開幕戦がいつ開かれるか未だ明確でない。
しかし、希望を手放すわけにはいかない。
イ会長は「このような困難に直面したことで、Kリーグと大邱というクラブが、どれだけ私たちにとって重要であるかを今一度感じた。今年のKリーグのスローガンは明確だ。それは、まさに慰労と治癒だ。クラブと選手たちもこれをよく理解しているだろう。ブレることなく準備を進め、この危機が克服されたときには、素晴らしい試合を通じて市民や国民に感動をプレゼントできれば何よりだ」と話した。
そして、「簡単ではないが、新型コロナ危機を克服できたときにはKリーグオールスターゲームを大邱で開催することを希望する。困難を勝ち抜いた大邱市民とサッカーファンにとって大きなプレゼントになるだろう。一刻も早く新型コロナを克服し、青い芝のピッチで我々の選手とファンを迎えたい」と願いを伝えた。
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