KリーグのFCソウルは新シーズン開幕を前にした現在、国内復帰を目論んでいた元韓国代表キ・ソンヨンの獲得に失敗し、ファンから冷たい視線を浴びている。
もちろん、新シーズンに臨む選手構成を終えたFCソウルの立場とすれば、いきなり国内復帰を宣言したキ・ソンヨンに巨額を投じるのは消極的にならざるを得ないのは当然だ。そこはファンも理解しているだろう。
批判の的になったのは、2009年にキ・ソンヨンがセルティックへと移籍した際、FCソウルとの間で結ばれた“違約金”の存在だ。
FCソウルは当時、セルティック移籍の過程で発生した移籍金の一部をキ・ソンヨンに支給した。そして、今後KリーグでFCソウル以外のクラブに移籍する場合、違約金を支払わなければならないという条項を結んだという。
FCソウル以外のクラブに移籍する場合に発生する違約金は、200万ユーロ(約2億6000万円)ともされている。当時交わされた具体的な条項はFCソウルとキ・ソンヨンという当事者だけが知る内容であり、それがKリーグ復帰に失敗した要因と決めつけることはできない。
しかしファンとしては、30歳でキャリアの折り返し地点を迎えたキ・ソンヨンのKリーグ復帰計画が、過去に両者間で結ばれた1つの条項によって霧散したと考えてしまう。
一連の流れを受け、FCソウルのカン・ミョンウォン団長は「キ・ソンヨン獲得のための努力が徒労に終わって残念であり、正直混乱している。それでもキ・ソンヨンとは良好な関係を維持することにした」と述べている。
しかし当のキ・ソンヨン本人はSNSを通じて「嘘で僕を傷つけるのならば、僕も真実で傷つけられる。僕をもてあそばないで。僕がやり返したら、あなたも良い気分にならないはず」と、FCソウルを非難するようなメッセージを投稿した。
結局、キ・ソンヨンのKリーグ復帰問題はわだかまりを残す結果となった。
キ・ソンヨンが2月11日にエージェントを通じてKリーグクラブとの交渉終了を宣言し、事態はひと段落した。しかしFCソウルには、また新たな課題が発生した。
キ・ソンヨンとともに、今冬のKリーグ復帰を望むイ・チョンヨンとの交渉だ。
今夏にVflボーフム(ドイツ2部)との契約が満了したイ・チョンヨンは、残余年俸の放棄と同時に、キ・ソンヨンと同じく相互契約の解除を進めている。
FCソウルはイ・チョンヨンとも優先交渉権を持つ。当然、イ・チョンヨンもKリーグ復帰の際には古巣のFCソウルを優先すると考えていただろう。
しかし今回も、イ・チョンヨンとFCソウル間での幾度にわたる交渉で隔たりが生じた。FCソウルがイ・チョンヨンとの交渉でも実務的に契約書上の原理原則を貫くのであれば、相互理解を深めることは難しいと関係者は見ている。
FCソウルはここ数年の“コストパフォーマンス”重視から変化しつつあるとはいえ、“人口1000万人&韓国の首都”に根差すビッグクラブだ。だからこそ形式的で原則的なアプローチを変えてほしいと望む声も多い。
とある関係者は、キ・ソンヨンが国内復帰を進めていた当時の自身の心境を明かした。「長い間過ごした欧州の舞台で、人種差別や文化の違いを克服しキャリアを積み重ねる過程は寂しく大変だっただろう。頂点を極めたのだから、昔の郷愁を感じながら安定した生活を取り戻したかっただろうし、それによる自己満足感も考慮しただろう」と話す。
イ・チョンヨンの事情も、キ・ソンヨンのときと大きく変わらない。イ・チョンヨンのエージェントは2月11日にFCソウルと再び接触したことを明かした。
FCソウルはより積極的で誠実な姿勢を通じて、背を向けてしまった一部のファンからの信頼回復に努めるべきだろう。今後の動向に注目したい。
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