2023年シーズンのメジャーリーグ最高のスターは、まぎれもなく大谷翔平（29、ロサンゼルス・エンゼルス）だった。
ほぼ一日も欠かすことなく、オンライン・オフラインを問わず、大谷の記事は生産された。これからも、大谷のストーリーはFA契約が成立するまで続くはずだった。
しかし、今はその様相が大きく変化しそうだ。
8月24日（日本時間）午後、速報で報じられた右肘靭帯損傷による「投手・大谷」の今季絶望は、シーズン後のFA市場に決定的な影響をもたらす“変数”となった。
エンゼルスのペリー・ミナシアンGMは、大谷が今季はシーズン終了まで投手として登板しないことを発表した。ただ、トミー・ジョン手術の可能性については「現在のところ分からない」と言うにとどめた。
今後、ほかの専門医を通じた検査を受ける予定だが、専門家たちはトミー・ジョン手術が避けられないと見通している。
大谷は2018年にメジャーデビューし、同年に投手として10試合に登板したが、シーズン終了後にトミー・ジョン手術を受けた。今回も同様の手術をする場合は2回目となるが、投手復帰は2025年シーズンから可能になるとの見通しが出ている。
これまで“二刀流”でメジャーを席巻し、5億ドル（日本円＝約730億円）や6億ドル（約876億円）以上のFA契約の噂も飛び交った大谷だが、今はそれも不透明になった。
『ESPN』は直ちに、テレビやインターネットなどを通じて、大谷のシーズン終了後のFA年俸が下がるものと予想した。5億ドルも難しいという予想が大半だ。
歴代FA史上最高年俸は、昨年のアーロン・ジャッジ（31、ニューヨーク・ヤンキース）の9年総額3億6000万ドル（約526億円）、年俸4000万ドル（約58億円）だ。
大谷の市場価値は二刀流プレーヤーとして評価されている。投打両部門でトップに位置する空前絶後の選手であるだけに、前人未到の年俸が予想された。しかし、投手としての市場価値は大幅に下がってしまった。
過去にトミー・ジョン手術を2度受けた選手のFA市場での価値が上がることは難しい。
手術を2度受けた選手は多い。リュ・ヒョンジン（36、トロント・ブルージェイズ）やウォーカー・ビューラー（29、ロサンゼルス・ドジャース）、ネーサン・イオバルディ（33、テキサス・レンジャーズ）などだ。
現在リハビリ中のビューラーは、2024年シーズン後にFAとなる。ビューラーもやはり、1億ドル以上の契約はほぼ不可能とみられている。
昨年冬、シカゴ・カブスと4年6800万ドル（約99億円）でFA契約を結んだシェイムソン・タイヨン（31）も、2度手術を受けた。
ジョシュ・ジョンソンやクリス・メドレン、ジャロッド・パーカーなどは、2度の手術後に再起に失敗した事例に属する。
トミー・ジョン手術を受けた場合、序盤はリハビリの影響で打席に立つことが難しい。実際、大谷は2018年に初めて手術を受けた後、打席には2019年5月から入った。
大谷は投手としてのシーズンを終えたが、打者としては引き続き出場する見通しだ。実際、24日のシンシナティ・レッズとのダブルヘッダー第1試合で早期交代となった大谷だが、第2試合では打者として出場していた。
『MLB.com』のウィル・リーチ記者は、大谷の靭帯損傷をめぐって風変わりな意見を示した。不幸な負傷によって市場価値が下がり、多くの球団が獲得競争を繰り広げることもあり得ると見通した。
実際、完璧な“二刀流”をこなしていた頃、大谷の年俸を満たすに値する球団はドジャースやヤンキース、ニューヨーク・メッツなどスポーツマーケットが巨大で財力のある球団のみとされていた。
一方、手術を受けるとなれば、エンゼルスが大谷を慰留できる可能性も高まるとの分析もある。エンゼルスは大谷がメジャーデビューを果たしたチームであり、最も気の知れたチームだ。
エンゼルス側は切実に大谷を望んでおり、FAベッティングも可能な価格帯に下がっているという。
これまでは投打最高の選手として、市場価値が天井知らずに上昇し続けてきたが、肘の負傷によってまったく予想できない状況となった。
大谷の市場価値とその終着地点はどこになるのか、依然としてストーブリーグを熱くする最大の話題だ。
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