ここまで“逆風”が吹き荒れると予想していたのだろうか。韓国は本日(1月24日)まで旧正月の連休だったが、大騒ぎの事態になったと言っても過言ではない。
発端はプロ野球KBOリーグのSSGランダースに所属するチュ・シンス(40)のとある発言だ。
かつてクリーブランド・インディアンス(現クリーブランド・ガーディアンズ)やテキサス・レンジャーズなどメジャーで活躍し、現在はリーグ全体でも最年長者にあたるベテランが踏み込んだ発言をした。韓国野球発展のためにはきっと必要なことなのかもしれないが、色々と惜しい部分があるのも事実だ。
チュ・シンスは最近、1月21日に出演した米テキサス州ダラス地域のラジオでの発言で注目を集めている。
来る3月に行われるWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)と関連し、韓国代表について語ったのだが、世代交代について言及した際にアン・ウジンの話も出た。
彼は「キム・ヒョンスやキム・グァンヒョン、ヤン・ヒョンジョンを選ぶのではなく、未来のためにアン・ウジンやムン・ドンジュのような若手を選ばなければならない」と強調し、「未来を見据えなければならない」と伝えた。
ただ、はじめに指摘したい部分がある。キム・グァンヒョン(34、SSGランダース)とヤン・ヒョンジョン(34、KIAタイガース)は、アン・ウジン(23、キウム・ヒーローズ)とムン・ドンジュ(19、ハンファ・イーグルス)の“代役”で選ばれた選手ではないという点だ。
彼らは30代中盤のベテランではあるが、実力は依然として国内トップレベルであり、先輩として若手の“メンター”的な役割も期待できる。つまりはチームに必要な“リーダー”というわけだ。
代表にはチームの支えとなれる存在が必要だ。ただ若く勢いのある選手だけを選べばよいというわけではない。ベテランが求められる理由も必ずある。
ベテラン選手たち自身も、自分たちの年齢が若くないことは当然理解している。それでも招集を受け、WBCの舞台を戦うことを決めた。むしろ、先輩たちの善意をまた別の先輩が貶めてしまった格好だ。
チュ・シンスはライバルの侍ジャパン(野球日本代表)についても言及した。「一番近い日本だけを見ても、国際大会のたびに若い選手が多く見られる」とのことだ。
ただ、韓国代表も投手陣は新顔が少なくない。特に2000年以降生まれの選手は4人もいる。25歳以下の選手で見ると11人に上る。
逆に、侍ジャパンにはダルビッシュ有(36、サンディエゴ・パドレス)というベテランがいる。彼は1986年生まれであり、キム・ヒョンス(35、LGツインズ)やキム・グァンヒョン、ヤン・ヒョンジョンといった韓国代表の年長メンバーよりも年上だ。
韓国野球は今回のWBCに死活をかけている。国際大会を通じて国内に再び野球ブームを巻き起こす覚悟だ。当然、良い成績を挙げることはマストだ。となれば、年齢を問わず優れた選手を選ぶことは正しい。国際大会はWBCだけではない。
アン・ウジンに対する発言も惜しい。チュ・シンスは「韓国は許しを得ることが難しい」と話した。
時代は変わった。以前は物議を醸しても、「野球で報いる」と言えば応援してくれたが、今は違う。特に2018年ジャカルタ・アジア大会では選手選抜をめぐって議論が勃発し、金メダルを獲得したにもかかわらず、韓国野球委員会(KBO)総裁と代表監督が国政監査に出席する屈辱を味わった。さまざまな意味で象徴的な事件だ。
アン・ウジンの場合、韓国プロ野球での生活には問題がない。チュ・シンスの言うように処罰設け、出場停止処分も消化した。ただ、アマチュアだった学生時代にいじめ問題を起こしたことで、韓国代表に選ばれない立場にいる。韓国野球ソフトボール協会(WBSC)や大韓体育会と無関係なWBCではあるが、結局同じ線になる。
今回のWBCで韓国代表を率いるイ・ガンチョル監督も、技術委員会も、アン・ウジン招集をめぐって苦心したのは事実だ。決して「最初から選ばない」と決めつけていたわけではない。
「野球さえ上手くやれば何をしても許される」というイメージを学生アスリート、退いては国民に認識させるのであれば、むしろマイナスだ。
改めて強調するが、時代が変わった。何より、まだ被害者全員から許しを完全に受けていない状態だ。許しは“野球界”がするのではなく、“被害者”がすることだ。
チュ・シンスは確かに米メジャーリーグで大きな業績を残した。大物選手らしく、KBO参戦以降も歯に衣着せぬ発言で自身の考えを躊躇なく明らかにしてきた。実際、チュ・シンスの一言で、老朽化が進んでいたSSGの本拠地・蚕室(チャムシル)球場は一部施設がリモデリングされた。
ベテランの踏み込んだ発言は必要なときもある。チュ・シンスは同時に数多くの寄付を行い、その善意を評価されてきた。
ただ、今回ばかりは残念に感じる。選手たちはWBCを控えて懸命に体作りを進めている。チュ・シンスも応援してくれても良いところを、あえて言わなくても良い苦言を呈したわけだ。
ある人は「典型的なアメリカ式思考」という。そうかもしれないが、アメリカのスタイルが全世界の「唯一の基準」にはならない。
無数の野球関係者が言いたくても言えなかったことを、チュ・シンスが代わりに伝えたのかもしれない。しかし、それまで特にこれといった話がなかったのであれば、それも理由があるからと考えるべきではないだろうか。
ベテランによる指摘は確かに必要だが、しなければならない時もあれば、そうでない時もある。
(構成=ピッチコミュニケーションズ)
Copyright @ 2018 Sportsseoul JAPAN All rights reserved.
前へ
次へ