1月1日、国立競技場にて新潟医療福祉大学と桐蔭横浜大学の2022年度第71回全日本大学サッカー選手権大会(インカレ)決勝が行われた。
試合は後半アディショナルタイムの山田新のゴールが決勝点となり、3-2で桐蔭横浜大学が勝利を収め、インカレを制した。
「インカレでも成長しよう」
元日、国立競技場で日本一強いチームを完成させようということを伝え続けたという桐蔭横浜大学の安武亨監督。勝負強さがなかなか身につかないことが、ここ数年のチームの課題であったが、「日本一の勝負強さを持った、日本一強いチームになってくれた」と称賛した。
リードされて迎えたハーフタイムには、「ロングスローとセットプレーだけしっかり集中しよう。信じていれば取れる。もっと走ろう。もっと戦おう」と、選手みんなで話していたという。
「最後の最後、アディショナルタイムで点を取って勝つことが、なかなかうちの大学にはなかった。最後までしっかり戦えば、俺たちは勝てるんだ、取れるんだ。そういうマインドになっていった」
勝負強さの要因となったのは、サブの選手たちの成長だった。準決勝では白輪地敬大、決勝では笠井佳祐と神田洸樹が、途中交代で入り試合の流れを変えた。
「トップサブでは上手くならない。ヒリヒリした試合を1試合でも多くやることが彼ら二十歳前後の年齢には必要。多くの選手が公式戦を経験していることが、うちの強みだと思う」
1学年約20人で、全部員に試合のチャンスがあるように、学年で分けてチーム編成をする。関東大学サッカーリーグで本当はサブに置きたい選手でも、トップチームには置かないで、社会人リーグで公式戦を経験させてきた。
関東大学サッカーリーグでは後期の途中から桐蔭横浜大学の本当の強さが出てくる。トップサブに置きたい選手たちが、社会人リーグを終えてトップチームに合流するからだ。また、この日のスタメンの半分は、社会人リーグの方で鍛えられて、4年生になってスタメンを取った選手たちだった。
「そこから2、3カ月して、完成度が上がってきて、サブの選手たちも慣れてきて、インカレで結果を出してくれた。2、3年生の成長がチーム力の底上げと、勝負強さにつながってきた」
さらに、現時点でJクラブ加入内定者は13人。
「この世代は最高の黄金世代だと思う。桐蔭横浜大学の歴史上、最も素晴らしい代になった」
桐蔭横浜大学にとって日本一と共に過去最高の成果を出したチームを安武監督がこう評価した。
「チームを日本一にしたいという思いはもちろんあるが、選手たちはそれよりもプロになりたいという思いが強い。私もその思いの方にシフトして、ファーストチョイスはプロにするためのチーム。プロになるような選手が10人以上出たら、それは日本一を取るよねというチーム作りをしている」
安武監督が桐蔭横浜大学の選手だった時、風間八宏監督から教わったのが、「それぞれの個性、輝きがある11人が試合に出れば、負けるわけがない」ということ。ずっとそう思い、それを体現しようと挑んできた。
大学サッカーは育成であって、日本一を取るために、この試合を勝つために、何をしなくてはいけないかということは二の次。それよりも個人がどう伸びるかということを第一に考える。よって、組織的な練習、相手に合わせた練習はしたことがない。個人が伸びるためにはどうすればいいかという練習しかしていないという。
準決勝の関西学院大学戦で、山内日向汰がドリブルから右足を振り抜き、個で取ったゴールがその象徴だった。チームを勝たせるゴールを、自分で奪うということを練習し、それが結果につながった。
(文=玉 昌浩)
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