ワールドカップ開催前からE組は「死の組」と呼ばれた。ドイツ、スペイン、日本、コスタリカが同じグループに入った。ほとんどの専門家が日本のグループリーグ敗退を予想した。しかし森保監督は今大会の目標をベスト8に定めた。彼が設定した目標が虚像ではなかったことを第1戦からきちんと示した。
日本サッカーに代表されるイメージは、ポゼッションとパスだ。日本はボールを占有してパスプレーを繰り広げるスタイルを好む。ただ、この日だけは違った。たしかなコンセプトを持ってきた。
まず日本は、前半は守備に集中した。何度か伊東純也を活用したカウンターもあったが、全体的な攻撃への加担を減らした。だからといって守備ラインを完全に下げたわけではない。守備の組織力も悪くなかった。
それでもパスプレーはあまり見られなかった。日本が前半に記録したパスの本数は90本に過ぎなかった。試合全体を見ても日本はパス260本で、ドイツ(820本)に大きく及ばなかった。
そうやって45分間を過ごした森保監督は、後半に大事にしていた攻撃カードを1枚ずつ取り出した。南野拓実、堂安律、浅野拓磨、三笘薫と、攻撃資源を大挙投入。堂安が同点ゴールを、浅野が逆転ゴールを決めた。森保監督の用兵術がまともに通用した。
ボール保持率もやはり前半は18%にとどまった。後半は31%まで伸ばしたが、日本が誇るポゼッションとパスを見せたわけではなかった。しかし日本は簡潔かつ効率的な攻撃で、ドイツを揺さぶった。
ドイツはこの日、25本のシュートを放ったが、枠内シュートは9本だった。効率性はゼロに近かったが、逆に日本は10本のシュートのうち、枠内シュートは3本。そのうち2本を得点につなげたのだ。
自分たちのサッカーを一時的にやめて、時を待っていた日本がドイツを破ったのは偶然ではない。