トッテナムは試合翌日の11月3日午前5時30分にソン・フンミンの負傷に関する公式発表した。その30分前の午前5時に、韓国サッカー協会(KFA)に情報を先に伝達した。
パウロ・ベント監督をはじめ、コーチ陣やスタッフ、選手たちは全員、心配しながらソン・フンミンの診断結果を待っていたが、トッテナムからの知らせに驚きを隠せなかったという。
来る24日に行われるカタールW杯グループ初戦のウルグアイ代表戦までちょうど残り3週間という時点で、まさに“青天の霹靂”のようなニュースだったからだ。
KFAは「トッテナムに確認した結果、ソン・フンミンは今週中に手術を受ける予定だ。W杯出場の可否は経過を見守った後に判断する」と伝えるにとどめている。
ソン・フンミンはカタール大会で自身3度目のW杯出場を夢見ている。
過去に出場した2014年ブラジル大会、2018年ロシア大会では、自身は2大会いずれも得点を記録するも、チームはグループステージで敗退するという痛みをともにしてきた。
それだけに、キャプテンマークを巻いて臨むカタール大会では、2010年南アフリカ大会以来の決勝トーナメント進出を果たそうという意志に満ちていた。
昨季にアジア人初のプレミアリーグ得点王に輝くなど、名実ともにワールドクラスの仲間入りを果たしたソン・フンミン。しかし、W杯開幕を目前に控えた時点で、骨折と手術という2つの悪材料を抱え込むことになってしまった。
ただでさえ、FWファン・ウィジョ(30、オリンピアコス)やFWファン・ヒチャン(26、ウォルヴァーハンプトン)など欧州組の攻撃陣が所属チームでまともにプレーできず調子を落としているだけに、ベント監督の心配はさらに高まる見通しだ。
はたしてソン・フンミンは無事に手術を終え、奇跡的にカタール行きの飛行機に乗ることはできるのだろうか。
さまざまな憶測が飛び交うなか、専門家は「強行出場は選手にとって毒になりかねない」と警鐘を鳴らす。眼科骨折の手術は腫れが引いた後に行ってこそ結果が良いだけに、早急に手術日を決めることは難しいという見解だ。
ソウルのJW眼科で院長を務める眼科専門医のチェ・ジョンウォン氏は、「眼科骨折手術は通常、腫れが引いた1週間後に眼球陥没、複視、眼球運動の制限の程度によって決定する。また、手術時には骨折部位に挿入物を入れ、眼底組織が抜けないようにするために少なくとも4週間以上は必要だ」と伝えた。
また、大田(テジョン)セボム眼科で院長を務める整形部門の専門医であるノ・ジュンホ氏は、「(ソン・フンミンの負傷当時の)映像を見ると、競り合う過程で相手選手の方に顔面の左部分をぶつけたようだ。現地で眼窩骨折と診断された場合、頬骨や上顎骨周辺の骨折を疑わなければならない」と述べた。
それとともに、「眼窩骨折は無条件に手術するわけではない。複視や顔面の輪郭の変化など、さまざまな機能上の問題を考慮するが、現地で手術を行うとの決定が下されたのは、このような側面を総合的に判断したはずだ。激しく運動する選手なだけに、二次負傷の恐れがある」とし、「骨折は手術をしない場合でも、6週間以上の回復期間を設けた方が良い。医者の立場としては(プロテクターなどで)保護をするとしても、格別の注意が必要だと思う」と伝えた。
事実上、正常なコンディションで代表に合流することは不可能になった形だ。すなわち、ソン・フンミンのカタール行きは“超人的回復力”にかかっているといっても過言ではない。
ソン・フンミンは過去にも、右腕の再骨折やハムストリング負傷などを経験したが、いずれも予想よりも早く回復して実戦に復帰したことがある。準備された身体能力と経験が調和した結果だ。
とはいえ、医学界ではソン・フンミンが不確定要素の多い目の部位を負傷したことに懸念を表している。
韓国はウルグアイとの初戦を戦った後、28日にガーナ代表、12月3日にポルトガル代表と対戦する。
現時点では、ベント監督はピッチ内外で代表の“精神的支柱”の役割を果たすソン・フンミンをチームに帯同させ、回復具合を見て試合に投入するのではないかという見立てが大多数だ。
◇ソン・フンミン プロフィール
1992年7月8日生まれ。韓国・江原道出身。身長183cm。大韓民国のサッカー選手で、サッカー大韓民国代表キャプテン。小学校と中学校ではサッカー部に所属せず、韓国代表経験のある父ソン・ウンジョン氏から直接指導を受けていた。2010年にドイツ・ブンデスリーガのハンブルガーSVでプロデビュー。その後、2013年に移籍したバイエル・レバークーゼンで2年連続二桁ゴールを披露し、2015年にプレミアリーグのトッテナム・ホットスパーへと移籍。愛称は“Sonny(ソニー)”。