これからが“ショータイム”だ。
最大の目標だった五輪出場を叶え、本番では初出場のプレッシャーもあった。それでも、ショートプログラムを終えていよいよフリーだけが残った。あとは待ち望んだ舞台で自分らしさを発揮するだけだ。
“ヨナ・キッズ”から新たな“フィギュア女王”へ着実に成長を続けるユ・ヨン(17)のことだ。
ショートプログラムで好演技を披露したユ・ヨンは、フリーでも優れた演技を見せられれば、メダル獲得の可能性もある。結果次第では、男子シングルでチャ・ジュンファン(20)が記録した“トップ5”を越えられる。
ユ・ヨンがフィギュアスケートを始めたきっかけは、まさにキム・ヨナ(31)にある。2010年バンクーバー五輪で金メダル、2014年ソチ五輪で銀メダルを獲得した“フィギュア女王”の演技を、幼い頃のユ・ヨンはテレビで見守っていた。その時、彼女はフィギュアスケートを始める決意をした。
2014年には会場で実際にキム・ヨナ演技を観たこともある。それが、高陽(コヤン)市で行われた総合選手権だ。当時、ユ・ヨンは「現地で演技を観たら思っていたよりもっと上手だった。ジャンプをはじめすべてが素晴らしかった。本当に感動した」と語っている。
キム・ヨナの歩んだ道をたどったユ・ヨンは、驚異的なスピードで成長した。小学生時代には中学・高校の先輩を抜き、韓国の最年少記録を塗り替えた。
キム・ヨナもユ・ヨンの演技を観て「同じ年の自分よりもっと上手」とし、「先輩たちは小学生の後輩の前でもっと頑張らなければならない」と語ったことがあった。
その後、ユ・ヨンは総合選手権で最年少優勝を果たすとともに、5大会連続優勝を達成。韓国の女子フィギュアスケート選手として初めてトリプルアクセルを成功させるなど、韓国フィギュアの次世代を担う中心選手として着実にステップを踏んでいる。
ユ・ヨンは4年前、平昌五輪を控えた代表選抜戦で計204.68点をたたき出し、キム・ヨナ以降初めて女子シングルで200点越えを記録した。ただ、当時はオリンピックの出場年齢制限で出場が叶わず。そして今回、北京五輪を控えた代表選抜戦で女子の部1位となり、オリンピック出場を決めた。
そうしてたどり着いた念願の五輪の舞台。ユ・ヨンは去る15日の北京五輪女子シングル・ショートプログラムで技術点36.80点、演技構成点33.54点の計70.34点を獲得し、6位という好結果を残した。
韓国の女子フィギュア選手で唯一こなすことができるトリプルアクセルを決めたことが大きかった。その後もトリプルルッツとトリプルトウループのコンビネーション、トリプルフリップといったジャンプ要素を無難にこなした。フライングキャメルスピン、レイバックスピンに続き、基礎点が1.1倍になる演技後半にはトリプルフリップまで成功させた。
ただ、冒頭のトリプルアクセルがダウングレード判定となり、期待された自己ベストにはやや及ばなかった。それでも、上位25位以内に入りフリー進出を決めた。
フィギュアスケート女子シングルはショートプログラムとフリーの点数を合算して最終順位を決める。韓国勢では前述の通りキム・ヨナが2大会でメダルを獲得している。
前回の2018年平昌五輪ではチェ・ダビン(22)が韓国勢最高位の7位だった。今度はユ・ヨンがそのバトンを受け継ぐ番だ。
ユ・ヨンはショートプログラムの演技前、濱田美栄コーチから頬を軽く両手でたたかれた。「緊張していたら目を覚ましてほしい」というユ・ヨンの母親からの頼みだ。
緊張はある程度必要であるとはいえ、過度なプレッシャーはミスに直結する。フリーではこれまで磨き上げた技量を思う存分に発揮してもらいたい。
本日(17日)行われるフリー、ユ・ヨンは全体20番目で22時9分に登場する。夢の舞台から飛び立つ瞬間はすぐそこだ。
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