奇跡のような逆転優勝に喜ぶのもつかの間、厳しい現実が近づいている。現時点から冷静に現状を把握する必要がある。2021シーズンの韓国FAカップで優勝したKリーグ2(2部)の全南(チョンナム)ドラゴンズの話だ。
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Kリーグ1(1部)の大邱(テグ)FCと対戦したFAカップ決勝を2戦合計スコア4-4とし、アウェーゴールの差で2部クラブとして初めて優勝トロフィーを掲げた全南は、シーズンを終えてオフに突入した。
選手たちは来年1月3日に招集された後、2022シーズンに向けたキャンプに乗り出す。2部クラブとして初のFAカップ優勝、初のアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)出場を決めた全南は、冬季も芝生の状態が良好なホームの光陽(クァンヤン)でトレーニングを行う予定だ。
来季にアジアの舞台に臨むことへの期待に満ち溢れている反面、クラブ内外では懸念の声も飛び交っている。
そもそも、全南にとって最大の目標は1部昇格だ。その目標を達成するにあたり、ACLへの出場はクラブにとって“毒”になる恐れがあると心配されている。
2018シーズンに1部12チーム中最下位で2部に降格した全南は、親企業のPOSCO(旧浦項製鉄)の事情も相まって、本来望んでいた規模の予算を確保することができなかった。今年も20億ウォン(日本円=約2億円)近く削減されたという。
クラブの財政状況もあり、今季含めた直近2シーズンはチョン・ギョンジュン監督体制で「低コスト高効率」を生み出すことが望まれた。高年俸のストライカーを獲得することができない全南は、チョン監督の下で組織的な防御網を構築し、リーグ最高水準の“実利サッカー”に徹した。
昨季のリーグ最少失点数2位(27試合25失点)に続き、今季は最少失点数1位(37試合33失点)を達成するなど成果が目立った。
一方で、1部昇格に向けては勝負どころでゴールを決められない攻撃陣の不在、主力と控えの能力差などが足を引っ張った。こうした状況でも、チョン監督は知略を発揮してFAカップを勝ち抜き、就任後初となるトロフィー獲得に成功した。
Kリーグに限らず、他国でも支援が足りないACL出場チームはその年の国内リーグで低迷する場合が多い。急激な試合数増加で主力に負担がかかり、負傷やコンディション不良に陥る可能性があるからだ。
加えて、2022シーズンは“カタールW杯イヤー”のため、Kリーグが2月開催、10月終了のスケジュールで組まれている。こうなると、全南のような苦しいチーム事情ではACLを戦いつつリーグ戦で結果を残すことは難しい。
とはいえ、Kリーグを代表して出場するACLを諦めるわけにはいかない。結局、親企業からより多くの支援を受け取る必要がある。
同じくPOSCOを親企業とする浦項(ポハン)スティーラースが来季ACL出場権を逃しただけに、グループ内でどのような支援策が用意されるかは見守るべきだ。
クラブ内部では、ひとまずFAカップ優勝の立役者となった選手の引き留めに注力している。
守護神のGKパク・ジュンヒョク(34)と2列目の中心選手であるMFファン・ギウク(25)がFA(フリーエージェント)となり、キャプテンで元V・ファーレン長崎のベテランFWイ・ジョンホ(29)も、クラブと未来を見据えた話をしなければならない。
外国人選手では、元湘南ベルマーレ、福島ユナイテッド、鹿児島ユナイテッド、栃木SCのブラジル人FWアレックス(28)、ナイジェリア人FWサミュエル・ナマニに代わる新たな戦力を確保するものとみられる。
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