「私も(選手時代に)多くの経験をしたが、結局は自分で克服しなければならない」
4月3日、蔚山現代(ウルサン・ヒョンデ)FCのホン・ミョンボ監督は城南(ソンナム)FCとのアウェー戦を終えたあと、このような言葉を放った。
蔚山現代は代表戦に9人(A代表7人、五輪代表2人)が選出されたため、他チーム以上に正常な練習を進められなかったが、ホン・ミョンボ監督はこの試合の選手リストで見事に予想を裏切った。
日韓戦を終え、前日正午まで坡州(パジュ)サッカー国家代表トレーニングセンター(NFC)でコホート隔離(集団隔離)していたA代表メンバー7人のうち、キム・インソンを除く6人を出場リストに含めたのだ。このうちGKのチョ・ヒョヌ、DFのホン・チョル、キム・テファンはスタメンに選ばれていた。
韓国では、日韓戦メンバー招集前から代表チームが落ち着かず、試合も横浜の地で0-3の大敗を喫した。また、帰国後は1週間の隔離生活をしていただけに、彼らの心身は疲れ果てていたはずだ。
当初、A代表選手は城南FCとのアウェー戦に帯同させない、もしくは体調を考慮して限定的に起用した方が、見解が多かった。
しかし、ホン・ミョンボ監督は城南FC戦に代表帰りの選手を積極的に起用。「午前に(代表戦を戦った) 選手たちとお茶をした。コンディションの話を聞いて、最終的にリストを作成した」と述べていた。
代表でも調子が悪かったホン・チョルの先発起用については、「懸念は大きかったが、今は少し良くなった。プレッシャーが大きい試合を戦っただけに、むしろもっと良い姿を見せるだろう」と予想した。
選手時代、日韓戦のような負担が大きい試合をあまねく消化してきたホン・ミョンボ監督は、“ティータイム”で代表選手らしい責任感を強調したという。
特に、Aマッチ休息期間中チームで正常なトレーニングを消化した仲間のためにも、もう一段階の成長を促し、「(日韓戦敗北後)代表選手には精神的な傷が残ったはずだ。しかし自ら克服すべき。代表に招集される以前にクラブで見せていた姿を、再び証明してほしいと伝えた」と選手へかけた言葉をあらわにした。
試合は激しい雨が降っていたものの、“ティータイム効果”の影響かチームの雰囲気は悪くなかった。ホン・チョルとキム・テファンは以前よりも積極的に攻守に絡み、試合のリズムを作っていた。
前半22分、ホン・ミョンボ監督はU-22代表のキム・ミンジュンとカン・ユング、日韓戦でプレーしたイ・ドンジュンを投入。この采配は見事に的中し、投入から4分後の前半26分、ユン・ビッカラムが右サイドから上げたクロスを、イ・ドンジュンが絶妙なヘディングで決勝弾を奪った。
イ・ドンジュンは日韓戦直後、誰よりも精神的につらかったという。代表戦に先発した彼は後半22分、振り回した腕が日本のDF冨安健洋の顔を直撃。故意の行動ではなかったが、冨安はグラウンドに倒れ、口から出血する事態に。この出来事は試合後も大きなイシューとなり、敗北以上のダメージを経験していた。
試合後イ・ドンジュンは、「坡州での隔離中も充実したトレーニングを行い、コンディションを維持した」とし、「ホン・ミョンボ監督は、(敗北の痛みを)代表選手ならすべて克服しなければならないと言っていた。自分で実行しようと思ったが(ゴールを決めて)勝てて嬉しい」と話した。
第4~6節を1敗2分けと低調だった蔚山現代は、4試合ぶりに勝ち点3を獲得し、勝ち点17で首位の全北現代モータースへの追撃態勢を維持している。
何よりも、代表戦前後で落ち着かない時間を過ごしていた蔚山現代にとって、今回の勝利は勝ち点3以上に大きな意味を持ったはずだ。
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