大財閥サムスン会長の死去で韓国のスポーツ界の未来が不透明になるワケ

2020年10月27日 スポーツ一般 #サムスン

はたしてサムスンのスポーツチームは再興できるのか。

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スポーツをこよなく愛したサムスングループのイ・ゴンヒ会長が、10月25日に78歳で永眠した。故イ・ゴンヒ会長は、ヒュンダイグループとともに韓国スポーツ界に多大の投資を行い、追いつけ追い越せで韓国スポーツを発展させてきた。

特に陸上、卓球、レスリング、バドミントンなどの種目では、ヒュンダイよりも多額の投資を行ったのがサムスングループだ。故イ・ゴンヒ会長は韓国をスポーツ大国に押し上げるうえで、多大な貢献をした人物といえる。

そんなイ会長死去のニュースは、現在崩壊しているサムスン傘下のスポーツチームにも注目を集めた。

そもそもサムスンが運営していたプロスポーツチームは、2014年から総合広告代理店である第一企画に経営主体が移され始めた。

まず2014年3月にサッカーKリーグの水原三星ブルーウィングスが第一企画へと移管され、同年8月には男子プロバスケットボールのソウル三星サンダースがサムスン電子から、女子プロバスケットボールの三星生命がサムスン生命からそれぞれ離れた。

続いて2015年にはプロバレーボールの三星火災ブルーファングスが、同年12月には野球のサムスン・ライオンズが第一企画に移管された。

韓国プロ野球、サムスン・ライオンズの選手たち

サムスングループが2016年の朴槿恵(パク・クネ)政権時代に起きた“ろうそくデモ”の原因とされるチェ・スンシルゲート事件に深く関与していた事実が続々と明らかになったことで、「スポーツチームの運営から手を引くだろう」という話まで流れ、サムスンがスポーツ支援を絶つことになるという懸念の声も出た。

プロスポーツ運営にあるまじき実態

事実、サムスンのプロチームは第一企画へと経営権が移った後、成績は目に見えて下降線を辿っている。

プロリーグ開始時からの名門球団として、2011年から韓国プロ野球リーグ初となる5年連続でのレギュラーシーズン優勝を果たしたサムスン・ライオンズは、2016年以降は下位から抜け出せずにいる。

サッカーの水原三星ブルーウィングスも、昨シーズンのKリーグで上位進出を逃し、今季も下位にとどまっている。男子プロバスケットボールのソウル三星サンダースも実力のある選手を揃えられず開幕4連敗に陥るなど最下位にとどまっており、男子プロバレーボールの三星火災にいたっては「選手を育てて他の球団に売却しろ」というバカげた指示が、チーム首脳陣から現場に伝えられたという噂まで出回る始末だ。

FCソウルのキ・ソンヨン(写真右)と競り合う水原三星ブルーウィングスのキム・テファン(写真左)

サムスンが投資しなくなったチームは、経営縮小と競技力の低下という2つの危機が同時に訪れた。まさに踏んだり蹴ったりである。

過去にはお金で成績を買っているという非難もあったが、サムスンが主導した各種プロスポーツにおける改革案は、時流を変える転換点にもなった。「優勝をするためにはサムスンと同じくらい投資をしなければならない」という資本競争も、近年ではあまり見られていない。

ついには“韓国グローバルナンバー1企業”としてトップの地位を確立したサムスングループを、スポーツ部門が貶めているという皮肉まで聞くほどに凋落した。今冬からはサムスン・ライオンズを皮切りに、グループが投資を再開するという説得力ある観測が流れている。しかし、その背景も「これ以上プライドを傷つけられたくない」というグループ経営層の意見が反映されたからという見方がある。

韓国スポーツ界の勢力図を塗り変えたサムスンは、イ・ジェヨン(故イ・ゴンヒ会長の息子。サムスン電子副会長)体制で再び改革を断行する可能性もあるとされている。

数年前に軽く議論がなされた“独立法人サムスンスポーツ団”の誕生を期待する声もある。サムスンはプロスポーツ5種目のチームを抱え、そのほかにも卓球、バドミントン、レスリング、テコンドー、陸上など韓国スポーツが国際競争力の強化を主導する種目も多数保有している。これらのチームで構成した独立法人を立ち上げ、スポーツ産業に本格的に参入する可能性が“アイデアレベル”で議論されたことがある。

韓国プロバスケットボール、ソウル三星サンダースの選手たち

グローバルスポーツ産業が創出する付加価値などを考慮すると、サムスンの社会貢献と新しい価値の創出の面でも業界をリードすることが可能だ。サムスンがスポーツチームを1つの系列グループとして発足すれば、ヒョンデ、LG、SKなど大手との競争の構図が作られると見られている。

すでにイングランド・プレミアリーグやアメリカメジャーリーグなどの企業広告を通じて価値を創出してきた大企業が、より主導的にスポーツ産業をリードする存在となるかもしれない。

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