バスケは“趣味”で夢は“経営者”、それでも…「BリーグU16チャレンジカップ」出場の韓国KBLユースが得た学びと経験

Bリーグが主催するユース大会「インフロニア B.LEAGUE U16 CHALLENGE CUP 2025」が、2月1日から2日にかけて国立代々木競技場 第二体育館で行われた。

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Bリーグのユースチームと海外チームの交流を通じて、世界に挑戦する意識を高めるとともに、「世界に通用する選手とチームの輩出」に向けた育成強化の礎を形成する機会を提供することを目的とした同大会。

今年は「B.LEAGUE U15 CHAMPIONSHIP 2024」の上位4チーム、そしてフィリピンと韓国から招待された2チームを加えた計6チームが出場。優勝は、決勝でサンロッカーズ渋谷U16を79-62で破ったフィリピンのファーイースタン大学付属高校U16だった。

そんな今大会に韓国から出場したのが、蔚山現代(ウルサン・ヒョンデ)モービスフィバスU15だ。

トップチームは国内プロバスケKBLで最多7度の優勝を誇り、現在行われている2024-2025シーズンでは10チーム中2位。メンバーには昨年7月に日本代表と対戦し1勝1敗を記録した韓国代表選手2人や、レバンガ北海道や大阪エヴェッサでプレーしたショーン・ロングなどが在籍している。

華々しい実績から“KBLの名門”とも呼ばれる現代モービスだが、そのU15チームは昨年7月に行われた「KCC 2024 KBL YOUTH CLUBバスケットボール大会」で優勝。それも、決勝では日本から招待出場した横浜ビー・コルセアーズU15を79-69で破っての戴冠で、韓国王者として今大会に臨んだ。

蔚山現代モービスフィバスU15
©B.LEAGUE 蔚山現代モービスフィバスU15の選手たち

「10分止め」初経験の現代モービスU15

もっとも、結果は2日間で3戦全敗の6位に終わった。初日目の予選リーグではSR渋谷U16に41-122、琉球ゴールデンキングスU16に54-107で敗戦。2日目の5位決定戦はU15メンバー主体のベルテックス静岡U16と最終Q途中まで5点差の接戦を演じたが、最終的には61-75で敗れた。

現代モービスU15を率いるソン・テギュン監督によると、中学3年生の選手たちは高校入試を控えて勉強真っただ中に大会を迎えたこともあり、100%のコンディションではなかったという。初日目の予選リーグ後、指揮官は「韓国を代表して来たので、試合でもっと良い姿を見せなければならなかったのですが…体力面で万全ではなく、実力差も大きかった」と苦い表情で打ち明けた。

ソン・テギュン監督
©B.LEAGUE ソン・テギュン監督

KBLのユースはBリーグと異なり、名称こそ「ユース」ではあるが、活動内容は実質的な「スクール」や「バスケ教室」に近い。

韓国でプロバスケ選手を目指す子どもたちは、U12までKBL各チームのユースに在籍したとしても、その後はバスケの強い中学・高校に進学して本格的に競技に打ち込む。

KBLユースにも高校生年代(U16、U17、U18)の大会などはあるが、トップチームとの繋がりは薄く、いわゆる地域で活動する“クラブチーム”としての意味合いが大きいのだ。

現代モービスのユースも月々の練習は週1~2回程度のみ。普段の試合時間は5分や7分の「流し」で、今回の「10分止め」は初めての経験だった。チーム関係者に聞くと、U15選手たちの夢は「経営者」などが多いという。

身長190cmと恵まれた体格を活かし、ゴール下で得点を重ねたセンターのユン・ジョンフンも、バスケは「趣味です」と語っていた。

ユン・ジョンフン
©B.LEAGUE ユン・ジョンフン

「楽しみながら学んでほしい」

とはいえ、今回の「B.LEAGUE U16 CHALLENGE CUP 2025」は彼らにとって大きな経験となったはずだ。

「このようなBリーグの大会に参加できてとても光栄ですし、関係者の方々に本当に感謝しています。日本の選手たちが上手いことは知っていましたが、想像以上に上手いと感じました」とはキャプテンのカン・ミンソ。「前に福岡で合宿したことがありますし、韓国でも日本のチームと試合をしたことがあります。日本の選手たちと多く対戦することで、自分たちの実力ももっと伸びると考えています」と大会に参加した感想を語る。

カン・ミンソ
©B.LEAGUE カン・ミンソ

ユン・ジョンフンも、「日本でこのような大会を戦うことができて良かったです。今回のような大会がこれからもっと行われたら良いですし、色んな国のチームと対戦する機会があれば良いと思いました」と国際交流の意義を感じていた。

大会では出場6チームそれぞれに攻撃時のBGMが用意され、試合中もコートMCによるコールが行われるなど、プロさながらの演出が各試合を大きく盛り上げた。「BGMがあったおかげで、いつもより元気にプレーできたと思います」とカン・ミンソは言う。

5位決定戦で対戦した静岡U16の選手たちは、試合前のウォーミングアップ中で体を動かしながらも、時々『YOUNG MAN(Y.M.C.A.)』などの場内BGMに合わせて踊り、チームの雰囲気を高めていた。普段は見られないような光景に、「バスケをすごく楽しんでいるような感じがして良かったです」とユン・ジョンフンも笑顔を見せた。

ユース年代で15年以上指導を続けるソン・テギュン監督は、大会を通じて「楽しみながら学んでほしい」と言う。特に強調したのは、日本の選手たちの”プレー以外の姿”だ。

「彼らは今まさに成長し続けている思春期の、中学3年生の子どもたちです。今回は“バスケを一生懸命楽しんでプレーする代わりに、ここに来たからには日本の選手たちのプレーや姿勢を見て学ぼう。それが君たちにとって大きな助けになるから”と伝え、学ぶ気持ちで来ました」

「日本の選手たちは本当に礼儀正しい。組織的な面もそうですが、礼儀や発言、交代でコートを出る際にしっかり挨拶することなど、一つひとつの姿に感心しています。ユースの子どもたちにも常に”マナーや礼儀は守ろう”と話していますが、そのようなことを実際にやってくれている姿が我々にとってはありがたく、感謝しています」

蔚山現代モービスフィバス
©B.LEAGUE

そんな現代モービスU15の選手たちは表彰式後、他チームの選手と記念写真を撮ったかと思えば、K-POPアイドルのBLACKPINK・ロゼとブルーノ・マーズによるヒット曲『APT.』が場内に流れると、率先して踊り出しコートを盛り上げた。住んでいる国や話す言語は違えど、国際交流を純粋に楽しむ光景がそこにはあった。

チームには今後もバスケを続ける選手がいれば、本格的な試合は今大会が最後となった選手もいたかもしれない。それでも、「B.LEAGUE U16 CHALLENGE CUP 2025」を通じて得た学びと経験は、何ものにも代え難い貴重な財産として心に残ることだろう。

(取材・文=姜亨起/ピッチコミュニケーションズ)

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