三島由紀夫の作品を盗作したとして、作家人生に致命傷を負った女性小説家シン・ギョンスク(申京淑)が6年ぶりに帰ってくる。
出版社チャンビは2月25日、「3月2日、シン・ギョンスク作家の長編小説『父へ行ってきた』(原題)を出版する」と伝えた。来る3月3日にはオンライン記者懇談会を通じて、マスコミの前にも姿を現す。2015年の“盗作騒動”以来、6年ぶりとなる公式席上だ。
チャンビは新作について「朽ちていく父の一生を深い洞察と事由で復元すると同時に、年を重ねた家族への思いやりを切々と描いた作品」と紹介した。
同小説は、シン・ギョンスクが2020年6月からウェブマガジンで連載したものだ。
連載を開始しながらシン・ギョンスクは、「いつも今も何か思い通りにできない困難の前に立っている私の父に、この作品をささげたい気持ちで書くと言いたいが、実際は私の心を取り戻すために使うのかもしれない」と話したことがある。
シン・ギョンスクは2015年6月、自身の短編小説『伝説』が、三島由紀夫の短編小説『憂国』の一部を盗用しているという盗作疑惑に包まれた。
当時の記事では、具体的に2作品の文章を並べ、比較したりもした。
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二人とも実に健康な若い肉体を持っていたから、その交情は激しく、夜ばかりか、演習のかえりの埃だらけの軍服を脱ぐ間ももどかしく、帰宅するなり中尉は新妻をその場に押し倒すことも一再でなかった。麗子もよくこれに応えた。最初の夜から一ト月をすぎるかすぎぬに、麗子は喜びを知り、中尉もそれを知って喜んだ。(三島由紀夫『憂国』より)
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二人とも健康な肉体の持ち主だった。彼らの夜は激烈だった。外から帰ってきた男は土埃のついた顔を洗う暇も惜しんで、いきなり女を押し倒すのが毎度のことだった。初夜から2ヶ月あまり、女はすでに喜びを知る体になった。女の清逸な美しさの中に、官能が芳しく豊かに染み込んだ。その実りは歌を歌う女の声にも脂っこく染み入り、もはや女が歌うのではなく、歌が女に吸われるようだった。女の変化を最も喜んだのはもちろん、男である。(申京淑『伝説』より)
その余波で彼女は、活動を中断。盗作疑惑については直接的な言及を一切せず、蟄居した彼女は、2019年5月に遅れて謝罪した。
シン・ギョンスクは2019年5月の中編小説『船に載せられたものを川は知ることができない』(原題)を季刊誌『創作と批評』夏号に発表し、遠回しに頭を下げた。
彼女は「若き日、一瞬の油断で、自分の作家としての重大なミスが発生し、そのようなことがあったという事実自体を忘却したまま、長い時間が流れた」とし、「今振り返ってみると、何でもない私の作家としてのつまらないプライドが、それを認めることを遅くした」と述べた。
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